ReライフTOP読者会議最近の活動リポート

平穏な日々に突然の幕 つらい展開に心を揺さぶられ 

読者会議メンバーがみた映画「ナポリの隣人」 下

更新日:2019年02月20日

(c) 2016 Pepito Produzioni
 Reライフプロジェクトの読者会議メンバーが鑑賞したイタリア映画「ナポリの隣人」の感想特集の後半です。衝撃的な事件によって突然幕を閉じる平穏な日々――。名匠ジャン二・アメリオ監督の最新作に心揺さぶられた読者会議メンバーの思いを紹介します。

「不安・疑問・祈り」 鳴り響く通奏低音 
 ナポリの地名からよみがえる、何十年も前に訪れた地の真っ青な海と空。だが、そんな穏やかな思い出を裏切るように映し出されたのは、人と車でごった返す無秩序な喧噪(けんそう)の下町だった。そして、ある意味、活気に満ちたその町と対照的に描かれた、主人公2人の冷ややかなほどの無表情と日々の生活。騒音と静寂、陽と陰。
 ジャンニ・アメリオ監督は最初の場面から様々な対比を伏線として描くことで、父と娘の内面的な対立を浮かび上がらせているかのようだ。
 観る者の心を波立たせ、隣に越して来た一家とのささやかな交流にしばしホッとしたのもつかの間、再び主人公たちを巻き込み、観客の心をも底知れぬ不安と恐怖に追い込んでいく。目と耳双方からの刺激で、心の奥底に絶えず不安感や疑問、痛切な祈りという通奏低音が鳴り響く印象の、実に重みのある映画だった。
 親子や夫婦の複雑な人間関係や疎外感ばかりか、今の時代に特に顕著な心の病の深い闇、医療の現場、移民問題など社会的、政治的なテーマまで、随所に重要なカットとして織り込まれ、現代を生きる私たちに強く迫り問いかけてくる。
 父と娘が手を重ね合わせる最後のシーンで初めて一筋の希望が見え、やっと救われた思いで、考え込みながら雨の夜道を帰って来た。(埼玉県 嶋垣ナオミ 60代)

すっきりしない重い暗い気持ちに
 主人公を演じる俳優の醸し出す雰囲気や表情に魅せられました。またナポリの街というのはこんなにもゴミゴミとしていて、車の運転も乱暴で法規も守られていないような、よくこれで交通事故が起きないなと思わせる描き方で、イメージと違って驚きました。私にとってイタリアとは、陽気な人々、おいしい料理、ワイン、ハイブランドの服、でしたから。
 肝心の映画ですが正直なところよくわかりませんでした。最初は家族とうまくいっていない老人が隣に越してきた一家と家族のような温かい関係を築き、人間というのは血のつながりでなく心のつながりだね、みたいな安心できる結末を予想していたからです。しかし映画の展開は恐ろしくドロドロしていて救いが見いだせませんでした。見終わった後もなんか重い暗い気持ちでスッキリできませんでした。
 私にはまだ理解できない部分も多かったので、また数年後に観たい映画となりました。
(東京都 池邊節子さん 50代)

(c) 2016 Pepito Produzioni

どうして信じることから始められないのか
 どうしてこんな難しい生き方になるのだろう。第二次世界大戦のあと、しっちゃかめっちゃかの時代に育ったゆえだろうか。現代の家族の在り方を、当時とは比較すべきでないのかもしれない。血のつながりばかりを重要視するつもりはないが、複雑に考えなくても家族力併せて、より良い方向へと向かって行くのが自然ではないのか。
 みんな無条件に家族を信じることから始められないの。食うや食わずの時代に比べると、豊かになったせいなのか。私には理解しがたく、もっと心を楽に生きられないのかなという思いから抜け出せなかった。(千葉家 松崎房子さん 70代)

見かけではわからない家族の内面 
 仕事の関係で幾つかの開発途上国に長く滞在した。家族(妻と子ども2人)も4年間インドネシアのスラウェシ島に滞在した経験がある。映画に出てくる家族の問題や隣人との関係は、どこへ行ってもあるのだと感じた。隣人が幸せそうな家族に見えたかもしれないが、実はかなり内なる精神的な問題があり、家族の問題は見かけではわからないことが多いということを再認識した。わが家族は、3世代(私の母、妻と社会人の2人の子ども)で一緒に生活し、今では珍しいかもしれない。どこの家族でも、常に理想とは違い、多々問題はあるかもしれないが、普通に生活するということにつきると思っている。(神奈川県 岡村義雄さん 60代)

(c) 2016 Pepito Produzioni

実の父と自分を重ね合わせた
 映画の父と娘に、自分をオーバーラップさせて観ました。
 突然母が亡くなり、一人で生きていけないという大正生まれの父を引き取り、近くの老人ホームに入所させ、毎週末会いに行きます。感謝や慰労の言葉が少ない父との会話は弾まず、娘からは「おじいちゃんのところに行くといつもいらいらしている」と言われる始末。父が母より先立つとばかり思っていて、独りになった母と旅行に行こうと考えていましたが、かないませんでした。
 父と娘は異性であり、特に主人公のように、コミュニケーションべたな父親と接するのは本当に難しいです。でも、私もこの親子のように、父と心を通わす関係を築きたいと思いました。(千葉県 大矢智恵子さん 60代)

(c) 2016 Pepito Produzioni

生きがいとは何か 気づかされた
 太陽が輝く夢の街「ナポリ」のはずが……「ナポリ、お前もか」と。最後のシーンで家族の土台は崩れずに在ったことが確認でき、少し救われましたが、心が重くなってしまいました。
 隣に越してきた夫婦は、それぞれにもろさがあり、主人公は2人を気に掛け、力になろうとします。しかし、悲惨な事件が起き、主人公はつかみかけた自らの存在の有意性と、受容してくれる人を失います。主人公は落胆しますが、思い違いに気づいた娘の大胆な告白を受け、二つのものを再び取り戻します。
 自らの存在の有意性が感じられること。大事に思って、心配したり、寄り添ったり、受け止めてくれる人が居てくれること。この二つが生きがいになるのですね。
 誰もが、持てる力を十分に発揮し、命を輝かして生きていける。それを支えられる社会であってほしい。(東京都 穴見加代子さん 60代)

人の言葉に耳傾ける大切さ
 老弁護士が家庭的なぬくもりを隣家の若い人妻に求めるが、彼女の悲惨な死とともに絶望へと突き落とされるさまはあまりにも悲しく、絆とは何なのかと考えさせられる。
 家族でも隣人でも心の救いになり得ない。老いた弁護士の悲哀と現実が、世界中を取り巻く現代社会の暗い闇と重なる。だが、最後に明るくまぶしいミラノの光と、高層ビルの間からわずかばかりのぞく青空が、今後の娘との仲を暗示しているようでホッとさせられる。
 自らから心を開き、人と真摯(しんし)に向き合う。そして、その人の言葉に耳を傾ける。そうすることの大切さが改めて思い知らされる。いつまでも深く考えさせる映画だ。(神奈川県 黒川正弘さん 60代)

(c) 2016 Pepito Produzioni

平凡だが基本的な人間関係見直す
 衝撃的な出来事が起きるが、父親と娘の絆は本質的には強く、消滅することはないという結論に何かほっとするものを感じた。
 核家族化が進み、個人の主張や権利が人の和より価値あるもののように評価される現代の社会。人と人との絆、連帯などは影が薄くなっている。この映画の主人公は、そうした考えのもと高齢になり、アパートで一人暮らしをしている。だが、隣家で起こる衝撃的な事件によって、自分が生きてきた生活歴に何が欠けていたかを知ったのだろう。
 現在、私たちの社会でも予期せぬ災害が頻繁に起こり、子どもの虐待、家族の介護問題がニュースとなっている。そこで言われるのは、地域の人間関係、家族の絆の尊さである。この映画で感じたのは、そのような平凡だが現在忘れかけつつある基本的な人間の絆である。(東京都 香川昇さん 70代)

孤独のいきつく先は家族のぬくもり
 父と家族とのつながり、老人と隣人との付き合い、父と愛人とのやり取り。
 隣人との付き合いは寂しさを紛らわす程度が良いのかも。愛人は結局、愛人。何とかの切れ目は縁の切れ目とはよく言ったものです。孫はかわいいが、適度にほったらかして言いなりが良い。間違っても「思いを込めて育てよう、面倒見よう」ではひきずってしまいそう。
 孤独を味わい、最後行きつくのは家族のぬくもりを求めることでしょう。あの手のぬくもりで今までのお互いのわだかまりは氷解です。(東京都 高木栄也さん 70代)

(c) 2016 Pepito Produzioni

家族とは最後はわかり合える存在
 どこの国でも共通するのは、家族の絆が大切であることだと感じた。どんなことがあっても肉親は、最後は助け合い、分かり合える時が来ることを確かめられた映画だと思う。
 人生は苦の方が多いのか、それとも楽の方が少ないのか。今回の登場人物は過去に色々な難題を背負っている人が多く、考えさせられた。
 自分に照らし合わせると、自分は恵まれている方だと感じた。やはり人との比較で考える。人生の幸・不幸は避けられない問題なのかもしれない。(東京都 渡邊道子さん 50代)

それでも血のつながり感じた
 主人公の老紳士である父も、その娘もどこかさみしい思いで暮らしているように見え、ストーリー展開が気になりました。そして父の自宅の隣家に幸せそうな家族が引っ越してきて事件が起きる。このあたりから父と娘の思いを描いているストーリー展開にどんどん引き込まれていきました。108分という長さを感じることなく、ラストシーンではやはり血のつながりを感じました。ナポリの街並みの風景が都会的ではなく、愁いのある音楽が映画全体を引き立てていた。(神奈川県 齊藤公三子さん 50代)

(c) 2016 Pepito Produzioni

疎遠でも根づく愛情と絆
 成熟した欧米日本など先進主要国における現代の家族関係、人の絆について考えさせられました。
 激務の傍ら不貞を重ねて家庭を犠牲にし、伴侶も亡くしたことで2人の子どもと希薄な親子関係となった主人公が、隣に引っ越してきた若夫婦一家と親しく交流したのは、家庭を顧みなかった過去の自分を穴埋めしているためでしょうか。夫に殺されかけ瀕死状態となった隣人の妻に、わが妻のように付き添い、回復した夢を見るまでの愛情は計り知れません。ラストシーンは父と娘の絆をひしひしと感じました。映画は、空虚で疎遠な人間関係の裏でも愛情と絆がしっかり根づいていることを訴えていました。(埼玉県 福田雅実さん 60代)

そして解けない疑問ばかりが残った
 自らの行為が疎遠状態の原因であるのに、なぜあの老人は娘と息子にあんなにもかたくななのか。どうして隣人の若い夫は、自分だけでなく大事な家族も犠牲にすることになったのだろうか。きっと明確な理由はわからずとも、こういう現実があるということだろう。
 嫁(隣人の若い妻)を見舞いに来た義母が過去を振り返り言った言葉や、共にするべく食事の準備中に老人が突然退出するきっかけになった若妻の言葉などが、この映画を理解するポイントなのだろう。だが、私にはしっかり記憶できず不明のままで、それがとても残念だ。
 老人は、心を開き交流した隣人一家に亡くなられ、それで娘に心を寄せたくなり、娘の仕事場をのぞきに来たのだろうか。出来れば人は他人と素直に心を寄せ合っていきたいものだと思った。(神奈川県 田嶋和美さん 70代)



監督・脚本:ジャンニ・アメリオ
出演:レナート・カルベンティエーリ、ジョヴァンナ・メッゾジョルノら


 2019年2月9日(土)より岩波ホールにてロードショー。108分/2017
〈公式ホームページ〉http://www.zaziefilms.com/napoli/

Reライフスペシャル

関連記事

最近の活動リポートの関連記事

PAGE TOP