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誰とお墓に入りますか? 血縁だけでない「つながり」も 

小谷みどりが斬る! 「ひとり死」時代の葬送と備え(11)

更新日:2019年06月25日

 戦後70年以上が経過したのに、お墓の話になると、多くの人が戦前の思想にワープしてしまう。

 娘夫婦と暮らす二世帯住宅に二つの名字の表札がかかっているのがおかしいとは思わないのに、名字の異なる娘が一緒にお墓に入れないと思い込んでいる人は多い。娘も息子も親からみれば1親等、きょうだいは2親等なので、名字が何であれ、公営墓地やメモリアルパークと呼ばれる民間霊園であれば、一緒に入ることは何の問題もない。

 寺院墓地の場合、お寺によっては一緒に入れる範囲を決めているところもある。例えば、実子と配偶者のみが同じお墓に入れると定めている都内のお寺で、こんなトラブルがあった。母の兄が数年前に亡くなり、その納骨をした男性は、ある日、お寺から「お墓を撤去して合葬するが、撤去されたくなければ900万円を払ってほしい」という通知を受け取った。

「配偶者か実子のみ」という線引きの限界

 母の兄には子どもがいなかったが、男性は幼いころから可愛がってもらったため、おじさんの死後、お寺の年会費を代わりに負担し、年に数回の墓参を続けてきたという。だが、このお寺の規則では、実子ではない男性がお墓を継承することはできないため、無縁墓として撤去するか、新しくお墓を建てるのに必要な永代使用料900万円を支払うか、という選択肢となる。それをお寺は提示してきたのだ。

 「配偶者と実子しかお墓に入れない」という考え方は、これからの社会において破綻(はたん)しつつある。そもそも配偶者も実子もいない人が急増していることもある。配偶者や実子がお墓を継承するのが当たり前、ではなくなるのだ。

 「偕老同穴(かいろうどうけつ)」という言葉がある。夫婦がともに老い、死後は同じお墓に葬られるという意味だが、こうした考えを支持しない人もいる。夫婦でも先祖でもない人と一緒に入りたいという考えもそのひとつだ。自治体が運営し、市民であれば誰でも入れる公営の共同墓もあれば、市民団体、お寺やキリスト教会などが運営する共同墓もある。いずれにしても血縁を超えた人たちで入る共同墓は、子々孫々での継承を前提としていない点が特徴だ。

鹿児島県宇検村には集落ごとに「精霊殿」と呼ばれる共同納骨堂があり、家の墓から改葬する動きがあるという(小谷みどり撮影)

生協や地域の「脱血縁墓」の試み

 こうした脱血縁墓のなかには、生前のつながりで、死後の共同性を模索する動きもある。例えば1999年に設立された兵庫県高齢者生活協同組合は、県内で5600人ほどの会員を抱える組織だが、2014年、17年にそれぞれ別の民間霊園に共同墓を建立した。「ひとりぼっちの高齢者をなくそう」「寝たきりにならない、しない」というテーマを掲げ、老いを地域や会員同士で支えあう仕組みを構築してきたが、死後もつながりたいという会員からのニーズが高まってきたのがきっかけだという。

 生前にお墓を契約する会員が増えてきたことから、この組織では「永遠の会」を結成し、契約者と遺族を結ぶ会として、年に4回、ランチ会や合同慰霊祭など、会員同士の親睦を図っている。同じお墓に納骨されているという観点からみれば、「永遠の会」は遺族の共同体だが、いずれは自分もここに入るという観点では、死後の共同体であるともいえる。

 鹿児島県奄美大島の宇検村では、集落ごとに「精霊殿」と呼ばれる共同納骨堂を新たに建て、〇〇家の墓から改葬する動きがある。納骨堂の毎月の清掃は集落の住人が持ち回りで担当する。8月の送り盆には、共同納骨堂前の広場で盆踊りがおこなわれる。過疎化が進み、各家庭で先祖の墓を守ることが難しくなったことが背景の一つにある。

 「死者が見守ってくれている」という思いは、私たちにとって生きる原動力につながる。しかし「ひとり死」が当たり前の時代になると、お墓を子々孫々で継承することが困難になる。死者の尊厳をいかに社会全体で守るかが問われている。

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小谷 みどり(こたに・みどり)

シニア生活文化研究所所長。2018年末まで第一生命経済研究所に25年余り勤務。大阪府出身。博士(人間科学)。専門は生活設計論、死生学、葬送問題。国内外のお墓や葬儀の現場を歩き、その実態や死生感の変化などを著書などで伝えている。最近の著書は『<ひとり死>時代のお葬式とお墓』(岩波新書)、『ひとり終活』(小学館新書)、『没イチ』(新潮社)など。奈良女子大学、立教セカンドステージ大学で講師をするほか、身延山大学、武蔵野大学の客員教授も務める。

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