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歩けば見えてくる作家の気持ち これぞ「文学散歩」の魅力 

Reライフおすすめ講座「東京小説散歩 再発見する新宿」 その1

更新日:2019年03月29日

 朝日新聞東京版に連載されたコラム「東京物語散歩」の筆者・堀越正光さんが朝日カルチャーセンターのReライフおすすめ講座で講師になり、新宿の街を語りました。その内容を全6回にわけて紹介します。初回は、高校の課外活動「東京物語散歩」をはじめたきっかけについてです。

 高校で国語を教えていますが、最近は生徒がだんだんと本を読まなくなっています。なんとか生徒に本を読んでもらえないかと始めたのが、東京を散歩して、そこを舞台にした物語を紹介する課外活動です。1996年に始めて現在は年3回に定着しています。3月に第63回を予定していて、白金・高輪・三田コースを歩きます。「小説」と限定してしまうと狭まってしまうので、怪談、伝説など生徒が面白がって街を歩けたらと「物語」としています。

 「文学散歩」というと、漱石とか鷗外ら文豪と言われる人の旧居跡に行くとかお墓を巡るとかを連想します。しかし、いまの高校生はなかなか興味をもってくれません。文豪といっても遠い存在なのです。「ここに漱石が眠っているんだよ」と言っても「だから?」。「ここに昔、鷗外が住んでいたんだよ」と言っても「それで?」となってしまうのです。

 もう少し別の方法で生徒に作品を親しませたいと考えました。ごく最近に出版された本で、具体的な場所が示されているならば、実際にそこへ行って、「ここを主人公が歩いたんだよ」と紹介した方が面白いのではないかと考えたわけです。

 現代における「文学散歩」の楽しみ方を三つあげます。ひとつは、作品の登場人物が歩いた街は、作者が実際に取材して歩いたと考え、「どんなところに作者はひかれたのか」などと作者の感性に想像を巡らせて楽しむことです。「ここは実際に作者が歩いた場所だろう」というスポットを作品の中の具体的描写からピックアップし、それを生徒に伝えられれば面白いと思っています。

 次に、作品に描かれる街についての描写をガイド本のように利用して楽しむことです。なかには、その街の歴史をさかのぼって記されているものもあります。

 最後の三つ目は、出版年が古い作品に限ります。かつてはその街にあったけど今は失われた風景が描写されていることもあり、貴重な記録として楽しむことができます。一人で歩いて探しているときはめったにありませんが、生徒を連れていくと、最初は遠巻きに見ていた人が次第に寄ってきて、「昔、ここにはなあ……」と情報をいただけることがあります。こういうのが「物語散歩」を実際にやってみて面白いことです。

 今回は新宿を舞台に歩きます。マスコミでも取り上げられることがある荒木町から、「新宿」発祥の地周辺を通って新宿駅周辺をうろつき、新宿西口の高層ビル群へ。最後は西新宿4丁目へと行こうと思います。

 これは朝日カルチャーセンター新宿教室で2019年2月17日にあった朝日新聞Reライフおすすめ講座「東京小説散歩 再発見する新宿」の採録第1回です。次回は「荒木町」です。

 堀越 正光(ほりこし・まさみつ) 1960年生まれ。千葉県習志野市の東邦大学付属東邦中高等学校国語科教諭。小説の中に描かれた東京の場所をめぐる「東京物語散歩」を2006年9月から2018年8月まで朝日新聞東京版に連載した。「同じ作家の作品は一つしか扱わない」という条件を自ら課し、468の作品を紹介した。著書に『あの本の主人公と歩く東京物語散歩100』(ぺりかん社)、『東京「探見」』(宝島社)がある。

東京小説散歩 再発見する新宿の連載

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