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苦しみも愛も……キリスト描き続けた画家ルオーの作品 

読者会議メンバーが鑑賞した「ジョルジュ・ルオー展」

更新日:2018年11月13日

 キリストの顔を正面から描く。多彩な色使いで市井の人々とふれあうキリストの姿を描く――。さまざまな手法でキリストの姿を描き「20世紀最大の宗教画家」と呼ばれるジョルジュ・ルオー(1871―1958)の特別展開館15周年特別展 ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデルニテがパナソニック汐留ミュージアム(東京・汐留)で開かれています。ヴァチカン美術館から初来日した《秋 または ナザレット》などみどころも多い展覧会を読者会議メンバーも鑑賞しました。その感想の一部を紹介します。


幸福感に包まれた展覧会場
 これまで私の中でルオーといえば故郷岡山県倉敷市の大原美術館で観た《道化師》だった。思い出すたびに思わず奥歯を噛みしめてしまうような緊張感。重々しく暗い印象だ。
 ところが今回、この展覧会でルオーに対する印象が大きく変わった。入口からすぐの銅版画の連作『ミセレーレ』こそ私のそれまでの印象と重なるものだったが、程なく《ヴェロニカ》がその大きな瞳で微笑みかけてくれた。絵を観ている私のほうが逆に心の内までまっすぐ見つめられているよう。それでいて緊張感は無く、全てを優しく包み受け入れてくれるように感じる。続いて花やユートピアなどのテーマと共に鮮やかな色が溢れ、暖かい印象の絵が続く。《秋 または ナザレット》はオレンジ色に光り輝いていて、いつまでも観ていたい気持ちにさせられる。実りの秋の暖かい日差しを浴びたような幸せな気持ちで会場を後にした。(神奈川県 瀬本冷子さん 60代)

 苦しみを解くキリストの表情
 第一章はモノクロの作品が多く、タイトルだけを見ても『ミセレーレ』12《 生きるとはつらい業…》のつらさ、人間の罪、戦争の悲惨さが伝わってくる。悲しみ、生きることの苦しみが重くのしかかり、何に対してなのか明確にならないが自分の心の中を見つめ反省する気持ちになった。
 第二章の《聖顔》では年代によってキリストの顔の描き方の変化がわかりやすく展示されていた。キリストの慈悲深い表情を見ていると、第一章で感じた苦悩や悲しみが解かれていくようだ。
 全体を通して人間の持つ悪、苦悩、罪を表現し、それを十字架で背負うキリストへの思いがどの作品にも表れていた。宗教は違ってもそれを感じることができたのは私にとって大きな収穫である。おごることなく自分を見つめ清らかな心を持ちたいと思う。キリストの表情や多彩の色使いで人の心の中まで見通される画風ではないだろうか。国や宗教が違っても人は同じであることを知らされた。(東京都 岩田麻実さん 50代)

 ルオーの作品をこれほどまとめて観たのは初めて。圧巻でした。ルオーの宗教画は、一見、無邪気で稚気に富むように見えるけれど、同時に神秘的で神聖心な雰囲気もあり心洗われるようです。たとえるなら円空仏のような……。部屋ごとに壁の色が変えてあるなど展示に工夫があり、楽しく鑑賞できました。(三重県 本多裕美子さん 40代)

 ルオーの「モナリザ」と呼びたい
 入口でグレゴリオ聖歌が流れ、ルオー本人が写っている短編の映画(部分)が最初の展示。その映画と同題の連作『ミセレーレ』という、信仰をテーマとした銅版画集の部屋に進む。音に誘われるというユニークな導入だ。
 絵の質感は実物を見ずには分からないレリーフ級の厚塗りが特徴のルオーだが、私がこの日一番会いたかった《ヴェロニカ》は、すっきりと薄化粧で鑑賞者に穏やかなまなざしを向けていた。ルオーのモナリザとでも呼びたい絵だ。
 宗教画が多いが、今回のトピックの《秋 または ナザレット》をはじめ、ルオーが信仰から得ていたのだろうと同質の安寧を、現代人が欲する帰属感や自分の存在への確信を満たしてくれる作品が多かった。(埼玉県 沼田 緑さん 50代)

  厚く塗り重ねられた絵の具、大きい輪郭線に区切られた画面の作品群を堪能できました。特に、大きな目優しい口許に真赤な唇の伝説の聖女《ヴェロニカ》を、至近距離でゆったりと観ることができるとは感無量でした!
 更には、銅版画集『ミセレーレ』1《神よ、われを憐れみたまえ、あなたのおおいなる慈しみによって》などの3点、試し刷りされた銅版画上に油彩で加色された作品、さらに別の3点では廃棄された銅板が展示されていて、それぞれを見比べることができ興味倍増されました! (千葉県 新島恭二さん 70代)

  《ヴェロニカ》の優しい色合いと、少しだけ開けた口元が何とも癒しでしたね。目も大きいので、全体的におおらかで包容力のある印象でした。《青い鳥は目を潰せばもっとよく歌うだろう》はタイトルこそ恐ろしいですが、絵自体は目をつぶってリラックスしているような女性が描かれていて、色合いも涼しげで素敵でしたよ。
 全体的に宗教の絵が多いですが、花束の絵などは色彩が柔和かつ綺麗で癒されます。ステンドグラスも光に照らされて美しく、教会にいる気分になれましたよ。(千葉県 伊藤綾美さん 30代)

心の平安 感じる時間 
 思えば高校時代からずっと心惹かれているルオーの絵画。キリスト教信者ではない私にも、画家の信仰の強さがダイレクトに伝わります。言葉ではなく絵画表現で、孤独や苦しみ、愛や輝きを、しみじみ感じさせてくれます。
 今回は特に宗教的な作品のみの展覧会となっていて、観ているこちらの気持ちが不思議に落ち着いてくるのを実感。「癒し」という言葉がブームのようになっていますが、絵画の前でシンとした心の平安を感じる時間になりました。(東京都 菊住泰子さん 50代)

  ルオーの信仰心の強さだけでなく、信仰心の表現の変化や精神の昇華が見て取れる展示でした。生真面目ゆえに悩んだ時を経て、愛による救いを信じられる様になった心がそのまま作品に現れていました。生きていくことの希望を抱かせてもらった気がしました。(東京都 大野久美子さん 50代)

「じんわり」と気持ち温まる
 以前、二代目中村吉之助氏が「ルオーの絵が好き」とテレビで言っておられて、どんな作品なのだろうと気になっておりました。
 特徴的なあの太く、一見雑のような線の描き方は、ルオー氏の心の熱さが表れているように思いました。特に、《聖顔》のキリストの眼差しは鋭くもじんわりと温かみを感じさせ、見ている側の気持ちまで、温めてくれるようでした。そう、ルオー氏の作品は、「じんわり」ときます。厚く塗られた絵具も。不思議な心持ちにさせてくれる作品でした。(神奈川県 前田登紀子さん 40代)

  なんだろうこの画風は? 写実でもなく、抽象でもなく。ある意味、子どもが書いたようにも見える。でも、じーっと見ていると、なんだろう、胸に迫ってくるものがあり、見入ってしまいました。これが宗教への情熱なのかな。なかなか難しくもあり、心に残る展覧会でした。(千葉県 佐々木吉仁さん 50代)

光が透けてくるような絵に魅了
 ジョルジュ・ルオーの絵は太い輪郭線が印象的ですが、もともとステンドグラス職人だったと聞いて納得しました。水彩とパステルで描かれたものでも、ルオーの絵からは光が透けてくるように感じました。展示会の流れが、モノクロの版画からカラーの展示になっていたので、一層鮮やかに感じました。特に、青と黄色の色遣いが印象的でした。ルオーが年を重ねるごとに、作品に明るさが増している気がします。(東京都 井上美鈴さん 50代)

「宗教的主題を絵画に」挑戦の軌跡
 「愛のすべて。」と題されたルオー展は、一人の芸術家が探し求めた美について取り組んだ姿を余すことなく楽しませてくれるものでした。
 特にカトリック教徒ルオーの 宗教的主題の絵画化への挑戦の痕跡を、技法も含めて辿ることができた点は見所でした。数多く描かれた額の中で四角の装飾絵枠に囲まれた空間へ塗り描かれた《聖顔》からの様々な訴えは、晩年に向けて聖書や祈りの空間へと導かれる穏やかな作風の絵画や教会装飾へと形を変えていく、まさに信仰に貫かれた芸術とその人生に向き合う機会となりました。(東京都 富田弘二さん 60代)

 今回展示を見て一番感じたことは、ヴァチカン美術館が初めて日本に出品する作品が4点公開されたことです。次にパリ所蔵の《ヴェロニカ》《聖顔》のルオーの代表作が素晴らしかったです。敬虔なキリスト教徒のルオーが制作する作品は信仰を込めたものであり、革新的な造形美で描き、且つ聖なる芸術と思います。(東京都 友野啓三さん 60代)

コレクターとの親密さ知る資料
 ルオーの技法を間近でみられました。分厚く重ねられた絵の具の重みを感じます。華やかな色と暗い色の差が目立ちました。私人の家で保管されていた 表裏に描かれた作品《聖願》と、熱心なコレクターでパリに在住していた福島繁太郎氏によってかかれた「箱書き」が なんとも2人のリラックスした関係からなる 温かさを感じました。(神奈川県 伊藤理津子さん 40代)

  あの《道化師》に会ったのは若き頃! とても印象的な 画法に心動かされました。
 敬虔なるキリスト教徒だった彼は人間の苦悩、あるいは慈愛や赦しを表現しました。文化の違いや国境を超えて今なお多くの人々を惹きつけてやみません。彼の画集『ミセレーレ』26の類作、《渇きと恐れの国では または 秋》 では運命を受け入れるものの美しさが描かれていました。(東京都 関口和子さん 60代)

《聖顔》の作品数の多さに驚き
 「暗い」。これが第一印象。今までに何点かルオー作品を観ていたが、暗くその中に漂う神秘性は凄い。実は、この前にカール・ラーション展でスウェーデンの明るく楽しい雰囲気を満喫してから行ったのでなおさらそう感じられたのかも知れない。
 ルオーの作品は、ほとんどが神にキリストにまつわるもの。銅版画の連作『ミセレーレ』のモノトーンの神々しさ。対して、厚く絵の具を塗り重ねた豊かな色彩の宗教画。無信仰ながらどっぷりと聖なる世界に浸かってきた。《聖顔》がこれほど多く描かれていたことも驚きだった。これほどのルオー芸術に接する機会はもうないであろう。とても貴重な体験だった。(栃木県 尾島政一さん 70代)

平面に「受肉」した「2.5次元」の美術
 ルオーは、国立西洋美術館にある作品数点を観て、たっぷり絵の具を使った作風に圧倒された経験があった。その作品を鑑賞するたびに、どのような経緯で作風が磨かれていったのか、大変気になっていた。 
 このたび、鑑賞の機会をいただき、ひとつの発見に至った。
 2次元的な絵画が、絵の具の積み重ねによって「受肉」した物質へと変貌を遂げていく様子を解説したメモをみたからだ。言い換えると、キャンパスに描く、2次元ではなく2.5次元の美術がこの時代に存在していたと言うことであろう。普段、美術作品の解説は作品以上に頭に残さないように心がけているが、この解説メモを目にして、とても強烈な印象を受けた。
 許されるならルオーの作品に限らず、「受肉」というワードはどちらかで使わせて頂きたい。(東京都 新里拓也さん 20代)

 〈 パナソニック汐留ミュージアム〉 20034月、東京都港区東新橋1丁目にあるパナソニック東京汐留ビル4階に開館。初期から晩年までの油彩画や代表的な版画作品などを中心としたルオー・コレクションは現在約240点と日本有数の規模。館内の「ルオー・ギャラリー」で一部を常設展示している。「開館15周年特別展 ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデルニテ」展を129日まで開催中。同ミュージアムによると、ルオーの名を冠にした美術館は世界で唯一という。

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