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長男しか墓を継げない? 無縁墓が急増する本当の理由 

シニア生活文化研究所所長・小谷みどりさんに聞く 講演採録(1)

更新日:2019年10月25日

 シニア生活文化研究所所長の小谷みどりさんによると、「長男しか墓を継げない」と考えている人は多いですが、法律にそういう規定はないそうです。私たちが陥りがちなお墓に関する思い込みと、無縁墓が増えている背景を解説してもらいました。

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  皆さんは「お墓を継げるのは長男だけ」と思っていませんか。自分の子どもが娘しかいなくて結婚したら、無縁墓になると思っている人も多いです。自分の父親が次男や三男だから、入るお墓がない。こういった考えは、全部“思い込み”です。

 人が死んで残すものは、二つあります。お金や家や車などの「相続財産」と、お墓などの「祭祀財産」です。お金や家などの相続財産は、子どもが3人いたら3人で平等に分けることになりますが、墓や仏壇、お墓などの祭祀財産は分けてはダメで、慣習に従って誰か一人が継ぐようにしてください、と書いてあります。民法の規定です。

読者会議サロンで講演する小谷みどりさん=篠田英美撮影

 実は広い「親族」の範囲

 都立霊園などの公営墓地やメモリアルパークには、一緒に入れる人の続柄の使用規則があり、「6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族」と定められています。きょうだいは2親等なので問題ありません。いとこも4親等なので入れます。意外なのが、3親等内の姻族も入れる点です。男性側から見た時の妻のおばさん、女性の側から見るとめいの嫁ぎ先に入れます。これは民法の「親族」の範囲で、実際に一緒のお墓に入りたいかは別ですが、考えられているよりも広いでしょう。

 皆さん不思議と、お墓の話になると戦前の明治民法の考え方に“ワープ”します。戦争が終わって70年もたっているのに、なぜお墓の話だけ戦前に戻るのか不思議ですが、多くの人がそう思い込んでいるからお墓の問題はややこしいのです。

 ただ、例外もあり、お寺は独自に霊園規則を持っているところもあります。都内にも、実子と配偶者しかお墓に入れないと決めているお寺があります。

 墓守が消えていく社会

 今までは、皆が“勘違い”しても何とかなりました。しかし、日本社会は「多死社会」を迎えます。ピークの2038年には約168万人もの人が亡くなると予測されています。わずか20年間で、亡くなる方が23割も増えるのです。お墓が足りなくなると思うかもしれませんが、実は余っています。産まれる赤ちゃんの数が減っているので、むしろ今後は無縁墓だらけになってしまいます。

 背景の一つは、死亡年齢が上がっていることです。2018年に亡くなった女性のうち80歳以上は75%。子どもがいる人の場合、自分が80歳、90歳の時に子どもは何歳になっているでしょうか。日本の葬式は9割が仏式です。もし90歳で亡くなったら、33回忌を誰がやることになるでしょうか。果たして孫でしょうか。早く亡くなったら墓参りが絶えませんが、長生きする人が増えると、死者が早く忘れられるということです。

 さらに、生涯未婚率の上昇も影響します。50歳時点で一度も結婚したとがない人の割合は、男性は1965年に1%だったのが、2015年に28%と、4人に1人は1回も結婚していない。女性も2割弱。お墓があっても、残る家族がいない状況でお墓が守り切れないのです。

世界の潮流は

 日本の問題は、家族の墓を、子ども、孫、ひ孫……と代々継承していくという枠組みにしたことです。このため少子高齢化などの変化に対応できず、無縁墓が増えていきます。ドイツでは、人が死んだら遺体は国家に帰属するという法律があり、無縁墓という概念がありません。子孫がいなくなったら、遺骨は国家が管理します。台湾や韓国も少子高齢化が進んでいるので、墓は自治体で面倒を見る「墓の社会化」が起きています。日本は、家族にお墓を任せるという仕組みが破綻しかかっています。今後、どうしていったらいいのか考えていかなければなりません。

台湾では、花を飾った下に遺骨を安置する環境に配慮した墓が増えている(小谷みどりさん撮影)

 今、お墓を作らないのが世界の流れです。「墓石をどうするか」と言っているのは日本くらいです。墓は山を切り崩して作りますし、火葬はダイオキシンが出るので環境に悪いのです。英国の「ナチュラルデス」は墓石を作らず、土葬にします。参道も作らず、どこにお墓があるのか一見すると分かりにくいです。台湾でも、環境に悪いからと墓石を立てない方向に進んでいて、花の下に納骨するほか、海への散骨も広がっています。欧州では遺骨を残さない方向で、遺体をどうやってきれいに全部なくすのか、冷凍したり液を入れたり、さまざまな開発が進んでいます。20年、30年後に、今の形の石のお墓を維持しようとする国が世界の中で珍しくなってくるかもしれません。

 この記事は、朝日新聞東京本社で2019年9月26日に開かれたReライフ読者会議サロン「考えてみませんか? あなたのお墓の『理想と現実』」の内容を採録したものです。

シニア生活文化研究所所長 小谷みどりさん

 こたに・みどり/1969年生まれ。専門は死生学、生活設計論、葬送問題。国内外のお墓や葬儀の現場を歩き、その実態や死生観の変化などを伝える。第一生命経済研究所に25年あまり勤務。著書に『<ひとり死>時代のお葬式とお墓』(岩波新書)、『没イチ』(新潮社)など。

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