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実家の片付けでもめないために 成否を分けるのは対話力 

住まい方アドバイザー・近藤典子の「終活? 収活!」 その2

更新日:2018年10月09日

 あなたが中心になって実家の片付けに取り組む時、事前に家族に話しておくべきことがあります。そこで肝心なのは言い方だと、住まい方アドバイザーの近藤典子さんは語ります。連載2回目のテーマは、コミュニケーションの取り方です。

 前回は、親が突然倒れたケースを前提にお話ししました。経験された人に話を伺うと、その少し前から、予兆のような親の変化に気付いておられる場合が少なくありません。
 例えば、きれい好きなお母さんなのに、実家を訪ねたら、いつものように部屋の掃除が行き届いておらず「おかしいな」と感じたとか……。それらは老いや衰えを伝えるシグナル。敏感に察知して先回りできればよいのですが、なかなか難しいものです。

 実家を片付ける「収活」を親と賢く始めるのに、良いタイミングはあるのでしょうか。私は50代がその好機だと考えています。仕事は現役だが、ある程度先が見通せるようになり、子育ても手を離れる頃です。老眼を自覚するなど、自身の老いのきざしを感じ始める頃でもあります。とにかく、あなたの気力、体力に余裕があるうちに手を付けられるなら、それに越したことはありませんよね。

 とはいえ実家の片付けも、思い立ったからといってやみくもに始めてはだめです。家族の誰を中心に取り組むのかを決めなければ。

 兄弟姉妹で力を合わせて取り組めれば言うことはありませんが、皆、それぞれの都合があり、等しく分担するのは難しいでしょう。長男だからと、特定の人に押しつけることでもありません。
 ならば、どう決めたらよいのでしょうか。一人っ子の場合や、兄弟姉妹の誰もが手を挙げない場合なら、あなたが覚悟を決めなければならないかもしれませんね。

 ここで一番避けたいのは、「忙しいのは同じなのに、なんで私ばっかり」と考えてしまうこと。そんな気持ちで取り組めば、失敗は目に見えています。そうならないよう、引き受けるからにはあなたがやりやすいように、取り組む環境を整えることです。

 それには初めが肝心です。兄弟姉妹に「私がやる!」と宣言する時には、こうも言っておきましょう。「私に任せるからには後でチャチャは入れないでね。ちゃんと報告はするから」と。「手を出さないなら口も出すな」と、やんわり釘を刺しておくのです。さらに「どうしても私の手に余る時は改めてみんなに協力を頼むけれど、それが難しいようなら他人の力も借りるからね」とも。
 ここで言う他人とは、実家のご近所さんや、あなたの友達、お金を払って業者に頼むことも含みます。後で「勝手に他人を家に入れるなんて!」と、文句を言われるのを防ぐためです。実際、これは言われがちで、家族のいさかいの種になる文句なのですよ。
 報告のためには、きちんと記録をつけます。立て替えたお金は、実家に通う交通費も含めて記録。レシートも保存しておきます。後で家族で必ず折半してもらい、あなただけの持ち出しにならないようにすることです。

収活のコミュニケーションで伝えたいのは、あなたを思っての提案なのだという「気持ち」(イメージ写真. 本文とは関係ありません)
 親の気持ちの確認も大切です。実家の物は親の持ち物ですから、子どものあなたが勝手に手をつけて良いものではありません。なぜ、実家の片付けが今必要なのか、親に納得してもらわないことには進められません。
 ここでも言い方が大事です。「こんなに散らかっていては足元が危ないから」などとストレートに言ってしまうと、親の自尊心を傷付けます。それが原因で、親子の間にいらぬ憎悪を生んでしまうこともあるのですよ。
 こんな時は、例えばこう言ってはどうでしょう。「母さんは突然に思うかもしれないけれど、実は前々から考えていたの。母さんが元気なうちに片付けた方が良いって……」。私はあなたのことをずっと考えていたのよ、という気持ちを伝えるのです。子にそう言われて、悪く思う親はいないでしょう。

 病後など、親に考える余裕がない場合もあるでしょう。相談しようにも「あー、しんどい!」などと言うばかりで、一緒に考えることを拒否する場合もあろうかと思います。
 そんな場合は時を置いて、改めて言い方を変えて話すのです。「縁起でもないと思うかもしれない。でも母さんが元気なうちにやっておかなくちゃ、もしもの時に困ると思うの。母さんも私も……」。伝えるのは、親を大切に思っての提案なのだという「気持ち」です。

 親から「遺産目当てか!」などと言われて傷ついた人もいます。でもそれは、親の「老い」が言わせた言葉。きっと、本心ではありません。親の一言に、腹が立つこともあるかもしれません。でもそれは、相手が親だからこそ。まだちゃんとしていた頃の親を知っていて、無意識にそれと比べてしまうことで湧く怒りなのです。
 ある意味、老いるとは子どもに帰ること。いい大人が、子ども相手に腹を立てても仕方がありませんよね。

 片付けは快適な暮らしのための取り組みです。その意味で、収活とは親に余生を快適に過ごしてもらうための営みと言えます。その実現のためには、親子間の無用な感情の摩擦は避けなければなりません。
 物は言いよう。収活の要諦(ようてい)は、上手なコミュニケーションの取り方にこそあるのです。

 近藤典子さんが推奨する「収活」は、親と子が共に実家を片付けながら、これまでの暮らしを振り返り、余生を健やかに過ごせるようにする取り組み。その成否は、当事者間のコミュニケーションの取り方が左右します。この連載では、そのポイントを伝授します。(隔週、全6回予定)

近藤 典子(こんどう・のりこ) 住まい方アドバイザー。1957年、兵庫県生まれ。引っ越しの荷造りや荷ほどき、清掃などを2000件以上請け負った経験から編み出した、収納や掃除などに関する独自の暮らし提案で知られる。そのノウハウは、様々な企業との商品開発などに生かされ、ハウスメーカーと組んでデザインした収納や家事動線に工夫を凝らした家は、空間の使い方が評価され、2013年のグッドデザイン賞に選ばれた。近年は、中国や韓国でも、住まいのプロデュースを手がける。著書に「40歳からの自分リセット法」(光文社知恵の森文庫)、「暮らしを整える 住まい方ハンドブック」(全2巻・東京書籍)、「近藤典子の『片づく寸法』図鑑 モノと人のサイズから考える賢い収納術」(講談社)など。

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