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幻想的な内面世界とモロー芸術の創造の原点 

読者会議メンバーが観た「ギュスターヴ・モロー展」

更新日:2019年07月03日

 19世紀のフランス象徴主義を代表する画家ギュスターヴ・モロー(1826-98)。彼が描いた女性が一堂に会した「ギュスターヴ・モロー展」が東京のパナソニック汐留美術館で開かれました。最愛の女性から歴史や文学を彩るファム・ファタル(宿命の女)まで、女性像にフォーカスした展覧会を鑑賞したReライフプロジェクト読者会議メンバーの感想を紹介します。

 グロテスク・シーンも神秘的で幻想的に
 「サロメ」については、私がオペラ好きということもあってその人物像は頭に入っていた。また、原田マハ氏の著者「サロメ」を読んでいたのでオービリー・ビアズリーが描いた絵の存在も知っていた。非常に気になる人物であったそんなサロメをモローはどのように表現したのか、それを生で観たくて美術館に足を運んだ。
 展示は第1章~第4章に分けて構成されており、お目当てのサロメ関連作品は第2章にあった。小作品を数点観たのち美術展イチオシの作品『出現』の前に立つ。そこには、サロメと彼女が指さす方向に浮かび上がる、斬首されて血の滴り落ちる、ヨハネの首が描かれていた。本来ならグロテスクなはずのシーンなのだが、象徴主義のなせる技なのだろう、神秘的で幻想的であり、それから淡い黄金のタッチからは優美さをも感じられた。
 モローは他の画家たちが用いた銀の盆は描かずその代わりにタイトル通り、輝きを帯びて神々しく「出現」するヨハネの首だけを描いた。その首はサロメを見つめているが、サロメはそれに臆することなく毅然(きぜん)と対峙(たいじ)している。その姿からサロメは後述するファム・ファタルの代表と言えよう。
 第3章はファム・ファタル関連作品群であった。サロメ同様にオペラの題材になったデリラや、ギリシャ神話のセイレーンなど、男を破滅に導く悪女たちの絵が26作品もあった。いつの世も悪女とそれに引き込まれるオトコは存在し続けているのだなと苦笑しつつ興味深く鑑賞をした。(東京都 安仲充子さん 50代)

 こころに残った《出現》《一角獣》《セイレーン》
 524日の山田五郎さんのアートトークに参加後、作品を鑑賞させて 頂きました。 モローについては、どんな画家だったのか全く知らなかったので 山田さんのお話で裕福な家庭に生まれたマザコン、「子ども部屋おじさん」という 生い立ちを聞いてビックリしつつ、山田さんの軽快なトークに引き込まれ あっという間の1時間半でした。
 こころに残った作品を、3点挙げさせて頂きます。 
 《出現》 以前、写真でみて生首が宙に浮いている絵にどんな意味があるのだろうと 思っていました。新約聖書から題材を取られたヨハネの首だったんですね。実際にみたらサロメの強いまなざしに心を奪われ、ファム・ファタルという宿命の女を 描く作家として名をはせている理由がわかりました。写真ではわからなかったのですが、白いレースのようなアラベスク模様が浮き出るように 描かれ神秘的な雰囲気を出していました。
 《一角獣》 写真でみるのと違ってとても細かく繊細に描かれていました。幻想的で、見ているこちらも優しい気持ちになるような絵でした。溺愛した母と恋人を失って60歳過ぎに書いた作品。 以前は、男性を誘惑する女性を多く描いていた作品が多かったモローも 貞節を表す一角獣を描くようになり、女性観が変化したのかもしれません。 
 《セイレーン》 海岸の岩に座る美しい三人の女性に見とれていたら、足元には大蛇のような 蛇の足。そして、殺したと思われる男性が巻きついています。ぞっとするような作品ですが、美しさと不気味さのギャップに目が話せませんでした。 昨年、10月にパリに行った際、時間が無くてモロー美術館を訪れることができなかったのですが 今回、このような貴重な機会を与えて頂きとても有意義な時間を過ごせました。
 そして、また、パリに行く際には今度こそ、子ども部屋おじさんの家を訪ねたいと思います。
(東京都 鐘慧子さん 50代)

 「宝石箱」のような色のきらめき
 6月8日に見に行きました。土曜の午後早い時間帯のためやや混んでいました。やはり何と言っても「出現」と「一角獣」が良かったです。歌い文句の「宝石箱」のような色のきらめきに感動です。《出現》=サロメはモローが何度も手掛けた作品ですが、それまでの何度も習作を繰り返し、いろいろ苦心した経過も見ることができて良かったです。《出現》は最終形とのいうべき作品ですし、よかったです。(神奈川県 渡辺隆博さん 60代)

 気になった女性観と内面の不安定さ
 破滅と危機の象徴としてのファム・ファタル女性像を追い求めたモローは、母親と暮らしながら母親と離れたいのに離れる決心がつかないために複数の女性と関係を持ち、自らの精神の均衡を保っていたのかしら? と思いました。
 もし母親から離れたら、犯罪を犯しそうなほど不安定な人間に感じられました。だからこそ神話の中でも一角獣と貞操の象徴である少女を描き自らの気持ちを昇華したのでしょうか? 絵は素敵でしたが、モローの内面などを知らずに鑑賞したかったです。(埼玉県 宮島ひろみさん 50代)

  先入観なしに鑑賞する楽しみ
 サロメや一角獣などが象徴するものについては詳しくないが、それだけに先入観なしに鑑賞することができました。代表作《一角獣》に描かれている女性たちの優しさが特に印象に残った。また、モローとルオーの師弟関係を知り、「モローの愛弟子ジョルジオ・ルオー」の展示を楽しむことができました。ルオーの作品にはより素朴な力強さを感じる。今度は、背景知識を身に着けて、もう一度、鑑賞したいと思わせる魅力的な絵画たちであった。(東京都 田中隆さん 50代)

 色彩の創造力こそモローの画力
 モローの絵を見るのは初めてだったが、友人から圧倒的な画力の人だと聞かされていたので楽しみに美術館を訪れた。
 神話や聖書をテーマにたくさんの女性が描かれていた。《出現》は、サロメにしか見えていないであろうヨハネの幻影の構図が独創的であり、サロメの表情の美しさや伸びやかな身体のラインが美しい。身に纏(まと)う服の柄も繊細だ。
 第3章「 宿命の女たち」のコーナーの絵は、特に背景の色彩に目を奪われた。濃紺の種類の多さは、背景に厚みを感じ、時々赤や白、紫などの色がアクセントで入れられているところはいかにもオシャレである。第4章の一角獣と純潔の乙女は一転して線描が繊細で色彩もパステルがかり、純潔な女性像を巧みに表現している。モローの色彩の創造力は、それ以降の絵画界に大きな影響を与えていったのだろう。(神奈川県 田中英子さん 60代)

 架空の動物「一角獣」こそモローだ
 聖書や神話に材をとる19世紀末象徴主義の巨匠ギュスターヴ・モロー。約70点の目玉は、男を死に追い込む宿命の女(ファンム・ファタル=筆者が原語femme fataleの原音に近いと考えるカタカナ表記)の代表サロメ、白眉は《出現》である。ヘロデ王の娘サロメは王主催の祝宴で舞い、報酬として母の指示でヨハネの首を父に要求。やがて宮殿内の暗闇に忽然と出現する生首。それを睨みつけるサロメはヘロデ王の冷酷さをしのぐ冷酷さを象徴する(out-Herod Herod)。他にも、《一角獣と純潔の乙女》と題する作品群が秀逸。処女にのみなつくという架空動物一角獣が乙女に寄り添い見せる至福の表情がよい。一角獣とは、母親ポーリーヌと恋人アレクサンドリーヌを深く愛しつつも独身を貫いたモロー自身だったのかも知れない。(神奈川県 尾崎俊明さん 70代)

 印象に残る妖艶で魅惑的な女性たち
 モローは、聖書や神話を主題にした物語画を描き、物語の中に幻想的な内面世界を描くことで、真実を見いだそうとした画家。この展覧会では、モローが描く妖艶(ようえん)で魅惑的な女性像が印象に残りました。モローが関心を寄せた男性を誘惑し破滅へ導く存在としての女性、いわゆる、ファム・ファタル(宿命の女)は、世紀末の退廃的な雰囲気のなかで受け入れられ、この時代の芸術文化を象徴しています。
 作品に登場するドラマ性をはらんだ女性や、実生活において愛した母や恋人、モローの現実と幻想の世界に登場するさまざまな女性が採り上げられ、彼女たちをモデルにしたスケッチも拝見。70点の作品を通し、モロー芸術の創造の原点に迫る内容で、興味深いものでした。
(東京都 清水昭博さん 60代)

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