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「それちょうだい!」 愛あるウソで捨てさせる 

住まい方アドバイザー・近藤典子の「終活? 収活!」 その3

更新日:2018年10月23日

 実家の片付けを通じて、親子の絆を結び直す「収活」の進め方を説く、住まい方アドバイザー近藤典子さんの連載。3回目は、「捨てられない物を親に手放させるには」がテーマです。

  なぜ今、実家の片付けをしなければならないのか。その理由を親に説明して納得が得られたのなら、いよいよ「収活」の実行です。

 ですが、その過程では親の思わぬ抵抗に遭い、感情がこすれ合う場面も訪れるでしょう。脅かすようですが、それは親子の間だからこそ起こり得る葛藤なのです。でも、安心してください。そんな葛藤も、あなたの心がけ次第で乗り越えることができますよ。

もう着ることはないと分かっていても捨てられない思い出の服は、タンスの肥やしになりがち(イメージ写真。本文とは関係ありません)
 さて、片付けようと実家の押し入れや物置を開いた時、予想を超える量の物がしまい込まれているのを見て、あなたは驚き、あきれるかもしれませんね。「どう考えてもこんな物、二度と使うことはないだろうに。なんで後生大事にしまい込んであるのかしら」と。でも、それは仕方のないことなのですよ。

 あなたの親の世代は、昭和の高度成長期を生きました。どんどん新しい物が生み出され、働いてそれらを次々手に入れて行くことが勲章になった時代なのです。

 そんな時代をくぐり抜けて今の日本があるのであり、実家にあふれる物はその名残なのです。でも、親がそんな状態で立ち止まってしまっているのなら、必要な物とそうでない物を振り分け、暮らしを整えてあげる必要があります。親子でその作業にうまく取り組めば、懐かしい思い出をたどりながら、改めて家族の絆を感じるきっかけにもできるかもしれません。

 あなたの目にはガラクタのように映るものでも、あなただけの判断で処分してはいけません。前回も触れましたが、実家の主人公はあくまでも親です。実家にある物は親の持ち物なのであり、子どもだからと言ってあなたの勝手になるものではないことを、忘れないでください。

 壁にぶつかった時は、なぜ実家を片付けているのか、その原点に立ち返ってください。親に、余生を快適に暮らしてもらいたいと願うからこそ、取り組んだのでしたよね。であるならば、物を処分するのにも、とにかく親に納得してもらわなければいけません。

 でも、高齢になってかたくなさの度を増した親との話し合いでは、なかなか納得してもらえないことの方が普通なのです。イラッと来ることもあるでしょうが、それは相手が親だからこそ腹が立つのであり、その時の感情に流されてはダメ。急がば回れ。時を選び、言い方を変えて、じっくり対処することです。

 間違っても、こんな言い方をしてはいけませんよ。

 「死んだらあの世には持って行けないのよ!」

 「どうせ死んだらゴミになるのよ!」

 「残しておいても、そんな物は誰も欲しがらないわよ!」

 「生きているうちに処分しちゃってよ!」

 口が滑るとうっかり飛び出しがちな言葉ですが、言われた側は、自分の人格や人生を否定された気分になります。

 こんな時、私ならこう言います。

 「たくさんの荷物ね。いっぺんに捨ててしまうのは簡単だけど、それはしたくないな。私、父さん母さんが大事にしてきた物を知らないから。一緒に掃除しながら、家族の思い出をたどらない? 孫に受け継げる物もあるかもしれないから」

 どうです? 同じことを伝えるにも、言い方ひとつで全く印象が違ってきますよね。物は言いようなのです。

 とはいえお年寄りにとって、これまで使ってきたものは、今まで生きてきた証しのようなもの。なかなか捨てられないものです。例えば思い出の服。色あせたり、デザインが古くなったりして、もう二度と袖を通すことはないだろうという服が、タンスの肥やしになっていることがあります。こんな時は、こう言ってみてはどうでしょう。

 「わぁ。これって母さんが勤めていたころに着ていた服よね、懐かしい! 私、この柄が好きだったんだ。もう着ないんだったら私にちょうだいよ!」

 こう言われれば、お母さんはきっと「仕方がないねぇ。それなら持ってお行き」ということになるはずです。

 同じ処分するのでも、捨てるのとあげるのでは大違い。捨てることには抵抗があっても、欲しがる人がいれば手放す気にもなるものです。もらって帰って、家で処分すれば良いのです。親にうそをつくことに抵抗を覚える人もいるでしょう。でも、うそも方便。愛のあるうそなら、神様仏様も、許してくださるに違いありません。ひょっとすると、当のお母さんの方もお見通しかもしれませんが。

 子ども時代に家に遊びに来て、お母さんとは顔見知りの友達がいれば、頼んで手伝ってもらうのも手です。「あなたの実家の片付けの時は手伝うから、助けて」と。それで、思い出話に花をさかせながら「お母さん、あれ使わないならいただけませんか」なんて、一芝居打ってもらうのです。

 他人を家に入れることに抵抗がある人なら別ですが、他人の目があると親子ゲンカにもなりにくいですしね。親も気分が違うでしょう。手伝いに来てくれたお友達も、第三者の目で客観的に実家の片付けの実例を見ることができ、自身の実家の収活に経験を役立てることができますから、一石二鳥ですよ。

近藤 典子(こんどう・のりこ) 住まい方アドバイザー。1957年、兵庫県生まれ。引っ越しの荷造りや荷ほどき、清掃などを2000件以上請け負った経験から編み出した、収納や掃除などに関する独自の暮らし提案で知られる。そのノウハウは、様々な企業との商品開発などに生かされ、ハウスメーカーと組んでデザインした収納や家事動線に工夫を凝らした家は、空間の使い方が評価され、2013年のグッドデザイン賞に選ばれた。近年は、中国や韓国でも、住まいのプロデュースを手がける。著書に「40歳からの自分リセット法」(光文社知恵の森文庫)、「暮らしを整える 住まい方ハンドブック」(全2巻・東京書籍)、「近藤典子の『片づく寸法』図鑑 モノと人のサイズから考える賢い収納術」(講談社)など。

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