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100年時代の夫婦の形は? 離婚を決める前に荒療治を 

藤原和博の正解のない人生相談 (9)

更新日:2018年12月27日

 教育改革実践家の藤原和博さんが、迷える中高年に助言する連載の9回目(最終回)。今回の相談者は、60歳にして離婚を考える女性です。あえて「正解」を求める女性に、藤原さんは「とことん悩め」と勧めました。果たして、その心は……。

 結婚生活についてお聞きします。今まで子育てに追われ、自分自身の結婚生活について考えたり、振り返ってみたりする余裕もなく、子供たちが独立して初めて、そうしたことをじっくり考える時間ができました。夫とは長いこと一緒に暮らしてはいても、どうしても我慢が出来ないことや不満があります。特に夫の定年後は、お互いの価値観の相違に深く悩むようにもなりました。人生は後戻りできないのだから、本当に苦痛なら別れるのも選択肢の一つですが、この年齢で踏み切るにはとても勇気がいります。離婚するか否か、あえて正解を求めるならばどう考えるべきか、アドバイスを頂けないでしょうか。(東京都 女性 60歳)

 離婚するか否か、あなたは正解をお求めですが、残念ながらこの問題には正解はありません。ここに書かれた内容だけでは、あなたとご主人の人生観の隔たりがどの程度なのか推し量ることはできませんし、離婚の是非についても、他人がとやかく言うことではないと思いますから。とはいえ、あなたの悩みの深さは、文面から十分伝わってきます。ここは、あなたが自ら納得解にたどり着くためのヒントを、一緒に考えてみましょうか。

 夫婦は、まだ子供が小、中、高校生ぐらいのうちは、子供の敵は親にとっても共通の敵なので戦友になれます。二人で担任の先生の悪口を言い合うなど、子供を接点に共通の話題が持てます。でも、その子が大学生にもなれば、親が口をはさむ余地はぐっと減りますから、夫婦共闘の機会は減り、別に共通の話題が必要となってきます。

 若い頃は別として50代にもなれば、夫婦それぞれに趣味や関心領域も固まってきます。二人で旅行に行く話になっても行きたい場所が一致しないとか、何か一緒に取り組もうと思っても、好みの違いがはっきり分かれ、夫婦とはいっても別人格なのだということに改めて気付かされることになります。

 だから30代ぐらいのうちに、テニスでも何でもいいから夫婦共通の趣味を持ったり、一緒に取り組めるテーマを見つけておいたりする必要があるのですが、時計の針は巻き戻せません。運悪く50~60代になって、ようやくそれに気付いてしまった人は、熟年離婚の文字が頭をよぎる羽目になるのです。

 今からでも遅くはないと思いますよ。夫婦で取り組めるテーマは見つけられないものでしょうか? どうしても無理だというのなら、しょせんは夫婦も他人だと割り切り、自分の生きがいを見つけ、追求するしかありません。大事なのはあなた自身の余生の充実です。そのためなら、夫のことを突き放したって構いません。

 不満を抱えながら、夫のために日に3度の食事を用意する必要もありません。相手がグータラを決め込むのなら、この際、こんな風に宣言してはどうでしょう。「あなた、家を出て地方に行ってボランティアに取り組むなり、単身赴任するつもりであなたの生きがいを探していらっしゃいよ。やらないなら、私が行くわ」と。その結果、ご主人はどん底まで落ち込むかもしれない。でも、以前の回の相談でも言いましたが、そのショックでモードチェンジを果たし、あなたも見直すような夫に生まれ変わるかもしれません。できるかどうかは本人の甲斐性次第。あなたの責任ではありません。離婚を切り出すなら、荒療治を試した後でもよいのではありませんか?

 夫婦の間に本当に共通の話題が絶えてしまったのなら、メンバーチェンジを考えるのもやむを得ないでしょう。60代で離婚に踏み切るのは、おっしゃるように勇気がいることかもしれませんが。

 でも、アメリカでは、20~30代に結婚や離婚を繰り返し、40代になってようやくベターハーフと言えるパートナーに巡り合う、そんな生き方があると聞きます。人生100年時代を迎えた日本でも、今の子供たちが大人になるころには、人生で2度、3度パートナーを変えることが当たり前になり、一生を同じパートナーと添い遂げるケースの方がまれになるかもしれません。進む長寿社会には、夫婦のあり方をも変えるかもしれない潜在力があるのです。

 仮にご主人と別れたとして、その後はどうするつもりですか? 日本人女性の平均寿命は伸び続け、今や87歳を超えています。あなたが健康な女性だとすれば、これまでの人生の半分近い月日が、まだ残されているかもしれないのですよ。

 あなたのこの半生の浮き沈みを振り返れば、きっと山と谷が交互に訪れていたはずです。大きな山を駆け上がるには、ジェットコースターのように位置エネルギーを運動エネルギーに変え、思い切り谷を下って勢いをつけなければなりません。60代の今、離婚を考えるほど思い悩んでいるあなたは、きっと大きな谷に沈み込んでいるのでしょう。

 でも、考え方を変えれば、それは70代に訪れるかもしれない人生のピークを駆け上がるための、助走期なのかもしれない。「この不幸、welcome!」とでも言うぐらいの気持ちで、この際、思いきり悩みを深めてみてはどうでしょう。

 これまでも繰り返し語ってきましたが、あなたが今思い悩んでいる問題も、いつか他人に面白おかしく話せる日が来ます。その時、あなたが悩みをいかに乗り越えて来たか、その経験談に耳を傾けたい人が、周りに集まってくるはずです。そのあなたの隣に、10年前の倦怠(けんたい)期の記憶を共に笑い飛ばすご主人がいれば、最高なのですがね。

 人生100年時代。60代からの第二の人生は、悠々自適の毎日が待っているのかと思いきや、悩み深い日々を送っている人が少なくありません。あなたが今60歳なら、日本人の平均寿命に照らして、3050代に過ごした時間に匹敵する余生が残されていることになります。その長さを持て余しているのだとすれば、もったいないこと。第二の人生を悔いなく過ごすために、今できることは? 教育改革実践家として「正解のない問題」に挑み続けた藤原和博さんが、同時代を生きる皆さんの悩みに答えます。

藤原 和博(ふじはら・かずひろ) 

教育改革実践家。1955年、東京都生まれ。リクルート社フェロー、東京都杉並区立和田中校長、大阪府知事特別顧問、奈良市立一条高校長などを歴任。正解のない問題に取り組む「よのなか科」というアクティブラーニング法を開発し、広めている。著書に「人生の教科書 よのなかのルール」(共著・ちくま文庫)、「坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと」(ポプラ社)、「戦略的『モードチェンジ』のすすめ 45歳の教科書」(PHP)など。

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