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遊びの極意 浮世を生きる術 先人たちに思いをはせる 

読者会議メンバーが観た「遊びの流儀 遊楽図の系譜」展

更新日:2019年08月29日

 美術のテーマとなった「遊び」に着目した「遊びの流儀 遊楽図の系譜」展が東京・六本木のサントリー美術館で開かれました。双六やカルタ、舞踏やファッションなど、男女が熱中した楽しみごとの変遷を眺める展覧会を鑑賞したReライフプロジェクト読者会議メンバーの感想を紹介します。


 「遊びは普遍的な行為」に合点がいく
 遊びという言葉でイメージするのは、子どものころの遊びだけ。男子は、ベッチ(めんこ)、ベーゴマ、ビー玉。女子は、お手玉、ゴム飛び。正月の福笑い、双六(すごろく)、羽根つき。「遊びの流儀」と言われてもピンとこなかった。そんなところへ突然「美術史に登場する『遊び』や『気晴らし』の造形に着目した」という遊楽図の数々に圧倒されました。さらに「遊びは普遍的な行為」とくる。なるほどと合点がいった次第。今までなかった遊びの流儀を認識しました。展示の最後のコーナーにあった「江戸いろはかるた」「上方いろはかるた」が懐かしかった。「犬も歩けば棒に当たる」「憎まれっ子世にはばかる」、そして「おもちゃすごろく」が面白かった。(東京都 大川隆さん 70代)

 双六の元は西洋のバックギャモンに注目
 「遊び」をテーマに、人々が熱中した楽しみごとの遊び道具や遊びの風景を描いた書画が江戸時代を中心に集められている。遊びは古今東西を問わず、時代を超えて普遍的なものであり、展示されている名品からはひたすら遊びに興ずる生き生きとした人々の暮らしが伝わってくる。
 私が注目したのが、遊び道具の「双六(すごろく)盤をめぐる物語」である。エジプト発祥で西洋に伝わってバックギャモンに使われるゲーム盤が、中国を経て飛鳥時代の日本に伝わり盤双六となった。様々な盤双六は意匠が面白い。特に輸出向けに作られた重要文化財《清水・住吉図蒔絵(まきえ)螺鈿(らでん)西洋双六盤》は、細やかな蒔絵と螺鈿で描かれている清水寺と住吉神社の風景がとても美しく、当時の美術工芸の水準の高さを見ることができる。(神奈川県 奥村秀策さん 60代)

 遊びの余韻を感じさせる名品群 
 最初の《月次(つきなみ)風俗図屏風》では、年中行事と共に人々がにぎやかにエネルギーを発散させている。この情景の源流が《琴棋書画図》との位置づけ。こちらは対照的に高尚な文士が閑静な雰囲気で同好の士と共に楽しむ場面であるが、納得できる。
 《湯女(ゆな)図》のようにくつろいだ全身像の男女の遊楽、洛中洛外図に代表される屋外での遊興、遊びのカタログのような室内での遊楽への展開は、太平の町人文化の盛り上がりを象徴している。遊びの道具にもエネルギーをつぎ込み、あるいは豪華にあるいは楽しげに、制作されている。もはや遊びの場から離れているものの、遊びの余韻を感じさせてくれる。
 遊楽での音曲と踊りと衣装の取り合わせは古典芸能にも通じる。デザインの奇抜な《輪舞図屏風》としみじみと遊びの喜びを感じさせる国宝《婦女遊楽図屛風(松浦屏風)》に心が残った。(千葉県 仲谷卓芳さん 70代)

 描かれている人々の表情豊かで楽しい
 重要文化財《十二ヶ月風俗図》に描かれた7月の盆会、8月の月見が今でも続いているのが興味深い。月見は、月を描いていないのが印象的でした。
 《草花蒔(まき)絵双六盤》は、盤が将棋のように敵味方の陣地のようになっていて、そのせめぎ合いが面白い。《芒菊桐紋蒔絵(まきえ)碁笥(ごけ)・碁盤》をみると、碁の形式が今と変わらず、遊戯として既に完成系であったと思いました。
 第5章に展示された《祇園祭礼図屏風》に描かれている屋台、寿司、ところてんが、樽(たる)を使って商売しているのが面白い。第6章の「双六(すごろく)をめぐる文化史」は、双六盤が玉手箱のように美しい細工できれいだった。
 全体では屏風画が雲で場面が変わって描かれ時空を超えられるのが面白い。描かれている人々の個々が表情豊かで楽しい。女性に限ると、時代で美人が変化しているのがわかる、確かに描き手の違いがあるにしても。(東京都 斎藤寛さん 60代)

 着物の柄も帯の結び方も髪形も自由で多様だった
 着物カルタや碁などに興味があったというよりは、時代の風俗を知りたかった。でも、西洋のバックギャモンから盤双六に発展したという話は初耳で興味深かったです。
 屏風絵は期待に応えてくれました。着物の柄の大胆さと多様さ、帯の結び方や髪形の多様さ。今の時代の着物の窮屈さがよく分かります。もっと自由で構わないのです。髪によく死人に着けさせる三角巾をつけて歩いている女性の多いこと! なぜ? 着物の胸には長めのネックレス! 寒さよけの厚着? もう一回、見に行きます。(東京都 日置むつ子さん 70代)

 迫り来る先人たちの遊びの極意 浮世を生きる術
 オランダの歴史家、ヨハン・ホイジンガは、その著書『ホモ・ルーデンス』で、人間を「ホモ・ルーデンス」(遊ぶひと、遊戯人)と呼び、遊び(ルードゥス)こそが、動物と人間とを分かつものであると述べている。人間はホモ・サピエンス(知恵の人)ではなく、ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)であり、「遊び」とは自由の行為であり、実生活の外にあり、物質的な利益や効用と無関係で、自らつくりだす限定された時間と空間のなかで、一定のルールに従って秩序正しく行われるものであると述べている。
 本展を見て、ホイジンガの「ホモ・ルーデンス」を思い出した。「遊楽図」にあらわされた一人一人の遊ぶ表情。ある時は無邪気に笑顔を交わし、ある時は物憂げに遊び暮らした先人たちの遊びの極意や、浮世を生きる術がありありと迫ってくる。『梁塵秘抄』の「遊びをせんとや 生まれけむ」という一節はこの展覧会の趣旨をズバリ言い当てている。(東京都 増田迪博さん 70代) 

 遊び通して「その時代」の暮らしに思いはせる
 人々の遊びと暮らしの関わりを描いた「遊楽図」から比類ない名品の数々が一堂に集結し、見応えのあるすばらしい展覧会でした。遊びを通してその時代の暮らしに思いをはせることができ、興味深く楽しく鑑賞しました。平安時代以降の貝合わせや蹴鞠(けまり)、羽子板といった情緒あふれる遊びに熱中する人々の姿は一人一人が生き生きとしていて、とても印象的でした。特に国宝の「婦女遊楽図屛風(松浦屛風)」を間近で感じ取ることができたのは貴重な体験でした。(東京都 池田直子さん 40代

美術館探訪(アート部)の連載

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