<連載> 今すぐできる終活講座

人生100年時代、長い間に大きな差を生む新NISAとは

自分らしいお金の使い方⑦

2023.04.21

 「終活」や「相続」について考えていますか? 大切な人や社会のために財産を役立てたいけれど、何からやればよいか迷っているという人も多いのではないでしょうか。そんなあなたのために、遺贈寄附推進機構代表取締役の齋藤弘道さんが今すぐ役立つ終活の基礎知識やヒントを紹介します。前回に引き続き「資産運用」のお話です。今回は2024年から始まるNISA(ニーサ)の新しい制度についてうかがいました。

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長い老後、小さな差がやがて大きな差になるかも?

NISAってそもそもなに?

 みなさん、「NISA」や「つみたてNISA」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。NISAは、2014年1月にスタートした、少額からの投資を行う人のための非課税制度のことです。2016年1月に「ジュニアNISA」、2018年1月に「つみたてNISA」が追加されました。

 通常、株式や投資信託などに投資した場合、売却利益や配当に対しては約20%の税金がかかりますが、NISAを利用することで非課税になります。イギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)の日本版として、頭にNipponをつけてNISAという愛称がつけられたそうです。

高齢者にもNISAはメリットがある?

 NISAは投資の運用益が非課税になる制度ですが、「わずかな金利にかかる税金が非課税になっても影響ないよ」という声も聞こえてきそうです。確かに、これまでの低金利時代ではNISAのメリットは感じにくかったかもしれません。しかし、日本では多くの人が投資商品で運用せずに預貯金に預けている間に、外国との差が開いてしまいました(下のグラフ参照)。

終活)自分らしいお金7_とりかえ画像1)家計金融資産の推移_国際比較 ー
令和4年10月内閣官房資料「資産所得倍増に関する基礎資料集」より家計金融資産の推移・国際比較

 この20年あまりで米国・英国は家計金融資産がそれぞれ3.4倍、2.3倍へと伸びていますが、日本では1.4倍にとどまっています。日本の家計金融資産は現金・預金が過半を占めていて、欧米と比較すると有価証券の占める割合が低いのです。

 今後は日本でも、物価上昇に伴い金利が上昇する可能性も高く、外国の株式や債券を対象とした投資信託もNISAの対象商品になっていますので、非課税メリットは決して小さくありません。それに人生100年時代、少しの差でも長い間には大きな差になります。高齢者も関係ないとは言えず、利用を検討してみるのも良いでしょう。

NISA改正のポイント

 NISAは2024年から大幅に制度が変わり、機能が拡充されます。「制度の変更」というより「現行の制度が終了して、新しい制度が始まる」と言った方が正しいような気がします。主な改正点は下表のとおりです。それでは、改正のポイントを見ていきましょう。

現行NISA(2023年まで) 新NISA(2024年から)
一般NISA つみたてNISA 成長投資枠 つみたて投資枠
制度の併用 一般とつみたての併用は不可 成長投資枠とつみたて投資枠の併用OK
非課税保有期間 5年間 20年間 無期限
年間投資枠 120万円 40万円 240万円 120万円
非課税保有限度額(生涯) 600万円 800万円 1800万円(うち成長投資枠1200万円)
売却時の投資枠の再利用 不可
投資可能商品 上場株式・ETF・公募株式投信・REIT等 一定の投資信託(金融庁への届出が必要) 上場株式・ETF・公募株式投信・REIT等 一定の投資信託(金融庁への届出が必要)

 

①制度の恒久化と非課税保有期間の無期限化

 今までの投資可能期間(口座開設期間)は一般NISAが2023年まで、つみたてNISAが2042年まででしたが、この期限が撤廃されて恒久化されます。また、非課税保有期間についても一般NISAが最長5年、つみたてNISAが最長20年でしたが、これが無期限になります。つまり、これまでは早くNISA口座を開設しないと非課税期間をフルに利用できませんでしたが、新NISAではいつスタートしても非課税メリットを最大限に利用できることになります。

②成長投資枠とつみたて投資枠の併用

 今までは一般NISAとつみたてNISAの併用はできませんでしたが、新NISAでは一般NISAが「成長投資枠」に、つみたてNISAが「つみたて投資枠」に変更になるとともに、両者を併用することができるようになります。

③年間投資枠の拡大

 今までは一般NISAは年間120万円、つみたてNISAは年間40万円が上限でしたが、新NISAでは成長投資枠は年間240万円、つみたて投資枠は年間120万円に拡充されます。さらに②で述べたように2つの枠を併用することにより、最大360万円利用できるようになり、現行の一般NISAの最大120万円に比べて3倍に拡大されます。

④非課税保有限度額(生涯)の拡大

 今までは一般NISAは年間120万円×5年間=600万円、つみたてNISAは年間40万円×20年間=800万円が非課税の保有限度額でしたが、新NISAでは1800万円に拡大されます。ただし、そのうち成長投資枠に使えるのは1200万円に限られます。

⑤売却時の投資枠の再利用

 今までは、保有している投資商品を売却しても、非課税枠は再利用できませんでしたが、新NISAでは売却するとその分を空き枠として再利用できるようになります。例えば、新NISAの最大1800万円の枠のうち1000万円を利用(投資)していて、そのうち300万円を売却した場合、300万円分が復活して、空き枠が800万円から1100万円に増えることになります。

新NISAの注意点

 大幅に利便性が拡充する新NISAですが、現行NISAとの関係を含めて、以下のようにいくつか注意すべき点があります。

●現行NISAで利用中の資産はどうなる?

 現行の一般NISAやジュニアNISAでは、非課税期間終了後に翌年の非課税枠にロールオーバー(移管)することができましたが、現行NISAで運用中の資産を新NISAの口座にロールオーバーすることはできません。これは、現行NISAと新NISAの非課税枠が完全に別々だからです。

●今からでも現行NISAを利用した方が良い?

 現行NISAの非課税枠は、新NISAの非課税枠とは別々に管理されます。2023年に現行NISAを利用すれば、一般NISAで最大120万円、つみたてNISAで最大40万円の投資を(新NISAとは別枠で)行うことができます。もし資金に余裕がある場合は検討する価値がありそうです。ただし、一般NISAは非課税保有期間が5年で終了し、ロールオーバーできないため、5年後に換金しても大丈夫なように、リスクを取り過ぎない商品を選ぶことも大切です。

●新NISAの成長投資枠の対象にならない金融商品がある

 現行の一般NISAよりも投資できる商品に制限があります。株式・投資信託・ETF(上場投資信託)のうち整理銘柄・管理銘柄に指定されているもの、信託期間20年未満の投資信託、高レバレッジ型の投資信託、毎月分配型の投資信託は対象外となります。

公的年金や私的年金との優先順位

 ここまで資産運用の1つの方法としてNISAを紹介してきましたが、年金との優劣はどう考えるべきでしょうか。国民年金・厚生年金・企業年金は制度が決まっていますので、NISAと比べようもありませんが、代表的な私的年金であるiDeCo(個人型確定拠出年金)は任意加入ですので比較可能です。

 結論から言えばiDeCoが利用できるのであれば、iDeCoの方がNISAよりメリット(掛金全額が所得税控除になる等)があります。ただし、60歳以上にならないと引き出せない、掛金の上限額があるなどの注意点があります。それぞれの特徴を知った上で、自分にあった資産運用をしていきたいですね。

参考:金融庁 新しいNISAのポイント

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  • 齋藤弘道
  • 齋藤 弘道(さいとう・ひろみち)

    遺贈寄附推進機構 代表取締役、全国レガシーギフト協会 理事

    信託銀行にて1500件以上の相続トラブルと1万件以上の遺言の受託審査に対応。遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げた(後の「全国レガシーギフト協会」)。2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。

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