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腸内を知れば出会える? あなたに合った食べ物や薬 

<「腸存共栄」の未来>慶大特任教授/メタジェン代表 福田真嗣さんインタビュー(3)

更新日:2019年07月30日

 腸内フローラを独自に解析・評価する研究でこの分野の先端を走る慶応大特任教授の福田真嗣さんに、最新の研究にまつわる興味深いお話を伺いするシリーズ。3回目は「自分に合う食べ物の見つけ方」です。


抗生物質を使いこなすには 

 私たちと共生している腸内細菌たちを人為的にコントロールするのは、そう簡単ではありません。例えば抗生物質。身体に悪影響を及ぼす病原菌をやっつけるためには良いツールですが、服用すると病原菌だけではなく、他の菌も殺してしまいます。

 そのため抗生物質を飲むと、それまで腸内環境を維持していた菌たちまで一緒に死んでしまい、結果として腸内細菌叢(そう)のバランスが崩れてしまうこともあるのです。それが体に悪く作用すれば、二次的な病気につながってしまう場合だってあります。

 このように抗生物質は、良い面と悪い面を併せ持っています。ですが、どんな腸内環境タイプの人が、どの抗生物質をどれくらい飲めば、腸内環境はこう変わる、というデータさえあれば、抗生物質も腸内環境を制御する上で非常に有用なツールの一つになるはずです。

同じヨーグルトを2週間食べ続ける

 私は、自分のおなかの調子が悪くなった時、正常な状態に戻す方法を知っています。これは、私が今までの経験から培った知恵です。みなさんも、日常的に腸内環境を意識した生活を心がければ、自分にはこんなやり方が合うということを経験的に知ることができるでしょう。特に自分の腸内環境に合う食べ物に出会えた人はラッキーです。でも、その食べ物は万人に合うわけではありません。その人の腸内環境のタイプに依存した組み合わせであることが、近年の研究で分かってきました。

 たとえば、ヨーグルトの選び方について私がお勧めしているのは、同じ銘柄の製品を2週間継続して試すということ。これは、要はスクリーニングです。同じ製品を食べ続けてみると、2、3日目くらいに、おなかが少しぐるぐるすることがあるかもしれません。でも、ともかくやめないで2週間は食べ続けてみる。それで調子が良くなったのなら、そのヨーグルトはその人の腸内環境に合っているということになります。2週間食べ続けても何の変化も感じられない場合は、改めて別の銘柄の製品を試してみる。そんなことを、自分に合う製品に出会えるまで繰り返すことが重要なのです。もちろん、腸内環境を改善する食品は、ヨーグルトだけではありません。大麦などの穀物、昆布やワカメなどの海藻も、水溶性食物繊維が多く含まれているので、腸内環境の改善が期待できる食品といえます。

「個人差」が生じる理由

 しかし、2週間試すまでもなく、始めから自分に合う食品が分かるならばうれしいですよね。「あなたの腸内環境タイプには、これがいいですよ」というように。それを実現するために私たちは、たくさんの人の便を集め、そこに含まれる腸内環境のデータを解析しています。

 食品や医薬品メーカーなどとの共同研究では、あるサプリメントやヨーグルトが、どんな腸内環境タイプの人に効果的かを臨床試験で調べ、腸内環境データを集めています。

 そうして得られたデータから、独自の腸内環境データベースを構築。科学的なエビデンスを蓄積した上で、皆さんの腸内環境を調べて、それぞれの腸内環境に合う食品やサプリメントの推奨製品を提案することができれば、とても有用だと考えています。

 食品や薬の効果の現れ方については、個人差があると言われてきました。例えばあるサプリメントを摂取した100人と、摂取していない100人を比べ、摂取した100人の方の60人くらいに何らかの効果が確認できたならば、統計学的有意差をもってそのサプリメントには効果があったと言えるでしょう。しかし、サプリメントをとった人たちの中でも、40人には効いていないわけです。これまでは、それを個人差と捉え、ある程度は仕方がないことだと見なしてきました。

 しかし、今後の研究の進展で、このサプリメントの効果が腸内環境を介して発揮されたものだと判明すれば、これまでは単に個人差だと見なされてきた効果の現れ方が、実は腸内環境の違いによるものだと結論付けられるケースも出てくるでしょう。

腸内を知ることは、自分を知ること

 様々な腸内環境のタイプに合わせた商品開発が進められれば、消費者も自分の腸に合った製品を選べるようになり、それぞれに効果を実感できる社会が実現可能になるでしょう。そのためにも、まずは自分の腸内環境のタイプを知ることが重要なのであり、それこそが自分を知ることの第一歩だと言えると思います。

(聞き手・澤田歩)

福田真嗣(ふくだ・しんじ)

慶應義塾大学先端生命科学研究所特任教授・メタジェン代表取締役社長CEO
1977年生まれ。2006年、明治大学大学院農学研究科博士課程修了。博士(農学)。理化学研究所基礎科学特別研究員などを経て、2012年より慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授。2019年より同特任教授。2013年文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞。2015年文部科学省科学技術・学術政策研究所「科学技術への顕著な貢献2015」に選定。同年、ビジネスプラン「便から生み出す健康社会」でバイオサイエンスグランプリにて最優秀賞を受賞し、株式会社メタジェンを設立。同年、代表取締役社長CEOに就任。専門は腸内環境制御学、統合オミクス科学。著書に「おなかの調子がよくなる本 自分でできる腸内フローラ改善法」など。

 近年、遺伝子解析とデータ分析が飛躍的に進んだことで、腸が全身の健康に及ぼす影響が明らかになりつつあります。「21世紀は腸の時代」ともいわれ、免疫や生活習慣病、そして脳の健康との関係も指摘されています。連載「腸サイエンスの時代」では、専門家へのインタビューを通じて、最新の研究・知見や読者の皆さんの疑問への答えをお伝えしていきます。

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