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人生最後の旅 温かく包まれる感動のラスト 

読者会議メンバーがみた映画「家へ帰ろう」

更新日:2018年12月13日

 朝日新聞Reライフプロジェクトでは、読者会議メンバーを映画の試写会にご招待し、鑑賞後に書いていただいた感想を紹介しています。今回の映画は「家(うち)へ帰ろう」(アルゼンチン・スペイン、2017年)。第2次世界大戦中、ナチスの強制収容所(ホロコースト)からの逃亡を救ってくれた命の恩人との再会を果たすため、88歳の仕立屋の男性が、戦後逃れたアルゼンチンから故郷ポーランドへ、人生最後の旅をする物語です。

(c) 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A

 「終戦」を告げた最後の一言
 90歳近い老人の世界半周一人旅には、コメディーとも思える要素もありました。でも、人ひとりが一生を終えてもおかしくないくらいの年月が経過していても、老人の中で戦争は終わっていないし、心の傷は全く癒えていないのだと、彼の表情が訴えていました。人生の最後に友人への感謝の気持ちを直接伝えたいという気持ちがいっぱい詰まっていたのだと思います。
 最後の、「家へかえろう」の一言で、やっと彼の戦争は終わり、自分の人生の最後を落ち着いて迎える気持ちになったんだと思ったら、やっぱり泣きました。私も人生の折り返し地点をとうに過ぎ、これからの生き方を考える機会をもらいました。(神奈川県 福田京子さん 50代)

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  愛と信頼の場所こそが「家」
 信じられない苦しい状況下で結ばれた信頼の関わりは、70年の歳月を経ても揺らぐことなく、静かで感動的なラストシーンを迎えます。
 「家」とは愛と信頼で迎えてくれる人の居る場所なのでしょう。人は信じられない残酷さで、戦争や差別で人を傷つけ、心身に忘れることの出来無い深い傷を負わせることもあります。それでも一方で、愛と思いやりのある関わりで他人を包み込み、心身を癒やし再生させることも出来ます。
 老いの階段を上り始め、想定外の現実に落ち込む機会が増えました。勇気を出して一歩踏み出して、かたくなな自分自身から物事を受容して生きられる新たな自分自身になってゆきたいと思いました。(東京都 白倉美智子さん 60代)

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  市井の人の知恵に共感
 ホロコーストにより離れた父祖の地へ帰るロードムービーといえば、身構えるようなテーマの重さを感じてしまう。しかしこの映画は、取り戻した安寧に埋没しきれない被害者側だけでなく、加害者側の今も描いている。乗り越えなければならないエピソードは市井の人の知恵で果たされていく。それは鮭(さけ)が帰巣本能によってひたすら障害を乗り越えて川を遡行(そこう)する姿に重なる。「人生捨てたもんじゃない」と、誰もが共感する映画だと思う。(千葉県 小形 徹さん 80代)

  主役と魅力的な5人の女性たち
 アブラハムの顔に刻まれたしわと、ダンディーなスーツ姿がとても印象的な映画でした。そして映画に出てくる5人の女性がどれも素敵。がめつい孫娘に、お手伝いの女性、マドリードのホテルの女主人、ドイツ人の文化人類学者、そしてポーランドの看護師。アブラハムの意固地な頑固さと、半面の人としての深みが、女性たちとの対話の中でも浮かび上がりました。マリア役を演じたアンヘラ・モリーナが最初に登場した時からどんどん変わっていき、とてもチャーミングな女性になっていくのはさすがでした。
 ただ、「家へ帰ろう」という映画タイトルがあまりに普通すぎて、少し残念でした。たとえば、「故郷に帰る道」とか、「海を隔てた約束」などを考えました。(東京都 松本典丈さん 60代)

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  もし「彼」に出会ったならば、そのとき私は……
 かたくななおじいちゃん故の思わずほほ笑む道中、「映画の結末がどのようになっても涙があふれそうだな」と思っていましたが、その通りでした。70年の時を隔てた友情、苦難の旅の途中で出会った人々の優しさと思いやりが、最後のシーンで一瞬にして報われるのは映画ならではの感動でした。もし自分がこのような人生の旅人に出会ったとき、果たして優しく寛容な気持ちで接することができるだろうか。自分には関係ないと避けてしまわないか、人を思いやる心の余裕を持ち続けたいと思いました。邦題の「家へ帰ろう」はぴったりです。(東京都 武藤裕行さん 60代)

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  人に対する信頼 呼び覚ましてくれた
 古希越えた私より歳下の俳優が、ホロコーストに遭遇した88歳の人間をよく演じた! 「単に聞いたんじゃない、俺は見たんだ」という心の叫びを受け止めなければならない。重い課題を負ったようだが、スクリーンはユーモアにあふれ、すれ違う人々の善意が人間に対する信頼を呼び覚ましてくれる。乱発される「人の心に寄り添う」や「人と人の絆を結ぶ」が空しく響く。昭和元禄、平成元禄、浮かれている間に世の中終えたくないと思う。(神奈川県 間地文夫さん 70代)

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  鑑賞後の温かい空気感
 この物語はフィクションだけれども、アブラハムが体験したことは実際に多くのユダヤ人の身に起こったことであり、昔の話として終わらせられずに今も続いている現実の物語なのだということに、改めて気づかされた。身内であっても体験していない者にとっては、やはり遠い昔話となってしまうのは、日本人にとっての広島・長崎と同じかと思った。とはいえ、映画は決して悲観してはいない。見終わった後に残ったのはあたたかい空気だと思えたから。(東京都 斎藤晴子さん 50代)

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  私自身が旅の伴走者に!
 旅の始まりのチケット確保からして怪しげでスリリングだし、「情けは人のためならず」を地で行く隣席ミュージシャンとの掛け合いも絶妙。また関わる女性たちとのやりとりもすんなり受け入れられる。女性はオシャレで頭の回転が速く、しかしどこか影を持つ男性が気になり、助けたくなる生き物なのだ。
 最初の旅で命をつないだアブラハムが、傷ついた心に下げたままの錘(おもり)を、ドイツ人女性との関わりにより、自分を傷つけた当事国であるドイツで少しだけ降ろす瞬間に立ち合えたことに思わず安堵(あんど)の吐息を漏らした。この瞬間、私自身がこの旅の完全な伴走者であることにも気付いてしまった!
 生きるために余儀なく決断した若き日の旅も、恩人に感謝を伝えるために向かう人生最後の旅も、いずれも1人では先に進めない旅だった。途方に暮れた人のその先をかなえるために行う勇気ある善意、あるいはささやかな善意。その尊さの先にある心の変遷と、それにつながる奇跡にただただ涙があふれ、落ち放題となった。(千葉県 竹内美香さん 50代)

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  もう少しゆっくりした進行だったら
 優柔不断な後期高齢者である我が身に比べて「88歳アブラハム」の決断に驚くと共に感動しました。その心の強さが過去の戦争と友との約束にあると知らされますが、内容の濃さと重さの割に展開が速く気持ちが置いていかれてしまい、戸惑ってしまう私がいました。説明的にしてしまうのも問題がありますが、もう少しゆっくりとした進行だったら……、と思いました。(東京都 進士静子さん 70代)

  私にとっての帰る「家」「会いたい人」
 主人公がポーランドを去った1945年は私にとっても忘れがたい年です。1940年に旧満州で生まれ父の転勤で終戦前に日本に帰国し父の故郷の大分に疎開していました。戦争の時代を生き、いま80歳を迎えようとしている今、私にとって帰る家とは、会いたい人とは誰かを考えてみました。会ってみたい人は花ちゃんと呼ばれていた私の中国人の子守さん、帰ってみたい所はかつて疎開した大分の海沿いの漁村です。(東京都 工藤喜代子さん 70代)

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  戦争の疵ほぐした人々の優しさ
 ただ「感動」の二文字だけでは伝え切れない思いが残る。ホロコーストとは比ぶべくも無いが、今は他国となった地で生まれ戦後の引き揚げを体験した自分の生い立ちとの重なりだ。老いの現実が招く悲哀が底流に漂う中でも、旅の途中で出逢(あ)う人々の優しさは戦争の疵(きず)を引きずる頑固な老人の心を解きほぐし「人生捨てたものではない」と共感させた。原題『THE LAST SUIT』を『家(うち)へ帰ろう』としたのは実に名訳と思う。(東京都 木ノ本博通さん 80代) 




映画「家へ帰ろう」
2018年12月22日(土)よりシネスイッチ銀座にて全国順次ロードショー。93分/2017年
公式ホームページ http://uchi-kaero.ayapro.ne.jp/

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