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腸内環境改善のカギは「菌の多様性」と「短鎖脂肪酸」  

<腸から始める長寿生活>東長崎駅前内科クリニック院長 吉良文孝さん

更新日:2019年07月29日

 消化器病・内視鏡専門医として長年、臨床現場に携わる東長崎駅前内科クリニック院長の吉良文孝さんに腸内環境の大切さを話してもらいました。その一部を採録します。腸内環境改善のカギは「菌の多様性」と「短鎖脂肪酸」だと吉良さんは言います。

消化器病・内視鏡専門医 吉良文孝さん

人の腸内細菌は3~5歳で決まる?!

 人間の腸内には100兆~500兆以上の菌がいます。重さにして2kg前後ぐらい。人の細胞は約37兆個ですから、それよりも多い菌が、おもに大腸で細菌叢(フローラ)を形成し、腸内環境を左右しています。

 人は生まれるときに、産道で母親からはじめて菌をもらいます。外の世界に触れることでさらに菌をもらって成長し、35歳で腸内フローラのバランスが決まるというのが定説です。ただ、その後も菌のバランスはかわっていきます。年齢を重ねてくるとビフィズス菌などが減り、大腸菌などの割合が増えてくることが分かっています。

腸内フローラの働きとは?

 腸内細菌には様々な働きがあります。よい働きとしては、ビタミンのほか、「幸せホルモン」とも言われるセロトニン、女性ホルモンに似た作用をする物質・エクオール、そして、酢酸や酪酸などの短鎖脂肪酸という大事な物質をつくることが挙げられます。

 一方、二次胆汁酸、アンモニア、インドール、フェノールなど人の健康に有害な物質を産生する菌もいます。これらはがんや動脈硬化と関連しているという指摘があります。

 なので、腸内環境がよいと健康へのメリットが大きく、悪くなると病気のリスクが高くなる、というのが最近の研究の流れです。


 腸内環境がよくなれば、お肌の調子がよくなる、アトピーや花粉症が少し抑えられる、病気そのものにかかりにくくなる、よく眠れるようになる、などのメリットがあるといわれます。腸内環境は気持ちや性格にも影響するという指摘もあります。

 腸内環境が悪いと精神面に影響が出たり、精神面に何か問題があるとおなかに影響が出たりといった「脳腸相関」は、お肌の調子との相関関係とともに、臨床の現場で確実に感じることのひとつです。

理想的な腸内フローラとは

 では、理想的な腸内フローラはどういうものか。それをかたる際に大事なのは「多様性」と「短鎖脂肪酸をつくる菌」です。

 「多様性」とは、いろいろな種類の菌がバランス良く生きている様子です。以前は、「悪玉菌」「善玉菌」「日和見菌」という概念がありましたが、悪玉菌の中にもよい働きをするものがあるなど、一概に善悪を区別できなくなっています。

 「短鎖脂肪酸をつくる菌」はビフィズス菌や酪酸産生菌を指します。これは多い方がよいです。短鎖脂肪酸は、これらの菌が食物繊維などの「エサ」を食べた後に分解してつくる物質で、腸や体のエネルギーになって、大腸の中の粘膜を修復します。消化吸収や排便を促すほか、脂肪が蓄積しにくくなって肥満を予防したり、炎症を抑えたり、免疫を調整したりする作用なども注目されています。

「大腸劣化」に陥ると……

 腸内細菌の多様性やバランスが失われ、短鎖脂肪酸が減ると、「大腸劣化」ともいえる腸内環境が乱れた状態に陥ります。専門的には「ディスバイオーシス」といいます。この状態がすすむと大腸の粘膜が薄くなり、体の中にいろいろな菌や物質が入ってきやすくなります。そうするとアトピー、花粉症などのアレルギーや、肥満、糖尿病などにつながる可能性があります。

 腸内環境が乱れる原因は、偏食、食べ過ぎ、飲み過ぎ、添加物、細菌汚染、食中毒など様々です。鼻風邪をひくなど鼻の悪い方も崩れますし、口の中の虫歯菌にも影響を受けます。あとは、安易に抗生物質をたくさん使ってしまうと、大きなダメージを受けます。運動不足、ストレス、過労も関係があります。

大腸を健全に保つには

 大腸を健全に保つには、ヨーグルトや納豆、ぬか漬けといった発酵食品(プロバイオティクス)と、食物繊維やオリゴ糖など菌の餌になるようなもの(プレバイオティクス)をあわせてとるとよい。これを「シンバイオティクス」といいます。うどんにめかぶ、おくら、なめこ、納豆などかかっている料理などは理にかなっています。

 ヨーグルトを買って食べる場合、ビフィズス菌が入っているかどうかは見ておいた方がよいです。ビフィズス菌と乳酸菌は似ていますが違います。乳酸菌は主に小腸にいますが、ビフィズス菌は大腸にいて、酢酸という短鎖脂肪酸をつくってくれます。

 自分が何を食べ、その結果おなかの調子がどうなったのかを確認することは、健全な腸内環境を整える第一歩です。

 朝日新聞Reライフプロジェクトは、読者会議メンバー16人に腸内フローラ検査を体験してもらった後、座談会を開催しました。検査を提供してくれたのは、ベンチャー企業「サイキンソー」(東京)。吉良さんの講演は、その結果を受け取りつつ意見交換する座談会の冒頭に行われました。

(図はすべて、サイキンソー提供)

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吉良文孝さん(きらふみたか)東長崎駅前内科クリニック院長

東京慈恵会医科大学卒業。東京警察病院、JCHO東京新宿メディカルセンターなどを経て2018年に東長崎駅前内科クリニックを開設。株式会社サイキンソーCMEOも務める。消化器病・内視鏡・肝臓専門医、胃腸科指導医。

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