<連載> Reライフ山歩き部

山岳ガイドを活用しよう(下) 高山植物巡りやネイチャーガイドも人気

近藤幸夫のReライフ山歩き部 第10回

2023.03.27
近藤幸夫の山歩き部

 全国には、公益社団法人日本山岳ガイド協会に所属するガイド組織があります。今回、長野県松本市に拠点がある「認定NPO法人 信州まつもと山岳ガイド協会やまたみ」の福田浩道事務局長に活動内容などを聞きました。

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山と自然が大好きな人たちの集団

 やまたみは、北アルプスのふもとのガイド協会として2005年に設立されました。所属するガイドは約100人。地元に住んでいる人、山と自然に憧れて移住してきた人、都会に住んでいるがこの地が好きな人、さまざまな場所ですが、山と自然が大好きな人たちの集団です。

 職業は、山岳ガイドの専従者だけでなく、山小屋経営者や山岳救助隊員、山岳写真家、猟師、登山用品店スタッフら様々です。山とともに生きている「山の民」なのです。

やまたみ大正池 やまたみでは、北アルプスの玄関口の上高地での自然観察ツアーを実施している。上高地を代表する大正池

やまたみでは、北アルプスの玄関口の上高地での自然観察ツアーを実施している。上高地を代表する大正池(写真はいずれもやまたみ提供)

 

 やまたみは、NPO法人なので、営利目的のガイド登山でなく、遭難防止や環境保全、青少年の育成などを活動目的に掲げています。

 福田さんは「山歩きや登山をガイドするには、どんなレベル、内容を求めているかで変わってきます。山頂を目指すだけでなく、山の自然を楽しむ目的のネイチャーガイドの依頼もあります。まず、何をしたいのかをはっきりさせるのが大切です」と話しています。

 

キッズ登山やファミリー登山を企画

やまたみ山トレ赤岳 やまたみ所属の山岳ガイドが指導する夏山に向けたトレーニング企画が『山トレ』。八ヶ岳の赤岳で岩場や鎖場、はしご歩きをトレーニングする

やまたみ所属の山岳ガイドが指導する夏山に向けたトレーニング企画が『山トレ』。八ヶ岳の赤岳で岩場や鎖場、はしご歩きをトレーニングする

 

 やまたみでは、参加者のレベルや希望に応じたプログラムを提供しています。

 「やまたみ登山学校」は、山歩きの初心者や登山経験者を対象にしています。「学ぶ」「知る」「覚える」を主軸にした登山や山歩きのための学習講座です。装備や地図の読み方などの基本的な技術を学ぶ「机上講座」を設け、1回千円で手軽に参加できます。また、霧ヶ峰など日帰り登山の実践講座も人気を集めています。

 山歩きの愛好者にぴったりなのが、「花の山旅」です。あまり人に知られず、全国の静かな山域に咲く花を訪ね、ゆっくり歩いて写真撮影を楽しみます。やまたみが主催・企画するクラブ活動です。

 北海道の礼文島や岐阜・石川県境にそびえる白山のクロユリ、8月には中央アルプスの木曽駒ヶ岳にチャレンジし、高山植物のお花畑を巡る本格的な登山も予定しています。

やまたみキッズテント やまたみキッズ登山クラブは子供たちだけで参加するプログラム。山岳ガイドがテントの張り方やクライミングを指導する

やまたみキッズ登山クラブは子供たちだけで参加するプログラム。山岳ガイドがテントの張り方やクライミングを指導する

 

 また、野外活動を通じて子供たちの健全育成を目指すのが「やまたみキッズ登山クラブ」です。子供たちだけで参加し、山岳ガイドが登山の楽しさ、魅力を伝えます。家族で参加する「やまたみファミリー登山教室」も実施しています。

 もちろん、講座やクラブ形式でなく、個別に山を案内するガイドも依頼できます。ハイキング程度から冬山や岩登りなどの上級者コースまで様々です。ガイドの役目は、安全に楽しく登山ができるようにすることです。

 北アルプスの名峰として知られる槍ヶ岳の山頂に立つことが目的なのか、北鎌尾根などのバリエーションルートから山頂を目指すのか、要望に応じて装備も料金も違ってきます。

やまたみ登山企画 やまたみ所属の山岳ガイドは、スノーシューの雪原歩きなど様々なプログラムを企画する(写真はいずれもやまたみ提供)

やまたみ所属の山岳ガイドは、スノーシューの雪原歩きなど様々なプログラムを企画する

 

コロナ禍で修学旅行先としても台頭

 最近では、やまたみへのガイド希望の傾向に変化が出ています。

 福田さんによると、新型コロナウイルスの影響で、高校生の修学旅行のネイチャーガイドの依頼が増えているそうです。

 場所は、やまたみが拠点とする松本市にある国際山岳観光地の上高地です。標高1500メートルの上高地は、目前に3千メートル級の穂高連峰がそびえ、梓川の清流や野鳥のさえずり、遊歩道沿いに咲く花々……。自然観察には、これ以上ないフィールドなのです。

 コロナ禍に見舞われ、海外への修学旅行ができなくなりました。また国内でも京都などの都市部への旅行は、感染対策が難しく、厳しい状況です。そこで、自然の中で距離を取って体験できる上高地のネイチャーツアーが、修学旅行先として台頭してきました。

 コロナ禍前の2019年、やまたみがガイドしたのは、3校約600人でした。しかし、2022年は15校約3千人と急増しました。2023年も順調に予約が入っているそうです。

学校登山 新型コロナ前、松本市内の中学生の学校登山で、やまたみの山岳ガイドが同行した。燕岳をバックに、宿泊先の燕山荘の赤沼健至さんがアルペンホルンの音色を披露した

新型コロナ前、松本市内の中学生の学校登山で、やまたみの山岳ガイドが同行した。燕岳をバックに、宿泊先の燕山荘の赤沼健至さんがアルペンホルンの音色を披露した

 

 今回は、やまたみを紹介しましたが、日本山岳ガイド協会によると、全国各地に同協会所属の山岳ガイド組織があります。北アルプス・立山連峰や剱岳をフィールドとする立山ガイド協会や北海道山岳ガイド協会、関西山岳ガイド協会などです。それぞれホームページで活動内容を詳しく紹介しているので、ぜひ山岳ガイドと一緒に山へ行き、安全な山歩きを楽しんでください。

(山岳ジャーナリスト 近藤幸夫)

認定NPO法人 信州まつもと山岳ガイド協会やまたみ

〒390-0304 長野県松本市大村1082-4
TEL:0263-34-1543(平日9:00~17:00、年末年始を除く)
FAX:0263-55-6194
E-mail:info@yamatami.com

  • 近藤幸夫
  • 近藤 幸夫(こんどう・ゆきお)

    山岳ジャーナリスト

    1959年生まれ。信州大学農学部を卒業後、86年に朝日新聞社に入社。初任地の富山支局(現富山総局)で山岳取材をスタートする。大阪本社編集局運動部(現スポーツ部)に異動後、南極や北極、ヒマラヤなど海外取材を多数経験。2013年、東京本社編集局スポーツ部から長野総局に異動し、山岳専門記者として活動。山岳遭難や山小屋、ライチョウなど山を巡る話題をテーマに記事を執筆。2022年1月、フリーランスになる。日本山岳会、日本ヒマラヤ協会、日本山岳文化学会に所属。長野市在住。

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