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「日本のゴッホ」が描いた関東大震災から復興する人々 

読者会議メンバーが観た長谷川利行展@足利市立美術館

更新日:2019年01月07日

 「日本のゴッホ」とも呼ばれた長谷川利行(はせかわ・としゆき、1891-1940)の巡回展が2018年11~12月、栃木県の足利市立美術館で開かれました。関東大震災後の復興期、躍動する東京の街と人々の姿を自由奔放な筆致と天性の明るい色彩で表現し、太平洋戦争が勃発する前に、その破天荒な短い人生を閉じた画家の回顧展です。ちょっとした旅を楽しみながら、地方の美術館を訪れた読者会議メンバーの感想を紹介します。

心がそのまま形になった「美」

 衝撃的な作品群だった。いわゆる世間一般的なステキな絵とか、見て気持よくなる絵ではなく、見る人の動揺をさそう、心をつき動かすような作品ばかり。疲れたが、見る意義のある、重たい作品たちだった。
 作者の迷いや苦悩や、出口を求める情熱やらが、まとまりのないままに、そのままぶつけられた絵画。完成された美というより、心がそのまま形になったような、どう受け止めたらいいか、考えてしまうような作品。見応えのある作品ばかりだった。(栃木県 金子修さん 60代)

見えた「生」と向き合う叫び

 絵画を鑑賞するというより、生きることはどういうことなのかを感じとる機会だったという方が当てはまると思います。
 人には様々な価値観や生きる環境からの影響など、もちろん一通りではありません。しかし、大多数の人間は、時代に流されて自分の生活のことで精いっぱいです。ある意味、それが生きることです。
 長谷川利行のように、現実のなかでの「生きる」というものと真正面から向き合い、その感覚を表現した人間は少ないと思います。だからこそ、彼の絵を見ていると人間が本来持っている生きる力が湧き上がるのではないでしょうか。流されない、自分の中の叫びのようなものを絵にぶつけたのだと思います。
 絵画は鑑賞する側で全く違ったものになります。その絵をみたことが、その人の人生に何かを残します。長谷川利行がこの世に生まれて絵を描いたことは、そういう意味で生きることは価値があったと思います。(東京都 高橋美也さん 50代)

利行の色、音、匂い、息づかい

 長谷川利行の色は、赤茶黒青緑黄白そして時々紫。
 これらの色だけでこの広い世界を表現しつくしたのではないか。 
 絵は時に艶(つや)めき、沈み、濡(ぬ)れ、乾き、揺らぐ。 
 そして音と匂いと気配。
 《汽罐車庫》《煙突のある工場》《盛り場》《カフェー》
 そこには喧騒(けんそう)、土埃(つちぼこり)が混じった街の匂い、コーヒーの香りが漂う。
 無垢(むく)、とまどい、無造作、そして整然と様々な表情をたたえながら描き手を見つめるモデルたち。
 筆を執る画家の息づかいまで聞こえてきそうな肉薄感覚。
 紅潮。 
 長谷川利行の絵は彼の身体そのもの。
 私の頰も「少女」のようだった。
 (栃木県 高橋宏美さん 50代)

鑑賞者の心のつや映すマチエール

 どの絵にも人々の生き生きとした情景が描き出されていて、とても良かったです。
 できたばかりの地下鉄に乗ろうと集まった人たちのうきうきした気持ちが、待っているひとの後ろ姿から感じられる。バーやカフェ、プールのにぎわい、人間も風景もみんな動いている。クレーンのある風景には、ひとは描かれてはいないけれど、クレーンも船も波も動いている。人物でも「門つけ」など三味線から音が聞こえてきそうだ。
 花の絵も花弁がハラハラと散っていくように、絵の具がいっぱいのせているわけではないのに心が表現できていて素晴らしい展覧会でした。
 以前、見たときは絵肌(マチエール)がもっとカサカサした感じでした。見る側の心境の変化でしょうか。(千葉県 水谷良子さん 70代)

戦前のカフェに驚き 不遇な最期に涙

 この展覧会が(巡回展として足利の前に)東京でも開かれていたとは気がつかなかった。日本画家はけっこう好きで鑑賞するが、どうしても近代の洋画家は縁遠くなってしまう。
 今回は足利美術館での巡回展ということ。足利を訪れたことがなかったし、足利学校も見学してみたいと常々思っていた。
 日曜日というのに、ゆったりと鑑賞できた。最初は日本の画家が日本のカフェなどを描いているとは思えず、ヨーロッパあたりで書かれたものと勘違いした。長谷川利行は美術系の学校を卒業していないことと文学青年であったことに驚いた。彼の略歴をみていくと最後は養育院で終え、彼の持ち歩いていたスケッチブックなどはすべて焼却されたと読み、涙が出てきた。
 足利美術館を後にして、足利学校へ向かうが、当日はあまりにも寒く、床からくる冷たさが身にしみた。(東京都 小谷野とし子さん 60代)

印象に残る色使いと観察眼

 行ってきました。自由奔放の絵が、いっぱい。赤の使い方がとても印象的でした。
 力強く、生き生きしていて、生活に困窮し、体が衰弱していた方の絵とは、とても思えず、一言でいい表すとすれば、人々をよく観察して、生き生きと描いている。とても素敵でした。色使いがとても印象的で魅せられました。(東京都 新堀純子さん 70代)

「青春18きっぷ」で美術館へ

 1214日、思い切って「青春18きっぷ」を購入して横浜から足利まで出掛けました。
 幸い好天で、初冬の下野の田園風景と滅多に見られないという富士山を車窓からゆっくり見て足利で下車。先に足利学校の重厚なたたずまいと貴重な展示を見学後、足利市立美術館に向かいました。
 絵の展示はゆったりとしたスペースで、ゆっくりと見ることが出来ました。これが地方の美術館のすごく良い所です。絵は同じようなタッチのものが多かったのですが、この中で一番大きく他の絵と違い赤を主体とした《汽罐車庫》と、ガラスに描かれた小さいですが官能的な《裸婦》の2点が強く印象に残りました。
 ある年代では何となくダラダラただ描いているような印象を受けました。独立展ではなく柔らかい作風の絵と交ぜて展示されると強さが素直にでるのかなと思いました。
 帰りに高崎市タワー美術館に寄り、長野県信濃美術館の名品展を鑑賞して温かな気持ちで帰宅しました。これからも地方の美術展の開催募集があれば必ず応募します。(神奈川県 桜井等さん 70代)

もし利行がパリへ行ったならば

 急ぐ旅ではないので、都心から普通列車で移動した。電車の中で弁当を食べようと思っていたが、祝日と重なり人出も多くそれどころではなく足利に着いてしまった。到着は9時過ぎ。美術館が開くまで時間があったので、渡良瀬川の河原のベンチでおにぎりにかぶり付いた。空はどこまでも青く、遅くなったが気持ちのよい朝食をとることができた。
 いよいよ目的の足利市立美術館の長谷川利行展に向かう。恥ずかしいが日本のゴッホと言われる長谷川利行のことは知らなかった。確かに絵の具を厚塗りしたものがあり、ゴッホ的だ。個人的には、人物画よりも風景、情景を描いた絵の方が「格好よく」思えた。BGMはブルースかジャズかな。
 略歴によると彼は行き倒れて最期を迎えており、幸福な一生とは言い難いが破滅型の画家として面白い絵を描き、存在価値を示した。
 美術館を後にし、以前取引先が連れて行ってくれた蕎麦(そば)屋が休みでガッカリしたが、銀杏(イチョウ)や楓(カエデ)が色づいた鑁阿寺(ばんなじ)、足利学校の晩秋を楽しみ帰途に就いた。
 少々歩き疲れて電車の中でうとうとする中で、長谷川と同時代の画家である佐伯祐三のことを思い出した。彼のパリでの画風は日本のものとは随分違っている。きっとパリの風景に感染したのだろう。長谷川は外国には興味を持たなかったのかもしれないが、もし彼がパリに行ったらどんな感染をしただろうか、と想いをはせながら居眠りをした。(東京都 浮穴俊康さん 60代)

おどろかされた「乱雑なのに明るい絵」

 何の予備知識もなしに、「足利」に牽(ひ)かれて、足利市立美術館で開催中の「長谷川利行展」へ足を運んだ。東武鉄道足利市駅から美術館へ行く途中、澄みわたる秋空のもとで渡良瀬川鉄橋(人車道橋)を渡ったが、その鉄橋上から眺めた風景が素晴らしかった。それで「足利」の第一印象はすこぶるよかった。
 さて、「長谷川利行展」をみての感想だが、まずとっさに利行の絵はゴッホに似た筆致では? と思った。しかしそれ以上は考えなかった。彼の絵は美しいと思うが乱雑である。すべてが彼の心に映じた心象風景を描いたのであろう。そしてすべての絵が明るい。乱雑なのに明るいのにはおどろかされる。
 私は2枚の人物画に見入った。『岸田国士像』と『靉光(あいみつ)像』である。深みのある絵だと思った。日本人画家の描いた人物画の中で最高傑作と言えるのではなかろうか。(東京都 萩野瑞さん 80代)

力もらえる強く鮮やかな色

 紅葉で美しい足利に長谷川利行展を観に行ってきました。足利学校の隣にある鑁阿寺の大きな銀杏の木も、黄色に色づいていました。抜けるような青空と、輝いてキラキラと光るような黄色の葉のコントラストの美しさに、夫と感嘆しました。
 長谷川利行画伯の絵も、その自然の色の美しさと同じくらい様々な色にあふれ、美しさに目を奪われました。絵は力強く、鮮やかな色であふれていて、観ていると力をもらえるような印象を受けます。
 画伯の生涯を知ると、苦しい中であの鮮やかな色の絵に驚きます。苦しみの中で瀬戸際に追いやられると、最大の力を発揮できるのだろうと推測していました。最期、画伯一人で亡くなっていく寂しさは、どれだけのものだろうと想像してしまいました。(東京都 岩下晶絵さん 50代)

 時代背景、風景、音までも聞こえてくる

 初めて行く美術館でしたが、静かで庭には紅葉がとても美しくゆったりした気持ちで観覧できました。
 特に情報を持たずに伺いましたが、説明を読んだりせずとも、その時代背景や風景が目に浮かび、音までも聞こえてくるような作品の数々でした。写実的な描写ではなかなか伝わらないであろう心や気持ちが伝わってきたように感じます。
 私は特別絵画の知識はありません。上手な作品というより、写真などでは伝わらない作者の心や生活、言葉が伝わってきたように感じました。タッチ・色合いに個性がしっかり出ている個性豊かな作品たちでした。(群馬県 田島貴江さん 50代) 

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