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まだ遅くはない 居場所と人脈つくる「生きがい」を探せ 

藤原和博の正解のない人生相談 (1)

更新日:2018年09月13日

 教育改革実践家の藤原和博さんが、迷える60代に助言する連載。1回目は定年後に時間を持て余す男性です。藤原さんは「まだ遅くはない!」と、奮起を促しました。

 この春、会社を定年になりました。最初は開放感のようなものにひたっていたのですが、だんだん時間を持てあますようになり、つい家でゴロゴロ。妻にやかましく言われるので出かけてもみるのですが、自分は地元のことを何も知らないのだと、改めて気付いた次第です。妻は地域のボランティアなどをやっているので、ついて行ってもみたのですが、なんとも居心地が悪くて長続きしません。せっかくの第二の人生、こんなことではいかんと思うのですが、どうしたら良いものでしょう。(神奈川県 男性 60歳)

 この相談を読んで、身につまされている男性、たくさんいるでしょうね。「オレは大丈夫」と思っている現役の人もいるでしょうが、先のことだと保留すればするほど、ヤバさは増すわけで。

 世の奥様方の多くは、子どもが手を離れれば、地域のコミュニティーに出て行く。そこで友だちを作って、一緒に旅行なんかに行く。
 男性の多くは定年になって、落下傘のように奥さんのコミュニティーに参加しようとする。だけど、そこでは彼女たちがポジションをとっているわけで、はっきり言って迷惑。「自分の居場所は5年ぐらいかけて自分で作るものよ」なんて跳ね返されちゃう。

 現役時代にバリバリやっていた企業戦士が引退して時間を持てあますと、かつての部下を家に招いて庭でバーベキューやろうかなんて考えがち。でも、最初こそ気を使って来てくれるかもしれないが、普通は行かなくなるよね。だって、行ってもメリットがないもの。
 偉かった人は、自分の人間力で部下を従えてきたと思いがち。だけど、実はそうじゃないんだよね。「部長」を支えていたのは、人事権や予算権なの。口に出してこそ言わないけれど「言うこと聞けばボーナスはずむけど、聞かなきゃ飛ばすよ」みたいな、そんな権力に支えられていたんだ。でも退職して会社の名刺がはがれたとたん、一個人としての「佐藤一郎」さんが、あからさまになる。

 今や人生100年。リタイア後の30年は長い。再び権力を持つことができればいいけれど、残念ながらそれが無理ならば、何か生きがいになるようなものを見つけて、とにかく始めることだね。そうして自分の居場所を作り、新たな人脈を育てるしかない。

 子どものころ鉄道マニアだったという人なら、今も興味を持てるのかどうか。現役時代に接待ゴルフを散々やった人なら、本当にゴルフが好きだったのかを自問してみたりね。
 私のテニス仲間に聞いてみると、40代で始めている人が多かったな。年をとり、体力が落ちた状態では、キャリア差の大きい人たちに混じってプレーするのは、なかなかハードルが高いから。やっぱり早く始めておくほど、結果的に長く続けられるんです。
 私がテニスを始めたのは52歳ですよ。テニスクラブに2カ月間通い詰め、集中レッスンしてもらった。今のライザップじゃないけど、結果を保証して欲しくて「試合できるレベルにしてくれ」って頼んだ。40万円ぐらい積んだかな。それぐらいしないと、コーチも50過ぎの初心者を本気で育ててくれないでしょ。

 とにかく今始めれば、遅くはないと思いますよ。

 人生100年時代。60代からの第二の人生は、悠々自適の毎日が待っているのかと思いきや、悩み深い日々を送っている人が少なくありません。あなたが今60歳なら、日本人の平均寿命に照らして、3050代に過ごした時間に匹敵する余生が残されていることになります。その長さを持て余しているのだとすれば、もったいないこと。第二の人生を悔いなく過ごすために、今できることは? 教育改革実践家として「正解のない問題」に挑み続けた藤原和博さんが、同時代を生きる皆さんの悩みに答えます。

藤原 和博(ふじはら・かずひろ) 

教育改革実践家。1955年、東京都生まれ。リクルート社フェロー、東京都杉並区立和田中校長、大阪府知事特別顧問、奈良市立一条高校長などを歴任。正解のない問題に取り組む「よのなか科」というアクティブラーニング法を開発し、広めている。著書に「人生の教科書 よのなかのルール」(共著・ちくま文庫)、「坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと」(ポプラ社)、「戦略的『モードチェンジ』のすすめ 45歳の教科書」(PHP)など。

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