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親や自分の介護を考え 「終のすみか」早めに決断  

「リアル読者会議/人生100年時代の生き方とお金」採録

更新日:2019年02月11日

 人生100年時代、「老後の3K」とも言われる「健康」「お金」「孤独」の問題にどう向き合っていくか。朝日新聞Reライフプロジェクトは、生活者と企業を橋渡ししながら解決策を考えようと、1月30日に、「リアル読者会議」を開いた。テーマは「生き方とお金」。2人の専門家と読者代表4人が、体験を語り合った。

●お金どうしたら……読者会議メンバー4人の不安

 会議の冒頭、ノンフィクション作家の久田恵さんと、ファイナンシャルプランナーの深野康彦さんから「100年時代の課題」が提示され、読者代表が今抱える不安を話した。

 上水流(かみずる)優子さん(53)は「人生100年という実感はまだない」。子どもは3人。一番下が大学生なので教育費が家計の大半を占め、貯金もあまりない。「そろそろ将来のことを見据えてお金の準備していきたいと考えているところです」

 鞍掛(くらかけ)靖さん(62)は、36年勤めた会社を一昨年に定年退職し、雇用延長を選ばず、新規事業の構築などを支援するコンサルタント会社をひとりで起業した。大学生の子どもがいて収入面で不安だったことや、元気なうちは働き続けたいと考えた。事業はなんとか回っているが、仕事がなく収入がない時もあるなど、「業績に波があるのが不安」だという。

 立花啓子さん(65)は、会社の無期限雇用制度を利用して定年後も働いている。「年金だけで100歳まで生きるのは不安。でも子どもの世話になりたくないので少しずつ貯金しています」。老後にまとめて使おうと思っていたが、65歳からの介護保険料を納めるようになったので、ぜいたくなことにあまりお金を使わず、健康に気をつけて元気に100歳を迎えられることが一番幸せだと思うようになった。

 吉澤茂雄さん(70)は、元公務員。母(95)の老老介護に取り組む日々だ。年金が頼りだが、定年後10年間で社会保険料は2倍、食費は1.6倍ほどになり、生活への不安は増している。自分も介護される側にまわらないよう、健康に留意して頑張っている。

 吉澤茂雄さんの母親は、一人暮らしのときの利き腕のけがをきっかけにわずか2週間で家族の介護が必要な生活になってしまった。「老いは誰にも等しく来るというが、介護はいつ必要になるかわからないのが不安だ」

読者会議メンバー 上水流優子さん
読者会議メンバー 鞍掛靖さん
読者会議メンバー 立花啓子さん
読者会議メンバー 吉澤茂雄さん

●介護するも、されるも 自分の生き方にあわせて

 久田恵さんは昨年、栃木県那須町のサービス付き高齢者住宅に移住し、ライター業も現役で続けている。30代後半から20年ぐらい両親の介護をした体験から、家族を長い介護に巻き込まないためにも、自分が元気なうちに受けたい介護のニーズを考えて移住先を選んだ。

 いま新しく出会った仲間と協力してコミュニティーづくりに励んでいる。「これからの高齢者は、ひとつ年を重ねるごとに強くなって自立的に生きていくというくらいの覚悟が必要じゃないかと思っています」

 深野康彦さんは、脳梗塞で倒れた母親と昨年、同居を始めた。最初はデイサービスだけだったが家族の様子をみて強引にショートステイも組み入れた。「実の親ですが、割り切れるところは鬼になる。介護で家族が疲れちゃうので自分たちだけの時間をつくれるようにした」

 親の介護は親の資金を使うのが原則だという。きょうだいがいる場合、法定相続どおりに遺産が分けられると、介護にかけたお金は戻ってこない可能性があるからだという。

ノンフィクション作家 久田恵さん
ファイナンシャルプランナー 深野康彦さん

●保険に入るか? 選び方は?

 老後の安心のため、生命保険などにはどの程度入っておくべきか。それも悩ましい問題だ。過去に一度、保険を見直して整理した立花さんだが、最近、知人から「介護は思った以上にお金がかかる」と聞いて、民間の介護保険に加入した。でも「それでよかったのか」悩んでいる。

 深野さんは、定期預金の一部を保険代わりと見立て、病気になったら取り崩すつもりで、医療保険などに入っていない。「病気やけがをしないように努める一方で、病気にならないと返ってこない保険料を支払う。そのお金の使い方に矛盾を感じる。どちらにお金をかけるのが『自分らしい』かの選択だ」と話す。

 「もしも、幸いにしてけがや病気にならなかったら、損ですよね」と問う深野さんに、立花さんが「年をとると、あちこちが壊れてくる。けがをしたとき、保険が出てありがたかった。けがや病気はすると思う……」と応じた。

 深野さんは「医療費にはかかるものと、かけるものがある」と説く。例えば入院する時、高額でも個室でなければいやな人もいる。かけようと思えば、いくらでもかけられるのが医療費だ。望む医療のレベルが高ければ高いほど、様々な保険をかけねばならなくなる。

 結局、保険にどれだけ入るかの判断は、個人の人生観が関わってきて、こうあるべきだという「正解」はないと、深野さんは説く。「万一の時に、医療にどこまで求めるのか、そして将来の安心のためには、どこまでお金をかけられるのか、そのバランスを自分自身で考えるしかありません」

●定年後の仕事や住まい 自分で決める

 老後のお金の不安から、働くこと、それも起業を選んだのが鞍掛さんだ。雇用延長で残るのが一番楽だとも思ったが、定年前に受けたセミナーをきっかけに、ファイナンシャルプランナーに相談。収入があまりなくても90歳くらいまでは赤字にならずに暮らせる確信を得て決断した。

 一方で、定年前から社外のイベントやセミナーに出掛けて人脈をつくり、お世話になっている方に個別に会った。起業後、そのときの縁で仕事が来ることもあり、「ネットワークが大事だと感じた」。

 「終のすみか」の悩みも挙がった。上水流さんは「最後は1人になると思うが、子どもにみてもらうつもりはない。自分で決めたいから、今から終の住まいを考えています」。すでに特別養護老人ホームなどいくつかの施設をボランティアしつつまわっている。

 実家の家土地などの処分に頭を悩ます人も多い。鞍掛さんは、親から受け継いだ土地の売り時が悩みの種。「手放したいが、欲が絡むとなかなか踏み切れません」。上水流さんも、故郷鹿児島に残る土地が気がかりという。「親兄弟の考えの違いもあり難しい。時の解決を待つしかないのでしょうか」と、問いかけた。

 鞍掛さんのように売却タイミングを計りかねている人も多いが、不動産は所有しているだけで税や管理のコストがかかり続ける。深野さんは、「上屋もあれば、空き家のままでは経年劣化も激しくなります」。困ったら「たとえ二束三文でも、早く売ってラクになるべきだ」と助言した。「高齢社会の進展でたくさん売り物が出てくれば、もっと売りにくくなります」。持ち続けることで所有地が「負」動産となるリスクを指摘した。

(コーディネーター・多賀谷克彦 朝日新聞編集委員/撮影・山形赳之)

 朝日新聞Reライフプロジェクトが2019年1月30日に開いた「リアル読者会議」で、2人の専門家と読者代表4人が「人生100年時代の生き方とお金」をテーマに語り合いました。本記事は、その議論や講演の一部を掲載したものです。

久田 恵(ひさだ・めぐみ)ノンフィクション作家。1947年生まれ。上智大学文学部を中退し、さまざまな仕事を経て、女性誌のライターに。1990年「フイリッピーナを愛した男たち」(文藝春秋)で、第21回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。子どもの不登校に関する親子同時ドキュメント「息子の心、親知らず」で平成9年度文藝春秋読者賞受賞。著書に、「シクスティーズの日々」(朝日新聞社)。「100歳時代の新しい介護哲学」(現代書館刊)など。20183月、栃木県那須町のサービス付きコミュニティ住宅に移住。

深野 康彦(ふかの・やすひこ)1962年生まれ。大学卒業後、クレジット会社を経て独立系ファイナンシャルプランナー(FP)会社に入社。金融資産運用設計を研究して1996年に独立。2006年、有限会社ファイナンシャルリサーチを設立する。さまざまなメディアやセミナーを通じて、資産運用のほか、住宅ローンや生命保険、税金や年金などお金周り全般についての相談業務や啓蒙(けいもう)を幅広く行っている。テレビ、ラジオにも多数出演。著書に「55歳からはじめる長い人生後半のお金の習慣」(明日香出版)。朝日新聞朝刊Reライフ面連載やReライフ講座の講師も担当、特集「人生100歳時代のマネー術」で読むことができる。

多賀谷 克彦(たがや・かつひこ) 1962年、神戸市生まれ。4年間の百貨店勤務の後、88年に朝日新聞社に入社。前橋支局などを経て、東京・大阪経済部で、主に流通・小売業を担当。20074月から大阪在勤の編集委員。関西の経済・産業界のほか、産学連携などを取材している。

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