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野菜がしゃべる?「新しい広告」は受け入れられる? 

【読者会議/商品モニター会イベント】テクノロジー×広告の体験会

更新日:2018年09月28日

 人工知能やIoT(モノのインターネット)などの技術革新で、広告コミュニケーションも変化しています。朝日新聞Reライフプロジェクトは、「博報堂スダラボ」「博報堂アイ・スタジオ」とともに、「新しい広告のカタチ」をテーマにした体験イベントを8月4日に開きました。参加したのは、50代後半~70代の読者会議メンバー6人。

 当日の様子を、参加者より30歳ほど若いデジタル世代のライター中村洋太さんに、リポートしてもらいました。

 集まったのは、東京・有楽町の「博報堂アイ・スタジオ」。おしゃれなカフェ風の会議室のカウンターに、少し変わった野菜3種類が並びます。いずれも、有機野菜の通信販売で知られる「Oisix(オイシックス)」の商品です。

 体験会は、博報堂スダラボの須田和博さんの案内で始まりました。「では、みなさん、この野菜にさわってみてください」。
 集まった方々は「何だろう?」と興味津々でのぞき込みます。参加者のひとりが「かぼっコリー」と書かれた野菜を持ち上げた瞬間、爽やかで落ち着きのある男性の声が……

「ぼく、かぼっコリー!タネに栄養たっぷり。やわらかいから、そのまま食べられます」
「おすすめはスライスして、酢の物に」

 参加者からは「かわいいー!!」「タネも食べられるんだ」という声とともに、一斉に笑顔が漏れます。どうやら野菜にタッチしたり、持ち上げたりすると、センサーが反応して言葉を発する仕組みのようです。 


 次は「トロなす」。
「食感がトロトロ!トロみたいだから、私の名前は、トロなすです」
「煮崩れしにくいから、煮物にもぴったりなのよ」

 明るくてかわいらしい、少しゆったりとした女性の声です。

 最後は「たつやのにんじん」。
「阿蘇の大地の中で、農薬を使わずに育ちました」
「私の皮は、苦味が少ないですよ。さあ、丸かじりしてみてください」
 男性の声ですが、今度は坊主頭が似合いそうな、真面目で素朴な印象です。 

 それぞれの野菜が「しゃべる」たび、参加者は「へ〜」と深くうなづいていました。技術に対して驚いている様子はそこまで感じませんでしたが、野菜の情報そのものには関心や好奇心を刺激されているようで、聞き耳を立てて、セリフに対してしっかりと反応している様子が伝わってきました。

●「子どもみたい。褒めてあげたくなる」

 一通りの体験をした後、参加者の皆さんが席に着き、それぞれに感想を語り始めました。「親近感が湧いて子どもみたいな感じ。褒めてあげたくなる」と伊藤隆子さん(70代)は言います。あたかも、野菜自身が自己紹介しているような、その個性が「キャラクター」として響いた点が、みなさんの印象に残ったようです。

 「この『トロなす』が八百屋さんに売っていても、そもそも、トロなすって何?ということを説明してもらえなければ、珍しくて興味はあるけど高いし買わないよね、となると思う。だけど今回は、『トロトロになるけど、荷崩れしない』という野菜の情報を知ったことで奥行きがわかって、ちょっと試してみようかな、っていう気になりました」と小竹悦子さん(60代)。

 川村温子さん(50代)は「普段にんじんを買うとき、生産地は書いてあるけど、『どういう風に使ったらいいか』までは教えてくれない。皮ごと食べられるとか、甘みがあるとか、そう言われれば買ってみようかなっていう気になりますよね」。 

●「しゃべる野菜」はPOPよりも便利!?

 加えて、普段野菜を買うときに意識していることを問うと、「何を作るか決めて買うというよりは、最近は気になった野菜があったら先に買ってしまって、買ってから何を作るか考えることが多い」「珍しい野菜があったら、Facebookのネタにもなるし、とにかくまず買ってみる」などの意見も。買ってから考えるという「逆転現象」が起こる理由は、「調理方法はネットでいくらでも調べられる」から。

 だからこそ、「(調理方法を)売り場で教えてもらえたら背中を押される」という言葉に象徴されるように、その野菜をどう使うといいのか、どんな調理方法が適しているのか、そのような情報が一番知りたい部分なのだなと感じました。その意味では、頻繁に買うきゅうりやトマトよりも、珍しい野菜の方が「しゃべる」ことのメリットは大きいのかもしれません。

 店頭で説明書きのポップがついていることもありますが、今回のコミュニケーションは、それと比べても好評だったようです。「(老眼で)昔に比べて目が見づらくなっているので、耳からの情報はすごく良いなと思いました。小さい文字で何か書かれていても、メガネを外さないといけないから」と斎藤千枝子さん(70代)。これには、博報堂の須田さん、オイシックスの担当者の井上政人さんも、大きくうなづきました。お二人にはなかった視点、日頃から買い物をしている方たちならではの意見です。

●最新技術は若者のためだけじゃない

 正直なところ、私はネガティブな感想も多いのではないかと予想していました。このような最先端技術を用いた広告は、日頃からネットに慣れ親しむ若い世代にとっては比較的受け入れやすいものだと感じますが、年配の方々には果たしてどうなのか、と。

 しかし、結果は意外なものでした。次々と会場から意見や感想が飛び出し、しかもその多くが、予想以上にポジティブな反応。毎日のようにスーパーを利用する「現場の最前線」からの貴重な声を受け、須田さん、井上さんのメモを取る手が止まりません。お二人から笑みもこぼれました。

●「食べてみたい」の反応に、オイシックス担当者も笑顔

 オイシックスはインターネット通販から、最近、リアル店舗での販売を手がけ始めています。ところが、その違いによって、商品の魅力が十分伝わらずに苦労しているようです。
 「オイシックスの野菜は、普通の野菜に比べると少し高め。生産者の手間がかかっています。だからこそ食材の価値をしっかり伝えることが大切です。インターネットだと文字数制限がないので、説明を十分に書くことができるのですが、店舗では小さな字で情報を羅列しなくてはいけません」

 だからこそ、会場の反応を見ながら、井上さんは、今回の取り組みのてごたえを感じていました。
 「野菜の魅力や説明など、『お客様に伝わるかな?』と思っていたことが見事に伝わっていて、さらに『食べてみたい』というお言葉までいただけたので、とても嬉しいです」
 私にとっても一番の驚きは、参加者の皆さんが、野菜の「声」による細部の情報を鮮明に覚えていらしたことでした。ユニークな仕掛けに気を取られて、細かな野菜のセリフまで覚えていないのではないかと思いきや、そうではなかったのです。

●「おもちゃ感覚」は「最高の褒め言葉」と博報堂の担当者

 こんなユニークな広告ツールを開発した須田さんからは、「しゃべる野菜」を開発した経緯などのお話もありました。 
 「このマシンを開発したのは、産地偽装問題が世間を賑わせていた頃。生産地をお伝えするのに、何か楽しい方法がないかな?と思って、野菜そのものが『私は長野県の○○町から来ました』みたいに名乗るのが良いんじゃないかなと、若手のプランナーと一緒に考えました」
 須田さんによると、これまで国内の店頭やアメリカのテクノロジー見本市など、様々な場所で試験的に展示してきたが、「こんなに好意的な反応をいただけたのは初めてです」。
 さらに、「機械的な声や仕掛け」への抵抗はないのか参加者に尋ねると、「テクノロジーが使われている感じはしない。アナログな感じ」「おもちゃのような感覚」といった声が挙がった。須田さんは「大変な褒め言葉。技術を使ってコミュニケーションを良くしていきたいが、テクノロジーだと感じない、自然なカタチにするのが僕たちの仕事」と感想を漏らした。

 参加者からは他にも、「生産者の訛りが入っていたら楽しいかも」「いや、生産者の声じゃなくて、野菜の言葉だからいいんじゃないか?」といった議論があがったり、「音の出るスピーカー部分をもっと自然な見え方に工夫した方がいい」などといった意見もあがり、須田さんは「今後の課題にしたい」と話しました。

(取材・文/撮影 中村洋太)

 今回の「新しい広告体験会」は第一弾。デジタル技術が進む中、広告やコミュニケーションのカタチはどうなっていくのか? 暮らしに入ってくる最先端テクノロジーが、誰にとっても使いやすい、便利なものになるように、朝日新聞Reライフプロジェクトは、今後も新しい商品を読者会議メンバーに商品をお試しいただき、ともに考える機会をつくっていく予定です。

朝日新聞Reライフプロジェクトでは、人生100年時代ならではの悩み・課題を解決したり、人生を楽しむための商品・サービスの体験会を、企業の皆様と企画しています。コラボレーションのお問い合わせは、relife_biz@asahi.comへお願いします。

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