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家族がいても引き取り手のない「無縁遺骨」が増える事情 

小谷みどりが斬る! 「ひとり死」時代の葬送と備え(10)

更新日:2019年06月11日

 ここ20年ほどの間に、引き取り手がおらず、無縁納骨堂に安置される遺骨が全国で増加している。日本では、死後、火葬をしたり、お墓に納骨したりする人がいない場合、自治体が遺族の代わりにおこなわなければならないことになっている。

 自治体が引き受けた遺骨が全国で最も多い大阪市では、昨年には2366柱を市設霊園の無縁堂に安置した。これは、大阪市内で亡くなった人の8.3%にあたる。言い換えると、遺骨の引き取り手がいない死者は、12人に1人もいることになる。1990年には無縁堂に安置された遺骨は336柱だったので、この25年間で7倍近くも増えている。

 

ある自治体の無縁納骨堂の内部。身元が分かっていても引き取り手のない遺骨が急増しているという(小谷みどり撮影)

身元が分かっているのに引き取り手がいない

 引き取り手のない遺骨ときくと、身元不明の死者をイメージするかもしれないが、本人の名前や本籍地などが分からない、いわゆる「行旅死亡人」の遺骨は少ない。大阪市の場合、年間2000を超える無縁遺骨のうち、行旅死亡人は50人に満たない。

 横須賀市では2003年度には、身元不明の死者は5人で、身元が分かっているのに引き取り手のない遺骨が11柱あったが、18年度には身元不明が3人、身元判明者が50人だった。どこの自治体でも、身元も親族も分かっているのに引き取られない遺骨が急増しているのだ。

 横須賀市の場合、引き取り手のない遺骨は、市役所の一角に半年から一年程度安置された後、無縁納骨堂へ移される。ところが預かる遺骨が急増し、無縁納骨堂が満杯になったため、これまでに2005年、11年、15年の3回にわたって、合計で600柱近くを別の合同墓に再安置した。

どんな人が無縁遺骨になるのか

 では、身元が分かっているのに遺骨の引き取り手がいない死者とはどんな人なのだろうか。実は経済的に余裕があっても、既婚者であっても、親族との関係が疎遠で、無縁遺骨として安置されるケースは珍しくない。

 私の知り合いで子どもがいない夫婦は、妻はひとり娘、夫は訳あって、自分のきょうだいとは長らく疎遠になっていることもあり、夫の定年退職を機に、夫婦2人で話し合って、お墓を建てた。しかし仮に夫が先に亡くなった場合、妻はお墓に夫の遺骨を安置するだろうが、後に亡くなった妻の遺骨は誰が納骨するのだろうか。

 甥(おい)や姪(めい)は、おじさんやおばさんと生前に交流があったとしても、彼らが入るお墓がどこにあるのかを知らなくても不思議ではない。ましてや疎遠だった場合、姪や甥は遺骨の引き取りを拒否する可能性は高い。年老いた80代の妹が独り身の姉の遺骨の引き取りを拒否した事例もある。国民年金でほそぼそと暮らしている妹にとって、姉の遺骨を納骨する費用を捻出するのは容易ではなかったようだ。

 もちろん、さまざまな事情があったとしても、無縁遺骨として納骨するのは抵抗がある人もいる。ここ数年、ゆうパックで骨つぼごとお寺に送る「送骨」が広がりをみせている。3万円程度かかるが、お寺に合葬されるので、高額な費用をかけられない、遺族が高齢で納骨に行けない、遺族がいないなどの理由で利用されている。

 誰が死者を弔うのか。誰に死後を託すのか。「ひとり死」時代では、弔われない遺骨がこれからも増加していくだろう。

 ◇

小谷 みどり(こたに・みどり)

シニア生活文化研究所所長。2018年末まで第一生命経済研究所に25年余り勤務。大阪府出身。博士(人間科学)。専門は生活設計論、死生学、葬送問題。国内外のお墓や葬儀の現場を歩き、その実態や死生感の変化などを著書などで伝えている。最近の著書は『<ひとり死>時代のお葬式とお墓』(岩波新書)、『ひとり終活』(小学館新書)、『没イチ』(新潮社)など。奈良女子大学、立教セカンドステージ大学で講師をするほか、身延山大学、武蔵野大学の客員教授も務める。

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