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実家で独り暮らしの親が倒れた その時、どうする? 

住まい方アドバイザー・近藤典子の「終活? 収活!」 その1

更新日:2018年09月25日

 実家の片付けを通じて、親子の絆を結び直す「収活」の進め方を説く、住まい方アドバイザー近藤典子さんの連載。1回目は、親が倒れた時の心得がテーマです。 

 実家を上手に片付ける「収活」は、親が元気なうちに、早めに手をつけるのが得策です。でも、現実には、ある日親が倒れて突然に対応を迫られる場合も多くて。そんな時は困ってしまいますよね。これからご紹介するのは、鈴木さん(仮名。55歳)という女性の方に伺った、実際にあったお話です。

親が倒れた時は、まずしっかり現状把握。見舞うあなたが冷静なら、本人の不安も和らぎます(イメージ写真。本文とは関係ありません)
 離れて暮らすお母さんが転んで骨折、救急車で運ばれて入院したと連絡を受けた鈴木さんは、病院に駆けつける前に実家に立ち寄ったそうです。

 久しぶりの実家は、思いのほか散らかっていてびっくり。お母さんは、床に散らかった物に脚をとられて転んだのかもしれませんね。保険証やお薬手帳のほか、入院に必要なこまごまとした物がどこにあるのか、探すのに少し手間取ったそうです。

 病院に駆けつけて聞いた先生の話では、大腿骨骨折で手術が必要。術後のリハビリも含め、3カ月は入院が必要との見立てでした。

 お母さんは84歳。先生によれば、高齢者が大腿骨骨折で入院すると、約50%の人は寝たきりに、25%の人はリハビリが十分にできず車椅子などが必要になる。そして元の生活レベルに戻れるのは残る25%ぐらいの人なのだとか。

 説明を聞いて、鈴木さんはクラクラ。「寝たきりになったらどうする?」「介護施設を探さなきゃ?」「残された実家はどうしたらいいの?」。頭の中を、色々な疑問や当惑が駆け巡ったそうです。

 慌てるのは分かります。でも、こんな時はやみくもに動いてはダメ。1日、いや半日でもいいので、とにかくお母さんの「現状」を把握しましょう。そして、分かった情報は書き出し、記録するのです。

 まずは、入院先の主治医や、かかりつけ医の話を聞く。親の体力、健康状態、認知状況などについての専門家の見立てを確認しておきます。大きな病院にはソーシャルワーカーもいます。彼らに相談すれば、使える福祉サービスなどの情報も、教えてもらえます。

 続いて、実家にもどって家の中の状況を改めて見ます。散らかり具合などを確認すれば、倒れる前の生活状況も推測できます。スマホなどで室内の様子を写真に撮っておけば、後々役に立ちますよ。

 これからどうしたいのか、お母さん本人の考えを聞くのはこの後です。現状を把握しないまま会うと、あなたの動揺ぶりが表情に現れ、それがお母さんに伝わってしまうからです。入院直後や術後は、意識はあっても動転していて、こちらの話を理解できないこともままあります。

 そんな時は無理しない。「今後のことを色々考えて動くから任せてね。落ち着いたら改めて説明するからね」とだけ、優しく伝えてあげてください。この時のお母さんとのやり取りをスマホで録音しておくのも有効です。後で、他の兄弟らに聞かせれば、お母さんの普通ではない状況を、よりリアルに知らせることができます。

 ともかく現状を把握できたなら、兄弟ら関係する身内を集めて、やっと情報共有できます。そして、こんな風に話すのです。

 「お母さんが脚を折ってね、入院したの。手術が必要で、退院は3カ月後。寝たきりになるリスクもあるって。病院で相談したら、後々、こんな公的サービスも使えるみたい。ところで、実家に寄ったら散らかっていて、あれじゃ転ぶわ。もう独り暮らしは無理だと思う。お母さんとも話してみたんだけど、すっかり動揺してて、何を言っても上の空みたい。だからね、これからのことを決めたくて、みんなに集まってもらったの」

 部屋の写真や、お母さんとの会話の録音も聞かせながら、こんな具合に報告できれば、しっかり現状を共有できますよね。遠く離れて暮らし、すぐには駆けつけられない人には、メールや電話で教えてあげてください。

 実は私、若い頃は柔道整復師として病院に勤めていました。そこで、入院するお年寄りとその家族をたくさん見てきたのですが、退院後の介護の分担や実家の整理などを巡り、もめる現場をたくさん目の当たりにしました。

 もめる原因は「私は聞いてない!」「勝手に決めないで!」などという、コミュニケーションの失敗や行き違いでした。そうしたトラブルを避けるためには、冷静な現状把握とその共有が必要なのです。

 退院後に介護施設に入居するとなれば、それまで住んでいた家を片付けなければなりません。持ち家ならば、時間の余裕が見込めます。でも、賃貸住宅なら、入院中を含めその後の家賃負担などを考えれば、早く片付けて退去も検討しなければなりませんね。

 でも、いざやるとなると、身内の誰を中心に進めるのか、分担はどうするのか、どこから手を付けたらいいのかわからず、困ってしまうもの。本人に無断で進めるわけにも行きません。そこでも、コミュニケーションの取り方がカギとなってきます。

 次回は、実家の片付けの注意点を具体的に説明します。

 近藤典子さんが推奨する「収活」は、親と子が共に実家を片付けながら、これまでの暮らしを振り返り、余生を健やかに過ごせるようにする取り組み。その成否は、当事者間のコミュニケーションの取り方が左右します。この連載では、そのポイントを伝授します。(隔週、全6回予定)

近藤 典子(こんどう・のりこ) 住まい方アドバイザー。1957年、兵庫県生まれ。引っ越しの荷造りや荷ほどき、清掃などを2000件以上請け負った経験から編み出した、収納や掃除などに関する独自の暮らし提案で知られる。そのノウハウは、様々な企業との商品開発などに生かされ、ハウスメーカーと組んでデザインした収納や家事動線に工夫を凝らした家は、空間の使い方が評価され、2013年のグッドデザイン賞に選ばれた。近年は、中国や韓国でも、住まいのプロデュースを手がける。著書に「40歳からの自分リセット法」(光文社知恵の森文庫)、「暮らしを整える 住まい方ハンドブック」(全2巻・東京書籍)、「近藤典子の『片づく寸法』図鑑 モノと人のサイズから考える賢い収納術」(講談社)など。

住まい方アドバイザー・近藤典子の「終活? 収活!」の連載

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