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国際博物館会議京都大会と京博を結んだキーワードとは 

主任研究員が語る「京博寄託の名宝」展のコンセプト

更新日:2019年06月12日

 京都国立博物館で8月14日から開催される「京博寄託の名宝―美を守り、身を伝える―」展のテーマはなぜ「寄託」なのか。日本で初めて開催される国際博物館会議(ICOM)京都大会と展覧会の結びつきを京博の担当学芸員、呉孟晋(くれ・もとゆき)主任研究員に聞きました。

 この展覧会は、世界の博物館関係者約3000人が一堂に京都に集まる国際博物館会議が9月に日本で初めて開かれるのを記念して、当館の特別企画として展示させていただくものです。ICOMという団体名になじみがないかも知れませんが、国連やユネスコと協力関係を持ち、世界の博物館関係者のなかでは最も有力な組織です。

 そこで京都の魅力をどのような展示でお伝えすればよいかを考えたとき、手がかりとしたのはICOM京都大会のメインテーマ「文化をつなぐミュージアム―伝統を未来へ―」でした。この「つなぐ」という言葉、英語の「hab」という言葉から何か考えることはできないかと知恵を絞りました。
 つまり京博にとって「つなぐ」ということは、どういう意味合いを持つのかということです。その答えは「寄託」ではないかと考えたのです。

 「寄託」という言葉も一般の方にはなじみが薄いかもしれません。簡単に説明しますと、美術品などの文化財を持つ所蔵者がその文化財・美術品などを博物館に預けることです。預かった文化財などは博物館が管理して展示に活用しますが、文化財の所有権はそのまま所蔵者にあります。この点が博物館に文化財を寄付して博物館の所蔵とする「寄贈」との大きな違いです。
 所蔵者、博物館、来館者を「つなぐ」寄託制度は、それぞれにとってメリットがある「三方よし」の制度と考えられています。

京都国立博物館 呉孟晋(くれ・もとゆき)主任研究員

 所蔵者にとっては、所有する大切な文化財・美術品が博物館の収蔵庫など保存に適した環境で保管されるため、後世まで長く伝えることができます。われわれ博物館の学芸員にとってよいことは、名品を間近にみることができ、展示や研究に活用できることです。また来館者にとっては、文化財などが個々の所蔵者の手もとにありますと、時間や場所の問題もあって、なかなか目にする機会が限られます。しかし、博物館にあれば一堂に展示する企画展などで名品に出会える機会が増えるというメリットがあります。

 「寄託制度」は当館の成立にも深い関わりがあります。約120年前、京都や奈良、関西にある神社や寺院が所蔵する宝物を当館に預けることを推奨した経緯があるからです。ICOM京都大会が開かれるこの機会に、観光客や文化財に関心のある方に、この寄託制度を広くお伝えするべきではないかと考えるに至ったのです。

 今回の展示出品数は146件。うち国宝39件、重要文化財63件です(5月末時点)。
 京の社寺に伝わる陶磁器、京都の寺院にかつて掛けられあがめられた肖像画、平安時代の美術の粋を集めた藤原仏画、初期狩野派の名作、京都の寺院障壁画、京都の仏像・神像、名刹に伝わる中国・宋元の名画、社寺が伝えた珠玉の漆器、金属工芸、染織、考古など、京博の約6400件の寄託品のなかから各分野のえりすぐりの名品を展示いたします。

(聞き手・上林格)

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