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パーキンソン病が腸から始まるといえる、これだけの証拠 

名古屋大学神経内科准教授・平山正昭さんインタビュー(上)

更新日:2020年02月03日

 高齢化に伴って増加しているパーキンソン病。脳の神経細胞の一部の働きが低下することで、体をうまくコントロールできなくなる病気です。薬物治療で症状を抑えるのが治療の基本ですが、現在のところ根本的に治す方法はありません。どのような人が発症するのか、原因は明らかになっていませんが、近年は腸内細菌の関与を示唆する研究結果が多く報告されています。パーキンソン病患者の診察をする一方、病気の発症と腸内細菌の関わりを研究している平山正昭さん(名古屋大学神経内科准教授)に話を伺いました。

便秘から始まる

 パーキンソン病の代表的な症状は、「手足が震える」「筋肉がこわばる」「動きがゆっくりになる」「姿勢を保てなくなる」の四つです。こうした運動障害が起きるのは、神経伝達物質の一つであるドーパミンが減少するためです。ドーパミンは大脳の下にある中脳に存在する「黒質」という組織でつくられますが、パーキンソン病の人は黒質の神経細胞の中に「αシヌクレイン」という異常タンパク質がたくさんかたまって蓄積することがわかっています。これが原因となって神経細胞が変質し、ドーパミンが減少すると考えられています。 

 パーキンソン病は長い間、脳だけの病気だと考えられてきました。しかし最近の研究では、この病気が腸から始まる可能性が指摘されているのです。

 パーキンソン病の人は運動が障害される以外に、さまざまな全身の症状が出現しますが、特に高い確率で起きるのが便秘や睡眠障害、疲労、排尿障害、感覚障害、抑うつなどです。パーキンソン病の臨床経過をたどると、パーキンソン病の人は発症する20年前から便秘が始まり、10年前から睡眠障害の一つで悪夢とともに、大声で寝言を言ったり、体を動かしたりするレム睡眠行動異常、5年前からうつ症状が始まる傾向があります。

便通が1日1回未満の人は発症確率が4倍

 パーキンソン病の人の腸管にある神経叢(神経の集まり)にはほぼ100%、異常タンパク質である「αシヌクレイン」が存在しています。そこで考えられているのが、腸で発生したこの異常タンパク質が迷走神経を介して脳へと徐々に移動していき、黒質に到達することで神経細胞をこわし、パーキンソン病を発症させるという仮説です。迷走神経は、腸管の運動などを支配する脳神経の一つで、腸から脳に到達します。

 実際に、十二指腸や胃の手術で迷走神経を切除した人は、パーキンソン病を発症する確率が切除していない人に比べて半減することがわかっています。

  さらに、この異常たんぱくである「αシヌクレイン」を過剰に発現させた実験用のマウスをつくり、無菌状態で育てるとパーキンソン病を発症しないのに、パーキンソン病患者の便を移植すると、病気が重くなることもわかっています。

 また、便通が1日1回未満の人は、2回以上の人に比べて4.1倍パーキンソン病になる確率が高い、潰瘍(かいよう)性大腸炎の人はパーキンソン病の発症率が1.41倍になる、手術で虫垂を切除した人は、していない人に比べて2割近くパーキンソン病の発症率が低い、など、腸と病気の発症が関連していることを示唆する報告がたくさん出ているのです。(談)

平山正昭(ひらやま・まさあき)

 1984年岐阜大学医学部卒。2007年から名古屋大学医学部神経内科講師、2010年から同大学予防早期医療創成センター、医学部保健学科准教授。愛知県パーキンソン病友の会顧問なども務める。心臓の交感神経機能の検査「MIBG(心筋)シンチグラム」によるパーキンソン病の診断方法の開発にも携わる。

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