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火葬場が足りない? 「数日待ち」のからくりとは…… 

小谷みどりが斬る!「ひとり死」時代の葬送と備え (8)

更新日:2019年05月15日

 亡くなる人が増える多死社会にあって、火葬場が足りないのではないかという話をよく聞く。たくさんの人が亡くなる冬場には、「火葬までに一週間近くも待たされた」といった遺族の体験談を耳にしたことがある人も多いだろう。しかし、本当に火葬場が足りないのだろうか。

 「墓地、埋葬等に関する法律」の第三条では、「埋葬又は火葬は、他の法令に別段の定があるものを除く外、死亡又は死産後24時間を経過した後でなければ、これを行ってはならない」とあり、お葬式をしない場合でも、死後24時間は火葬できない。

 例えば今日の16時に亡くなったとすると、火葬ができるのは明日の16時以降となる。東京・大田区にある公営臨界斎場や福岡市の公営火葬場では火葬の最終枠は16時なので、予約がいっぱいでなければ、理論上は火葬できる可能性がないわけではない。しかし火葬を予約するには、まず死亡届を役所に出して、死体火葬・埋葬許可証を発行してもらう必要がある。一般的にはこの手続きは葬儀社が代行してくれるが、夕方に亡くなってすぐに役所に行き、翌日の火葬の段取りをつけるというのは現実的ではない。

 また同じ公営火葬場でも、」八王子市では最終は14時半、札幌市は15時、横浜市では15時半となっており、多くの自治体では営業時間の関係上、夕方以降に亡くなれば、翌日に火葬することはできない。

煙突が外から見えている火葬場は少なくなった
 

予約を取りにくい事情

 そのうえ、友引の日は火葬場の休業日となっているところが少なくない。今日の夕方に亡くなれば、最短で明後日に火葬できるが、明後日が友引で休業だった場合には、早くても3晩は待たなければ火葬できないことになる。単純に考えても、休業日翌日は通常の倍の予約が入るので、すでに予約がいっぱいだったら、亡くなった日時によって火葬の予約が4、5日先になることは、死亡人口の増加とは関係なく、ありえる話なのだ。

 とはいえ、多くの火葬場では、朝9時など朝一番であれば、予約は取りやすい。つまり、人気のある正午前後の時間帯が混み合っているだけで、火葬場の予約が取りにくいわけではないのだ。

 実は、火葬場の予約は取れるのに、セレモニーホールが空いていないということもある。自社のホールがたまたまいっぱいだったら、「火葬場の予約が数日先まで取れませんので、お通夜の日取りをずらしましょう」と、遺族に説明する葬儀社もいないわけではない。

友引の利用率、なお6割

 余談だが、迷信で休業日を定めるのはおかしいという声もあり、名古屋市、仙台市、大阪市、広島市、福岡市など、友引にも開場する火葬場が増えている。しかし友引の利用者は、他の日に比べると明らかに少ない。東京・八王子市では、死亡者が多い9月と冬季に友引にも火葬場を開場しているが、利用者が多いとはいえない。通年で友引に開場している都心の臨海斎場でも、友引の利用率は年々あがっているとはいえ、6割程度だ。

 しかし、葬儀をせずに火葬のみですませる直葬や、家族数人でのお別れが珍しくない昨今、友引を気にしない遺族や、朝一番の火葬でもいいという遺族は増えていくだろう。火葬までの日数が長いのは、火葬場が足りないからという単純な問題ではないのだ。

  ひとりで人生の最期を迎える人が増えるなか、弔いのあり方も変化してきています。お葬式やお墓の現状に詳しい、シニア生活文化研究所長の小谷みどりさんが、いまの葬送の現場と社会のあり方、備え方などについて連載します。

小谷 みどり(こたに・みどり) 

シニア生活文化研究所所長。2018年末まで第一生命経済研究所に25年余り勤務。大阪府出身。博士(人間科学)。専門は生活設計論、死生学、葬送問題。国内外のお墓や葬儀の現場を歩き、その実態や死生感の変化などを著書などで伝えている。最近の著書は『<ひとり死>時代のお葬式とお墓』(岩波新書)、『ひとり終活』(小学館新書)、『没イチ』(新潮社)など。奈良女子大学、立教セカンドステージ大学で講師をするほか、身延山大学、武蔵野大学の客員教授も務める。

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