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あえて「55歳以上」向けの電子マネー、その理由は…… 

なぜ今キャッシュレス? 企業の取り組み(1)イオン

更新日:2019年07月16日

 消費増税のポイント還元策などとあわせて、「キャッシュレス決済」が話題になっている。なぜ今、キャッシュレスが注目されているのか? 企業の狙いは何か? 生活者にとっては、どんなメリット・デメリットがあるのか? 企業の取り組みを紹介するシリーズを始める。第1回目はイオン(本社・千葉市)。キャッシュレス業界への参入が相次ぐなか、同社は7月、2007年から始めた電子マネー「WAON」カードの付与ポイントを2倍に引き上げた。将来的には、電子マネーの利用を促してキャッシュレス決済比率を8割に伸ばしていく方針だという。

キャッシュレス化6割 電子マネーが牽引

 現金をチャージして利用するWAONは、買い物の度にポイントが付与される。シニア向けや地域限定カードなど種類も豊富で、全国48万1千カ所の店や施設などで利用できる。20074月に誕生して以来、発行数は5月末までに累計7637万枚に達した。

 7月から、氏名や住所など個人情報を登録した会員には200円の買い物ごとに従来の2倍の2ポイントを付与する優遇を始めた。会員登録しておけば、盗難や紛失時に、オートチャージ機能も含めた利用停止の手続きができる。会員数は非公表だが、月に数千枚、年間数万枚のカードが「拾得物」として届けられているという。

 イオン広報部によると、本州・四国の「イオン」「イオンスタイル」を経営するイオンリテールの店舗(全国400店)でのキャッシュレス決済率は約6割。そのうちクレジットカードが約3割、電子マネー「WAON」が約3割で、残りはほぼ現金になる。クレジットカード決済の比率はここ20年ほど約3割と一定で、12年前に誕生したWAONが近年のキャッシュレス化を牽引(けんいん)している。

 キャッシュレス化を推進するメリットは企業にとって大きい。WAONユーザーの利用頻度は月平均9回以上に及ぶうえ、現金決済に比べて購入平均単価も高い。顧客の買い物傾向をつかんだサービス展開も可能にしている。レジを担当する従業員の省力化にもつながる。加えて、経済産業省から、シニアと子どもに対してキャッシュレス化を促進するよう要請されている。従来は現金を使う頻度が高い層だ。

WAON推進部 上山政道部長

ターゲットはシニア層 55歳から囲い込み

 イオンは、65歳以上を対象にした電子マネー「ゆうゆうWAON」を2009年に発行。3年後の2012年には、カード保有資格を55歳以上まで引き下げた「G.G WAON(G.Gとはグランド・ジェネレーションの略)を発行した。毎月15日の「G.G感謝デー」に 5%割引の特典をつけ、「一番お得なカード」として宣伝してきた。年齢を引き下げたのは、「シニア」という垣根をできるだけ意識せずに入会する人を増やすのが狙いだ。

 イオンがシニア向け電子マネーを発行する背景には、物販売り上げの大半をシニア層が占めていることがある。キャッシュレス決済を拡大するうえで、ターゲット層となっている。
 一方、シニア層にとっても電子マネーの利便性は高い。カードをかざす決済方法は、レジ精算の所要時間を短縮し、小銭を使わないなど買い物時のストレスも大きく減らせる。チャージ金額の上限設定を上手に使えば、浪費防止にもつながるという。

 WAON推進部の上山政道部長は「退職すると後払いのクレジットカードは使わず、手もとにある現金の範囲内でチャージをして電子マネーを使う人が増える」と分析。クレジットカードのオートチャージ機能にひもづけている利用者だと、上限を3千~5千円に設定している人が目立つという。

種類が数多いイオンのWAONカード(画像は一部処理しています)

「ご当地WAON」と「55歳以上」の一体化

 もう一つ、イオンが利用拡大をはかる電子マネーが「ご当地WAON」だ。
 同社と包括提携協定を結んだ各自治体では、子育て支援や観光振興など地域貢献ができる「ご当地WAON」を発行している。2009年から運用が始まり、全国116自治体で148種類のカードが発行されている。カード利用金額の一部は地域に寄付金として還元され、累計額は15億円を超えた。

 「ご当地WAON」の特徴は、カード名や券面のデザイン、「地域ポイント」のサービス内容が地域の特徴とニーズに合わせて決められることだ。例えば、ウォークラリーやボランティアなどの地域活動に参加すると「地域ポイント」がたまる。地域ポイントは地域の商店街で現金代わりに利用できるし、WAONポイントと交換もできる。ポイントによる売り上げが毎月数百万単位にのぼる商店街も現れている。

 55歳以上の利用者には、「ご当地WAON」に「G.G WAON」の特典を付与した「一体化カード」への切り替えを勧め、さらなる電子マネーの利用を促している。

 千葉市は720日から、市内9カ所のイオングループ施設に来店ポイント端末を設置し、ご当地WAONの「ちば風太WAON」をかざすと、千葉市の地域ポイント「ちばシティポイント」が付与されるサービスを始める。ちばシティポイントは市の特典品やWAONポイントとの交換ができる。

 上山部長は「市民にとってWAONがお得なカードという認識が高まれば、全世帯に普及する可能性もある」と期待を寄せている。

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