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遺体は自宅に帰らない 安置専用ホテルも登場 

小谷みどりが斬る!「ひとり死」時代の葬送と備え (4)

更新日:2019年03月05日

ラブホテルを改装、遺族も一緒に宿泊

 最近、遺体安置の専用施設が続々と誕生している。「霊安室」ではなく、「遺体ホテル」や「フューネラルアパートメント」などと呼ばれている。宿泊費は一泊5千円から3万~4万円とさまざま。遺族がいつでも面会できたり、数人でのお別れ会ができたりする部屋が併設された施設もある。古いラブホテルを改装し、ホテル営業の許可を受けた施設には、洗面・バスなど宿泊施設が完備され、遺族は同じフロアで宿泊できる。

都内の遺体安置施設の内部(小谷みどり撮影)

 葬儀社が遺体搬送で一番困るのは、自宅安置は嫌だが、どこへ搬送するかを遺族が決めていないケースだという。もちろん搬送した葬儀社に依頼すれば、自社の施設に安置してもらえるが、お葬式までその業者に頼まざるをえなくなる。「遺族は数人しかいないので火葬のみで」となると、火葬までのあいだ、家族は遺体を安置する場所を探して頭を悩ませることもある。先の専用施設は、そんななかで生まれたビジネスの一つだ。

 厚生労働省は在宅死を推進しようとしているが、現状では、自宅で亡くなる人は1割程度しかいない。病院や老人ホームで亡くなると、遺族があらかじめ葬祭業者を決めていなければ、出入りの業者が遺体搬送を担当することが多い。業者にとっては、遺体搬送は葬儀受注につながる機会だが、病院にとっても、遺体を迅速に運び出してくれる葬儀社の存在はありがたい。両者の利害は一致してきたが、ここ数年、遺体搬送の風景に変化がみられる。遺体が自宅に「帰宅」しないケースが増えているからだ。

セレモニーホールでお葬式、遺骨で帰宅

 以前は、自宅でお葬式をしなくても、遺体をいったんは自宅に安置する遺族が多かった。しかし、最近では故人の自宅に遺体を安置しない遺族は珍しくない。核家族化が進み、入院で長らく無人になっていた親の自宅に遺体を安置するには、家の中の片づけをしなければならないが、お葬式の準備でばたばたする時にそんな余裕はないだろう。近所の人の目を気にして遺体の帰宅を嫌がるケースもある。近所づきあいが希薄になっているうえ、家族を中心としたこぢんまりとしたお葬式が主流となり、遺体の帰宅を近所の人に発見されたくないという心理が働くのだろう。

 仏間や客間がある広い家が多い地方でも、最近ではセレモニーホールでお葬式をするのが当たり前になっている。過疎化が進み、住民の多くが高齢となった集落では、重労働を伴うお葬式の準備を地域の人たちが手伝えなくなり、セレモニーホールを利用する方が住民の負担が少なくなるからだ。過疎や人口減少が進む地域では、セレモニーホールが集落にないうえ、入院設備のある大病院は町にあるので、そこで亡くなれば、そのまま町のセレモニーホールでお葬式をおこない、遺骨になってから自宅に戻ることが増えた。

 高知県四万十市の西土佐大宮という集落では、一番近いセレモニーホールまで片道50キロもあった。集落活動センターが3年前、閉鎖されていた保育所を利用し、自前の祭壇でお葬式ができるようにしたところ、「顔なじみの人のお葬式に参列しやすくなった」と、住民から喜ばれているという。

 お葬式の形が変わり、遺体がどこで火葬までを過ごすのかという風景も様変わりしている。

  ひとりで人生の最期を迎える人が増えるなか、弔いのあり方も変化してきています。お葬式やお墓の現状に詳しい、シニア生活文化研究所長の小谷みどりさんが、いまの葬送の現場と社会のあり方、備え方などについて連載します。

小谷 みどり(こたに・みどり) 

シニア生活文化研究所所長。2018年末まで第一生命経済研究所に25年余り勤務。大阪府出身。博士(人間科学)。専門は生活設計論、死生学、葬送問題。国内外のお墓や葬儀の現場を歩き、その実態や死生感の変化などを著書などで伝えている。最近の著書は『<ひとり死>時代のお葬式とお墓』(岩波新書)、『ひとり終活』(小学館新書)、『没イチ』(新潮社)など。奈良女子大学、立教セカンドステージ大学で講師をするほか、身延山大学、武蔵野大学の客員教授も務める。

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