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あなたの墓参りは誰が? 継ぐ人がいない”無縁”化の背景は 

小谷みどりが斬る! 「ひとり死」時代の葬送と備え(9)

更新日:2019年05月28日

 日本では、人が亡くなって以降のことは、家族や子孫が担うべきだとされてきた。例えばお墓は、「慣習に従って祖先の祭祀(さいし)を主宰すべき者が継承する」と民法で規定されている。慣習とは誰か、までは法律には明記されていないが、多くの人は、長男がお墓を継承すると思い込んでいる。次男や三男は新しくお墓を建てなければならない、結婚した娘は一緒のお墓に入れないなどと思っている人も少なくないが、公営墓地や民間霊園では、一緒のお墓に入れる人の範囲は、「6親等内の親族、配偶者、3親等内の姻族」とされているのが一般的だ。

 

ある公営墓地で掲げられていた使用者調査の立札。墓にも「核家族化」の影響が及ぶ(小谷みどり撮影)

半世紀前は5人に1人が土葬だった

 そもそも「○○家の墓」のように、子々孫々で同じ墓石の下に遺骨を安置するようになったのは、火葬が普及してからのことだ。厚生労働省「衛生行政報告例」によれば、今でこそ火葬率は99.9%を超えているが、1970年には79.2%だったので、50年前には5人に1人は土葬されていた。子々孫々で継承するお墓にはそれほど長い歴史があるわけではない。

 女性の社会進出、核家族化などが進み、育児や介護は家族だけではなく、社会全体で分担しようという流れにあるが、お墓の継承に関しては、いまだに家族や子孫の役割だという意識が私たちの中で根強い。

 医師が死亡宣告をした時刻から、法律上では、私たちはヒトではなく、遺体というモノになるため、人の死そのものは、わが国では福祉の対象ではない。イギリスが第2次世界大戦後に掲げた福祉のスローガンに「ゆりかごから墓場まで」という言葉があるが、日本の福祉の対象は「ゆりかごから死の瞬間まで」と、されている。福祉はヒトに対して提供されるからだ。

継ぐ人がいない墓が増えている

 しかし昨今、継承者がいない死者が増加し、子々孫々で墓を継承するという構図が危うくなっている。

 お墓参りが相当期間なされておらず、荒れ果てた無縁墓が全国で増加しているのは、子どもがいない夫婦、あるいはシングルが増えたことだけが原因ではない。高齢者の核家族化により、家族のイメージが変化していることもある。厚労省「国民生活基礎調査」によれば、1980年には、65歳以上の人がいる世帯の50.1%は三世代同居だったが、2017年には11.0%にまで減少している。その結果、「祖父母は家族ではなく、親戚」と考える若者が少なくない。孫が、年に数回しか会わない祖父母の墓参りを何十年も続けるとは限らない。墓の無縁化は、子どもや孫がいても起きうる問題なのだ。

 若者が都市へ出ていき、高齢化率が高く、過疎化も進む地域では特に、増加する無縁墓をどうするかが、今後の大きな課題だ。例えば、熊本県人吉市では2013年に市内の全995カ所の墓地を調査したところ、4割以上が無縁になっており、なかには8割以上が無縁墓になっている墓地もあった。高松市でも市営墓地30カ所のうち、2016年には21.3%のお墓が無縁になっている。そのうち7カ所で無縁化率が3割を超えているという。

 無縁墓になれば永代使用権は抹消され、墓地運営者は墓石を撤去してもよいことになっており、「墓地、埋葬等に関する法律」の施行規則には、その手順が明記されている。具体的には、死亡者の本籍や氏名を明記し、1年以内に申し出なければ改葬する旨を官報に明記し、園内や墓地にも最低1年間は立札を建てて同じ内容を掲示する。そのうえで、申し出がなければ、無縁墓の写真と位置図、公告に対して申し出がなかった旨を明記した書面、官報の写しと立札の写真を市町村役場に提出するという流れだ。

 しかしどう認定し、撤去するかは同じ公営墓地でも市町村によってまちまちだ。税金を投入して更地にしても、次に墓を建てたい人がいなければ無縁墓のまま放置したほうがいいと考える自治体もある。

 夫婦2人暮らしやひとり暮らしの高齢者が増えれば、墓も核家族化するのは当然だろう。子や孫の有無に関わらず、継承されない墓をどうするのか。「ひとり死」時代の墓のあり方を考えなければならない。

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小谷 みどり(こたに・みどり)

シニア生活文化研究所所長。2018年末まで第一生命経済研究所に25年余り勤務。大阪府出身。博士(人間科学)。専門は生活設計論、死生学、葬送問題。国内外のお墓や葬儀の現場を歩き、その実態や死生感の変化などを著書などで伝えている。最近の著書は『<ひとり死>時代のお葬式とお墓』(岩波新書)、『ひとり終活』(小学館新書)、『没イチ』(新潮社)など。奈良女子大学、立教セカンドステージ大学で講師をするほか、身延山大学、武蔵野大学の客員教授も務める。

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