<読者ブログ>

美術館探訪(アート部)

モダンデザインはどのようにして生まれたのか

読者会議メンバーが観た「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢展」

2020.02.27

 ブルーノ・タウト、井上房一郎、アントニン&ノエミ・レーモンド、インテリアデザイナー 剣持勇、家具デザイナーのジョージ・ナカシマ、彫刻家イサム・ノグチによる多彩な作品や資料からモダンデザインとは何かを見せる展覧会「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢展」(パナソニック汐留美術館)を鑑賞したReライフプロジェクト読者会議メンバーの感想を紹介します。

モダンデザイン

 芸術家の交流示すエピソードに感動
 会場は展示のつくりが木製だったので、温かな雰囲気が展覧会のテーマにぴったりでした。リビングショールームがあるパナソニック汐留ビルらしい展覧会です。どこかで見た家具や、座ったことのある椅子もありました。実際に販売され、使われているものも多いと思います。会場には木製のベンチが一つありましたが、座り心地を試せる椅子も置いてほしかったです。
 展示は5章構成。建築家のブルーノ・タウトやアントニン・レーモンドら、関わりをもった6人の仕事を紹介しています。ビデオで流れるタウトやレーモンドが暮らした日本での住まいは、光や風が通り抜けて自然の中にいるようでした。
 イサム・ノグチの「あかりシリーズ」の撮影は丹下健三の自宅で行われ、その写真もすぐそばに展示されています。畳の中央手前にある、特別展示「無題」(1964年ごろ、個人蔵)の花器のようなオブジェは、ノグチから丹下へのお礼でした。こんな風に親しかった2人のエピソードが新鮮でした。(神奈川県 中島典子さん 60代)

 手作りのデッサンに心引かれた
 「モダンデザインと暮らし」がテーマの展示作品の数々を紹介する展覧会だった。作品は1930~60年代という、日本が戦中から戦後に向かう激動の時代に、敗戦からの復興を目指して貪欲に西洋のモダンな暮らしを吸収しようとしていた時代に重なる。展示作品をみると、あの時代を生きた者としては、どこか庶民には手の届かない上流階級または富裕層向けの世界のものと感じた。
 作品そのものも興味深かったが、その作品の「手作りのデッサン」の方にも非常に心引かれるものがあった。ライトや椅子、時計……。レトロでモダンで「古き良き作品」、なのに斬新でおしゃれ、でも使い勝手はちょっとどうかしら、などとあれこれ思いながら鑑賞を楽しみました。(千葉県 川口やす子さん 70代)

モダンデザイン

 新鮮に感じられた展示の工夫
 展覧会といえば絵画展が圧倒的に多いが、本展は来日した2人の建築家タウトとレーモンドを軸に、その交友関係や日本でつくられた工芸品に焦点をあてた展覧会である。
 会場に入ってまず、白木の板や柱で組み立てられた展示スペースや、章ごとに異なるカラーボードが新鮮に感じられた。ビデオを併用した解説もわかりやすくてよい。
 出品作で個人的に引かれたのは、剣持勇の籐製の丸椅子、ジョージ・ナカシマのクルミ材の椅子やテーブル、そしてイサム・ノグチの和紙を使った明かりである。
 多少値がはっても、こうした質の高い家具や食器を手に入れ、長く大切に使う生活をしたいと思うのだが、理想にほど遠いのが現実である。(東京都 人見伸子さん 60代)

 素敵な作品との出合いを機に知識欲湧いた
 展覧会のタイトルとポスターを見た時からワクワクしていました。ブルーノ・タウトやレーモンドといった著名な人たちの作品がこんなにも日本にあるとは全く知らなかったし、作品の数々を目の当たりにすることができて感動しました。
 150点以上もの作品を触れられるぐらいの近さで見られることも、滅多にないいい機会でした。その他の方々の作品もモダンというだけあって、余計な物を排除してスッキリしたデザインで素敵でした。そして、昔の物という懐古感もあり、モダンだけど懐かしいというノスタルジーな気持ちにもなりました。
 久々に素敵な作品たちに出合えて、知識欲が湧いてきました。また機会がありましたらぜひ行きたいと思います。(埼玉県 丹下桜子さん 50代)

モダンデザイン

 人類の平和まで育むモダンデザイン
 機能的でシンプルながらも美しいデザインの数々。現代でも十分通じるものばかりであった。欧米から来日し、技術を教える以前に日本の伝統や芸術、風土を愛し理解してくれた彼らの人間性が作品にも表れていた。合理的で機能優先だけのデザインではなく、漆、和紙、竹、螺鈿など。日本古来の素材を生活様式に合わせて採り入れ、人の暮らしに寄り添うデザインで作り上げていた。
 設計においても、畳、ふすま、障子、と日本の文化を大切に思う気持ちがありがたい。その結果がモダンでありながらどこか懐かしさを感じ、タイトルの通り「暮らしの夢」につながっていくのだろう。
 残念なことに、戦争が悲劇をもたらしたことも忘れてはならない。反戦運動、建築物の焼却、日本人の抑留。戦争がなければ彼らの未来はもっと明るかったはずだ。後世に名を残すだけではなく後輩を育て世界中に「暮らしの夢」をつくってくれたであろう。
戦争は命ばかりではなく未来も破壊している。平和な社会が美しいものを生む、人の心も温かくなり国境を越えていいものはいい、機能美は世界で共有できる。モダンデザインから人々の暮らし、そして人類の平和までつながる.――。見終わった後にそう思った。(東京都 岩田麻実さん 50代)

 日常品に宿る秀逸なデザイン
 展示を見る前に、休日の汐留シティがことのほか快適ですっかりうれしくなった。パナソニック汐留美術館のある建物は、広いロビーに日差しが射し込んで、とても気持ちが良かった。
 久しぶりに、名作と言われる椅子を眺めた。触れられないのが残念だが、座ったらこんな感じだろうと想像して、友人と好みの椅子を言い合った。椅子も照明も古びることがない。日常的に使われるものは秀逸なデザインがあってこそ、と改めて思った。(東京都 上田まり子さん 60代)

モダンデザイン

 椅子から感じられた手仕事の温かみ
 タウト、レーモンド、剣持、ナカシマそれぞれの椅子に手仕事の温かみを感じました。本展での私の最大の楽しみは、イサム・ノグチでした。イサム・ノグチの「あかり」シリーズ、最高でした。何年も前に訪れたイサム・ノグチ庭園美術館の作品群を思い浮かべながら鑑賞しました。庭園の石彫刻と本展の「あかり」シリーズはどちらも、まさにイサム・ノグチらしいと思いました。「あかり」シリーズコーナーのやわらかいあかりに、イサム・ノグチの優しさを感じました。まさに「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢」を象徴しているように思いました。(千葉県 牧野史郎さん 70代)

 これから進むべき指針を与えてくれた展示
 1928年に来日したドイツ人建築家ブルーノ・タウトは、瞬く間に日本になじみ、建築はもちろん、日本の素材を生かした家具、工芸品を数多く製作しました。高校時代、桂離宮に関するタウトの文章を教科書で読んだ程度の知識しか持っていませんでしたが、今回の展示会を鑑賞すると、日本の風土と志ある同志を集結させるほど、魅力的な人物にちがいないと確信しました。
 ドイツのバウハウスや日本の民芸運動との関連には触れられていませんでしたが、何らかの接触はあったのではないでしょうか。第1次と第2次世界大戦の間の平和な時代、プラスチックを使用せず、日本の素材をとことん生かした作品は、21世紀を生きる私に夢と進むべき指針を与えてくれました。(東京都 恩塚良太さん 70代)

  • この連載について / 美術館探訪(アート部)

    Reライフ読者会議では、登録メンバーを展覧会に招待し、作品を鑑賞した感想を投稿してもらう企画を不定期で開催しています。作品の感じ方は十人十色。アートに正解はありません。そんなアート好きのReライフ世代の感想を集めました。

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