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老後資金づくりは家計の「見える化」から 

ファイナンシャルプランナー深田晶恵さんに聞く「老後のお金」の備え方(3)

更新日:2019年08月07日

 これまでの連載では、現役世代がお金をためにくい要因や、世間で話題になった「老後資金2千万円問題」や「収入ダウンの崖」について説明してきました。今回は、老後資金づくりのための基礎として、家計の現状を把握する「見える化」について解説します。

 お金がたまる家計にするには、年間の「決算」をして家計の全体像を把握することが第一歩です。決算というと、「家計簿をつけていないから無理」と思う人がいるかもしれませんが、私が考案した「家計の年間決算シート」は、家計簿をつけていなくてもできる仕組みです。

 家計支出の出どころは三つで、「お財布」か「銀行口座引き落とし」、「クレジットカードなど」のいずれかです。このうち「口座引き落とし」と「クレジットカード」は、通帳や明細を見れば、使った金額が分かります。家計簿をつけていないと把握できないのは「お財布支出」だけ。そこで、お財布から出した現金は、何に使ったのかを気にせず、「お財布支出」としてまとめるのがこの決算シートの特徴です。

 

家計簿をつけていなくても大丈夫!

 決算は、年間のお金の出入りをつかむことが目的なので、1000円~1万円単位で記入し、端数は無視して構いません。一つ目のポイントは、支出の項目ごとに「毎月の支出」と「年数回の支出」に分けること。食費や公共料金のように毎月必要な支出は、「毎月」欄に平均額を記入します。固定資産税や交際費のように、毎月ではなく年数回の支出は、「年数回」欄を使います。

 現役時代なら、「年数回」はボーナスから出せますが、年金暮らしにはボーナスがありません。現役で働いている人は、ボーナスをあてにした支出がどれくらいあるのかをチェックしてください。

 二つ目のポイントは、「基本生活費」をきちんと把握することです。住宅ローンの返済額や保険料は、通帳などを見ると分かります。しかし、食費や日用品といった細かな生活費は、日々の記録がないとわからないでしょう。しかし、生活費の内訳を細かく把握する必要はありません。

 「基本生活費」は、お金の出口を二つに分けて考えます。(1)は「口座引き落とし」で、公共料金など口座から引き落とされる支出の合計額。通帳を見れば分かります。(2)は「お財布支出」で、食費や日用品費など、お財布から出ていく現金の合計額です。口座から現金を引き出し、財布に入れた金額を1カ月分、合計して集計します。引き出したお金を何に使ったのか、書く必要はありません。毎月の変動があっても、平均的な金額を記入します。年間支出の合計額を、はっきりさせることを目標にしましょう。

 決算シートに記入していくと、色々気づくことがあるはずです。各項目の「年間合計」を見れば、月々は多額に見えなくても、年間では大きな出費になっているものがあるでしょう。支出項目はあくまで一例で、家計の状況に応じて趣味費、自己投資、美容費など、自由に設定してください。

通信費や保険料に要注意

 「使いすぎかもしれない」と気になる支出項目は、その項目を独立させて決算書に書き込みます。気になる支出項目だけ、レシートをとっておいたり、手帳にメモをしておいたりして、1カ月当たりいくら使っているかを集計すると、たいてい「無駄遣いの温床」になっていることが明らかになります。

 項目ごとに1年の合計額を見ると、過大な出費に気づきやすくなります。一つ一つの支出は数千円でも、「通信費」「保険料」などをまとめて年間合計額で見ると、数十万円にもなることがあります。特に「通信費」は要確認です。固定電話と家族の携帯電話、インターネット接続の費用と、テレビの受信料などを合計すると、月に4万円、年間48万円といった額になる家庭も珍しくありません。

50代は「メタボ」家計も

 定年前の50代は、「メタボ」な家計になっていることが多いです。やみくもに節約をするより、まず現状を把握した上で、「予算をここから毎月2万円減らして頑張ろう」と、項目ごとに縮小してやりくりしてみましょう。支出を月2万円減らせば、年間では24万円の支出減になります。

 50代は生命保険料の支出も多いです。家計の担い手の生命保険料が月2万円弱。さらに月数千円の医療保険やがん保険に夫婦で複数加入し、月4万~5万円の保険料となるケースも少なくありません。年間では48万~60万円にもなります。保険は定年になってから見直せばいい人もいますが、早く見直しておけば、その分老後資金を多くためられます。

 途中でつまずいても気にせず、まずは決算シートを埋めることを目標に、気軽に取り組んでください。このシートを埋めることが現状把握につながり、お金がたまる家計への第一歩になります。「生活費」「保険料」「通信費」の三つを見直すだけでも、支出を減らし、老後資金に回すことが可能です。まず支出を「見える化」するのが大事なのです。

 使ってしまったお金を書き出すのは悲しい作業ですが、決算シートで家計を「見える化」することで、確実に無駄が見つかります。空欄を埋めることを目標に、気軽に取り組んでみてください。50代から年金生活の家計収支を正確に予想するのは難しいものの、老後は明日やってくるわけではありません。時間を味方につけて、できることから取り組んでいきましょう。

 朝日新聞Reライフプロジェクトは、822日(木)午後46時、東京・築地の朝日新聞東京本社で深田さんの講演会「50代から知っておきたい!誰もができる 退職金・年金を減らさないコツ」を開きます。読者会議メンバー限定、定員100人。入場無料。応募者多数の場合は抽選します。詳細はこちら
 また、記事中で紹介した「家計の年間決算シート」は、生活設計塾クルーのホームページでメールアドレスを同社に登録すれば、ダウンロードすることもできます。詳細はこちら

深田 晶恵(ふかた・あきえ) ファイナンシャルプランナー(CFP)。生活設計塾クルー取締役。1967年生まれ。外資系電機メーカー勤務を経て96年にFPに転身。現在は、特定の金融機関に属さない独立系FP会社である生活設計塾クルーのメンバーとして、個人向けコンサルティングを行うほか、メディアや講演活動を通じてマネー情報を発信している。23年間で受けた相談は4千件以上で、「すぐに実行できるアドバイスを心がける」をモットーにしている。最近の著書は『まだ間に合う! 50代からの老後のお金のつくり方』(日経BP)、『サラリーマンのための「手取り」が増えるワザ65』(ダイヤモンド社)など。朝日新聞朝刊Reライフ面「なるほどマネー」や、土曜別刷りbe「知っ得なっ得」なども担当。

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