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散骨で「自然にかえりたい」と考える人の落とし穴 

シニア生活文化研究所所長・小谷みどりさんに聞く 講演採録(2)

更新日:2019年10月28日

 前回は「『長男しか墓を継げない』は思い込み? 無縁墓急増の本当に理由」と題し、同じ墓に入れる「親族」の範囲がかなり広いことを教えてもらいました。散骨のような新しい葬送のかたちが増えていますが、注意点もあるそうです。

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読者会議サロンで講演する小谷みどりさん=篠田英美撮影

  一つの墓石の下に皆で入る形が、伝統的なお墓だと思っている人も多いかもしれませんが、火葬して皆で一つの墓に入るようになったのは比較的新しい文化です。今や火葬率は99.9%ですが、火葬率が50%を超えたのは1938(昭和13)年、1970(昭和45)年に79%。半世紀前は5人に1人が土葬で、「○○家の墓」という形はまだ歴史が浅いのです。今でも土葬している地域があり、山梨県甲州市(旧塩山市)や静岡県三島市のほか、北海道、茨城、栃木にもあります。

 墓石に何と刻みたい?

 最近は、墓石に「○○家」と彫らない人が増えています。「○○家」「先祖代々の墓」と彫る決まりがあるわけではありません。「ありがとう」や「Love & Peace」のように、自分が好きな言葉を選ぶ人がいます。皆さんは、どんなメッセージを刻みたいですか。

 「終活」が注目されるようになって、自分が入るお墓を元気なうちに決めようとする人がたくさんいます。メモリアルパークの広告を見ると、「交通至便」「環境よし」「日当たり良好」など、住宅の広告とほとんど同じ。生前にお墓を買う人にとって、お墓は「あの世の住まい」です。40年ほど前までは3世代同居が当たり前だったので、先祖代々の墓に子や孫と入るのは当たり前でした。しかし、現代は高齢者の7割近くが一人暮らしか夫婦2人暮らしで、孫がいても別々に住んでいます。この世の住まいが変われば、あの世の住まいも変わる。核家族化が進み、先祖の墓が遠くにある人も多くなりました。

 ちなみに、「しゅうとめと絶対に同じ墓に入りたくない」という人へのアドバイスは、「誰よりも長生きすること」です。呪文のように、友人や子どもに「一緒の墓には入らない」と言い続けるしかありません。

 

仏間や仏壇は故人と対話の場になってきた。近年は仏壇もない家が増え、故人と向き合う場がお墓参りだけの人も(撮影:小谷みどりさん)

 骨を焼くと、実は……

 「子どもに迷惑をかけたくない」「お墓はいらない」と考え、散骨を希望する人も増えてきました。その理由は「自然にかえれるから」が多いです。しかし、散骨は自然にかえれません。土葬だと分解されて骨は残りませんが、火葬は8001200度で焼くので骨がセラミック化してかなり硬くなります。ハンマーでも壊れず、ミルで粉々にします。散骨しても粉々の骨のパウダーが土にまじるだけです。

 葬送に関する法律は、焼骨(しょうこつ)は墓地以外の場所で埋蔵してはいけない、と規定しています。焼骨とは火葬場から戻ってきたお骨のことです。東日本と西日本で骨つぼの大きさが違うのをご存じですか。東日本は骨を全て骨つぼに入れますが、西日本は片手に載るくらい。小さくて入りきらないので、ほとんど焼骨は火葬場に残され、産業廃棄物になります。

 火葬場から持って帰ってきた骨は、墓地以外に埋めたらダメです。でも、家に置いておくのは何の問題もありません。法律では「埋めるなら墓地に」と書いてあるだけです。ですから散骨は「埋めずにまくので大丈夫」という理屈です。でも、その辺にまくと飛んでいってしまうので、大概の人は海に散骨します。

 ただ、海に散骨をすると、遺族は墓参りが大変になります。日本人はお墓参りの習慣がある人が多いです。散骨する業者は、東経何度、北緯何度にまきました、という証明書をくれます。わざわざ船をチャーターして墓参りをする遺族もいるくらいです。

 墓の機能の一つは、遺骨の収蔵です。もう一つが、死者と生者の対話の場です。お墓で「お父さん」と言ってみたり、好きだった物をお供えしたり。昔の家には仏間があり、故人と“同居”していました。今は仏間や仏壇のない家も多くなってきました。すると、亡くなった人と向き合う場所がお墓しかないのです。ですから、お墓の問題は「こんなはずじゃなかった」と後悔しないように、家族で話し合うことが大切です。

 この記事は、朝日新聞東京本社で2019年9月26日に開かれたReライフ読者会議サロン「考えてみませんか? あなたのお墓の『理想と現実』」の内容を採録したものです。

シニア生活文化研究所所長 小谷みどりさん

 こたに・みどり/1969年生まれ。専門は死生学、生活設計論、葬送問題。国内外のお墓や葬儀の現場を歩き、その実態や死生観の変化などを伝える。第一生命経済研究所に25年あまり勤務。著書に『<ひとり死>時代のお葬式とお墓』(岩波新書)、『没イチ』(新潮社)など。

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