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親世代より、現役世代がお金をためにくい「五つの要因」 

ファイナンシャルプランナー深田晶恵さんに聞く「老後のお金」の備え方(1)

更新日:2019年07月22日

 「公的年金だけでは老後資金が2千万円足りない」とする金融庁の報告書が、世間を騒がせています。「2千万円なんて無理」と思った人も多いのではないでしょうか。報告書は、多くの人が抱えていた老後の不安を浮き彫りにしました。しかし、怖がっているだけでは何も始まりません。老後に備えるために、今から自分でできることは何か。先月、『まだ間に合う! 50代からの老後のお金のつくり方』を出版したファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんに、「老後のお金」を賢くためる方法を聞きました。

 FPとして4千件以上の家計相談を受けてきて、「老後のお金」に不安を持っている人が年々増えていると感じます。50代で定年のゴールが見えてきても、子どもの教育費や住宅ローンの返済を抱えて、老後資金をためられていない世帯も多いのが現状です。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、世帯主が50代で「貯蓄がない」と答えた層が、2004年には8.1%だったのが、16年には14.8%に増えています。

 日本の年金制度は、現役時代の収入を100%保障する設計ではありません。今も昔も、年金で足りない分は、現役時代にためたお金を取り崩して生活することに変わりはありません。しかし、今の現役世代が70代以上の親世代と大きく違うのは、直面している経済環境の厳しさです。個人の責任だけとは言えない社会的・経済的な要因で、親世代よりもお金をためにくい状況にあるのです。

年々減り続ける「手取り年収」

 そこで、私が考える「五つの要因」を見てみましょう。

 一つ目は「手取り年収の減少」です。「手取り年収」とは、額面年収から、所得税・住民税と年金や健康保険などの社会保険料を差し引いた金額のこと。手取り年収が下がっているのは、毎年のように税金や社会保険料の負担が増えているからです。

 例えば、配偶者と大学生の子ども2人の扶養家族がいる人の場合、額面年収700万円の手取りは、02年は587万円だったのが、17年は537万円。15年間で50万円も減っているのです(18年と19年は横ばい)。

 二つ目は「長引く超低金利で預金の利息が期待できないこと」です。70代以上が働き盛りのころは、今よりも金利が格段に高く、預貯金や貯蓄型保険で安全・確実にお金を増やせました。しかし、超低金利が続く今、安全で確実な金融商品でお金を増やすことはできません。

 三つ目は「教育費の高騰」です。大学進学にかかる費用は、約40年間で私立大は3倍近くに、国立大は約5倍に増えています。その一方、公務員の初任給の伸びは約2倍。給料の伸び以上に大学の授業料が上がっています。教育資金を用意したつもりでも、実際は予想以上にかかるケースも多いのです。

 四つ目は「高額な住宅ローンを長く借りている人が増えたこと」です。住宅ローンの金利は低いですが、都心などの物件価格は上がっています。また、頭金がなくてもローンが組めるため、多額のローンを組むことが珍しくなくなっています。定年時に退職金で一括返済をして老後資金を減らしてしまう人や、定年後も返済の負担が残る人もいて、老後の生活を圧迫しかねません。

 五つ目は「バブル世代の50代は消費好き」という家計の問題です。もちろん人によって違うので一般化できませんが、好景気のバブル期を経験した50代は、他の世代より消費が好きな傾向があります。

危機感を持つことから

 上記の「五つの理由」は、自分でコントロールできることと、できないことに分けられます。税金や社会保険料の負担増、超低金利の二つは「外的な要因」なので、対策を立てるのは難しいでしょう。しかし、教育費や住宅ローン、消費の仕方という残り三つは、自分でコントロールできる可能性があります。

 現役世代を取り巻く経済環境は厳しいですが、嘆いているだけでは何も始まりません。まずは、「このままではまずい」と危機感を持つことが老後資金づくりの第一歩です。

 次回以降、具体的な対策や「老後資金は2千万円必要なの?」という疑問にお答えします。

 朝日新聞Reライフプロジェクトは、822日(木)午後46時、東京・築地の朝日新聞東京本社で深田さんの講演会「50代から知っておきたい!誰もができる 退職金・年金を減らさないコツ」を開きます。読者会議メンバー限定、定員100人。入場無料。応募者多数の場合は抽選します。詳細はこちら

深田 晶恵(ふかた・あきえ) ファイナンシャルプランナー(CFP)。生活設計塾クルー取締役。1967年生まれ。外資系電機メーカー勤務を経て96年にFPに転身。現在は、特定の金融機関に属さない独立系FP会社である生活設計塾クルーのメンバーとして、個人向けコンサルティングを行うほか、メディアや講演活動を通じてマネー情報を発信している。23年間で受けた相談は4千件以上で、「すぐに実行できるアドバイスを心がける」をモットーにしている。最近の著書は『まだ間に合う! 50代からの老後のお金のつくり方』(日経BP)、『サラリーマンのための「手取り」が増えるワザ65』(ダイヤモンド社)など。朝日新聞朝刊Reライフ面「なるほどマネー」や、土曜別刷りbe「知っ得なっ得」なども担当。

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