
安全で楽しい山歩きをするためには、どんな方法で技術や知識を学べばいいのでしょうか。「社会人の山岳会に入って学ぶのはハードルが高い」と考える山歩きの初心者や未経験者に対し、私は「山岳ガイドの活用」を勧めています。
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知識や経験がなければ遭難の危険も
山歩きを含む登山は、競技スポーツと違って自然の中で行うスポーツです。管理された競技場や体育館では考えられませんが、山岳地帯では天候が急変したり、岩場など険しい地形が現れたりします。知識や経験がなければ、遭難にもつながる危険が潜んでいます。

環境省が取り組む中央アルプスのライチョウ復活事業で、中央アルプス・木曽駒ヶ岳周辺でライチョウ観察会が開かれた際、安全対策として山岳ガイドが同行した=2022年10月
かつて、山歩きや登山を始める際は、学生なら山岳部やワンダーフォーゲル部に入部し、卒業後は社会人の山岳会に入って、山歩きの知識や技術を学びました。しかし、1990年代以降、こうした組織に入らず、自由に山歩きを楽しむ未組織の登山者が増えてきました。
その理由は、登山靴やウェアなど軽量で使いやすい装備が増え、手軽に登山を楽しめるようになったこと。また、登山道や道標などが整備され、山が施設のように管理されるようになり、「山の施設化」が進んだことなどが挙げられます。これに、富士山に象徴される日本百名山のピークハンティングが、登山や山歩きの人気に拍車をかけているようです。
山岳遭難は冬山だけでなく低山でも多発
長年、山の取材を続ける中で、「これは危ないな」と感じることがあります。山岳会に入っていない登山者に山岳遭難や安全対策について質問すると、ほぼ同じ答えが返ってきます。
「岩登りや冬山に行かないから、自分は遭難しない」「高尾山など低山で安全なルートばかり登っているから心配はない」
これは、非常に危険な考え方だと思います。
実は、山岳遭難は岩登りや冬山だけで起きているのではなく、低山でも多発しているのです。

ロープウェーで手軽に登ることができる中央アルプスの木曽駒ヶ岳だが、悪天になると視界が悪くなるうえ、強風も吹き荒れる

北アルプス・上高地から入山できる日本百名山の焼岳は、日帰り登山が可能で人気が高い。しかし、活火山で山頂付近には、火山ガスの噴気があり、ヘルメットをかぶるなど安全対策が必要だ
警察庁によると、2021年に全国で発生した山岳遭難を都道府県別でみると、1位長野県257件、2位北海道197件、3位東京都157件、4位神奈川県135人、5位兵庫県126人となっています。
ワースト5位までのうち、東京都、神奈川県、兵庫県という都市部の3都県が入っているのです。
実際、高尾山や六甲山は遭難が増えています。コロナ禍の影響で、登山者やハイカーが身近な山に登るケースが増えたためと見られます。高尾山では、前年より8人多い85人が遭難しています。
山歩きだからといって、遭難の危険はあるのです。全国の遭難の態様(状況)別では、道迷いが最も多く41.5%、次いで転倒が16.6%、滑落16.1%を占めています。
高尾山では、捻挫や骨折、体調不良などで搬送される人が多いそうです。
初心者から上級者までレベルに応じ手助け
「ハイキング程度の山歩きを楽しみたい」と考える人にとって、社会人山岳会に入って本格的な登山を学ぶことにためらいが生じるのは、無理もありません。
そんな悩みに、頼りになるのは山岳ガイドの存在です。
山岳ガイドは初心者から上級者まで、レベルに応じて登山や山登りの手助けをしてくれます。

長野県大町市の大町岳陽高校は毎夏、北アルプスなどで全校登山を実施している。山岳ガイドが同行して安全登山に努めている。2018年は北アルプス・燕岳に登った
以前から山岳ガイドは、各地で活動していましたが、資格制度の統一やガイドの資質向上が求められ、2003年に各地のガイド組織が社団法人化され、2012年公益社団法人日本山岳ガイド協会が発足しました。安全で楽しい登山を支えるだけでなく、自然環境保全の指導にも力を入れています。
同協会の武川俊二理事長は「現在は、ユーチューブなどの動画で登山を学ぶ人がいるようです。しかし、映像だけでは学べないことが多いのです。直接指導を受けることで、技術や安全対策まで学べる山岳ガイドを活用してほしいと思います」と話しています。
(山岳ジャーナリスト 近藤幸夫)
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