ReライフTOP特集連載・コラム

「多死社会」で“ひとり死”を考える 

“ひとり死”時代の葬送と備え (1)

更新日:2019年01月29日

 人生の終末期は、誰にでも訪れる。そのときあなたは、何をどんな人にお願いしようと思っていますか? 自分のお葬式やお墓をどうしたいと考えていますか?

沖縄のお墓の様子(小谷みどり撮影)
 今、日本の「死」の現場は大きく変化している。これまでは、終末期から死後までの手続き・作業は「家族や子孫が担うべきだ」とされてきた。だが現在は、自立できなくなった場合、家族以外の誰に頼ればいいのかという問題がクローズアップされている。家族がいても高齢で頼れない、別居する子どもに迷惑をかけたくない、あるいは頼れる家族や親族がそもそもいない――といった人たちが増えているからだ。


 家族の有無に関わらず、最後はひとりになる可能性は、誰にでもありうる。この連載では、こうした“ひとり死”社会の実態をお葬式やお墓の変化を通じて紹介したい。そして、私たちが元気なうちに準備できることを考えていこうと思う。

 まず「多死社会」の現状をデータでみてみたい。

 厚生労働省の推計によれば、昨年の死亡者数は136.9万人にのぼった。100万人を超えたのは2003年だが、これから20年間でまだまだ増加するといわれている。

死亡者数と出生数の推移(出典:厚生労働省)
 ところが、家族や子孫が葬送を担えない、あるいは担ってくれる親族がいない事態が顕著になっている。その理由のひとつは、長寿化、つまり死亡年齢の高齢化だ。2016年に亡くなった人のうち、女性は90歳以上が37.2%、男性は80歳以上が51.7%だった。2000年の調査では80歳以上の男性は33.4%だったため、20年間で長生きする人が増えたことになる。

 配偶者や子どもも高齢化している。厚生労働省の「平成28年国民生活基礎調査」では、自宅で介護をしている人のうち、要介護者と介護者がいずれも65歳以上の世帯は54.7%、75歳以上でも30.2%にのぼる。老夫婦がともに介護が必要な「老老介護」は、もはや当たり前。親子がともに要介護ということも珍しくない。私が知っているなかでも、70代の息子と90代の母親がどちらも認知症を患い、高齢者施設に入居しているケースもある。「老いては子に従え」ではなく、「老いた時には子も要介護」という社会なのだ。

 墓参りや法事にも変化が表れている。仏教では一般的に、33回忌か50回忌を「弔い上げ」とし、それ以降は個別には年忌法要をせず、先祖としてまつってきた。しかし昨今は、長寿化や遺族の高齢化により、13回忌や17回忌で弔い上げをする家庭が増えているのが実情だ。

 そもそも遺族がいない“ひとり死”も増えている。注目すべきは、男性の生涯未婚者だ。50歳時点で一度も結婚経験のない人の割合を示す「生涯未婚率」は、2015年は男性が23.4%、女性が14.1%だった。男性は長く「結婚して一人前」とされてきた風潮があり、1950年の数値は1.5%にとどまっていたが、1990年以降急増した。増加に転じたこの年に50歳だった男性がまもなく80歳を迎える。これからは、生涯未婚の男性がどんどん亡くなっていく社会が到来する。死後の手続きや葬送だけでなく、自立できなくなったときに頼れる家族や親族がそもそもいない場合、誰に頼めばよいのか。元気なうちに自分はどうしたいかを考え、備えておく必要がある。

  ひとりで人生の最期を迎える人が増えるなか、弔いのあり方も変化してきています。お葬式やお墓の現状に詳しい、シニア生活文化研究所長の小谷みどりさんが、いまの葬送の現場と社会のあり方、備え方などについて連載します。

小谷 みどり(こたに・みどり) 

シニア生活文化研究所所長。2018年末まで第一生命経済研究所に25年余り勤務。大阪府出身。博士(人間科学)。専門は生活設計論、死生学、葬送問題。国内外のお墓や葬儀の現場を歩き、その実態や死生感の変化などを著書などで伝えている。最近の著書は『<ひとり死>時代のお葬式とお墓』(岩波新書)、『ひとり終活』(小学館新書)、『没イチ』(新潮社)など。奈良女子大学、立教セカンドステージ大学で講師をするほか、身延山大学、武蔵野大学の客員教授も務める。

‘’ひとり死‘’時代の葬送と備えの連載

50代からのおひとり生活の連載

Reライフスペシャル

連載・コラムの関連記事

PAGE TOP