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片付けに焦りは禁物 小さく始め、家族の歴史をたどれ 

住まい方アドバイザー・近藤典子の「終活? 収活!」 その6

更新日:2018年12月04日

 実家の片付けを通じて、親子の絆を結び直す「収活」の進め方を説く、住まい方アドバイザー近藤典子さんの連載。最終回は、実家を片付ける目的を改めて確認します。

  この連載も6回目。いよいよ最終回です。ここまで読んで下さった皆さんには、「収活」に取り組む意義や、コミュニケーションの結び方の大切さが分かっていただけたと思います。とは言っても、老いた親の気持ちを実家の片付けに向けさせることは、簡単なことではありません。読者の皆さんの中にも、今、まさにこの時点で苦戦されている方が結構おられるのではないでしょうか。今回は、親にその気になってもらう方法を、改めて考えてみたいと思います。

 「片付ける必要はない」「全部必要なものなの」「放っておいて」。あなたの提案を拒む親の言葉は様々でしょうが、その言葉の背後には、共通の心理状態があるようです。

 まず考えられるのは、老いからくる無気力でしょうか。引っ越しの時など、誰もが実感されると思いますが、片付けには体力が求められます。年をとって根気や筋力などが衰えると、片付けの必要性は感じていても、やる気が追いつかなくなるのです。

 我が子に迷惑はかけたくない。でも、頼らざるを得ない。情けない……。親を頑固にしているのは、そんなジレンマかもしれません。その頑固さは、どこか幼子のそれに似ています。老いるというのはある意味、子どもに返ること。だから、そのかたくなさを解くには、時に大げさなくらいにほめたり、おだてたりして気持ちを上げるのがコツです。

 また、人にはそれぞれに自分なりの時間の過ごし方というものがありますよね。年をとればとるほど、そのリズムやペースを乱されたくないという気持ちが強くなります。衰えたからこそ、我が子の助力が必要になるのですが、あなたに暮らしのペースを乱されたくはない気持ちが先に立ってしまうのです。だから実家の片付けでは、極力親のペースに合わせることです。休み休み、少しずつ進める。絶対に焦りは禁物です。

 親をその気にさせるには、片付けの効果を実感させるのも有効です。例えばリビングの棚の上が雑然としているなら、100円ショップで簡単な収納グッズを買ってきて整理してみせる。すると、何も捨てていないのに、何か片付いた気持ちになる。少しすればまた散らかってきますが、気がついた時にまた、今度は親と一緒に整理してみる。ちょっとでも片付けると、何か気持ちがいい。そんな体験を繰り返すうちに、親も片付けることに心を開くようになります。小さなところで始めて、小さな成果を分かち合うのです。

 実家に、あなたが子どもの頃に使っていた部屋が、そのまま残っているなんてこともあるかも知れませんね。だとしたら、あなたの手で、そこから片付けてみせたらどうでしょう。「ほったらかしで今まで迷惑かけたね~。この部屋が空けば、色々収納にも使えたのに。ここは自分で片付けるから、この部屋の役立て方を考えてね」などと言って、その片付けのプロセスを見せるのです。

 親に聞こえるように「こんなものが出てきた~。なんで後生大事にとってあったんだろ」。子どもを呼んで手伝わせて「ママがあんたぐらいの時に使ってたんだけど、いる?」「そんなのいらないよ~」なんてやり取りを聞かせて、親に収活の疑似体験をさせるのも効果的かも。片付けながら、昔話に花が咲けばしめたものです。その頃に記憶が飛んで、気持ちが若返ります。

アルバムは、その家の生活史そのもの。めくれば、たちまち昔の記憶がよみがえる。(写真はイメージ。本文とは関係ありません)
 「収活」は、親の生活史をたどる旅です。そのついでに、実家を片付けるぐらいのノリでやればよいのです。親と同居している人でも、親について知らないことはあるもの。ましてや、離れて暮らしていた時間が長ければ、お互いに埋め合わせなければならない家族史の空白はたくさんあるはず。実家の片付けは、それらを埋め合わせる格好の手段になります。そして、それは親が亡くなった後では絶対にできないことなのですよ。

 その意味で、実家に残る写真の整理から始めるのも手ですね。デジタルカメラの時代の今は、みなさんパソコンの中に写真を保存しているのでしょうが、フィルム時代の写真の多くは、お菓子の缶や、あちこちの引き出しの奥などにしまい込まれています。

 それらを引っ張り出してきて、残す写真、捨てる写真を親子で次々とセレクト。年代順に並べ直してアルバムに整理する作業は、家族史の編集作業そのものです。そうして昔の自分の気持ちに帰れたら、開かずの押し入れを片付けるきっかけが生まれるかもしれません。「せっかくだから、写真以上の思い出の品を探してみようか」なんて……。

 いかがですか。ぜひ、あなたがた親子らしいやり方で「収活」に取り組んでいただければと思います。そしてもし、道に迷った時には原点に返ってください。「親に余生を快適に過ごして欲しい」と願うあなたの気持ちこそが、出発点だったはずです。それさえ忘れなければ、きっとうまくいきますよ。

近藤 典子(こんどう・のりこ) 住まい方アドバイザー。1957年、兵庫県生まれ。引っ越しの荷造りや荷ほどき、清掃などを2000件以上請け負った経験から編み出した、収納や掃除などに関する独自の暮らし提案で知られる。そのノウハウは、様々な企業との商品開発などに生かされ、ハウスメーカーと組んでデザインした収納や家事動線に工夫を凝らした家は、空間の使い方が評価され、2013年のグッドデザイン賞に選ばれた。近年は、中国や韓国でも、住まいのプロデュースを手がける。著書に「40歳からの自分リセット法」(光文社知恵の森文庫)、「暮らしを整える 住まい方ハンドブック」(全2巻・東京書籍)、「近藤典子の『片づく寸法』図鑑 モノと人のサイズから考える賢い収納術」(講談社)など。

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