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高齢者に優しい集合住宅、追求したら…「多世代で助け合う」 

住まい探し 人生探し(1)/コーポラティブハウス「おほちの杜」(大阪市)

更新日:2020年02月07日

 高齢になったとき、漠然と思い浮かぶさまざまな不安。「もし、身体が弱って自立した生活が送れなくなったときに頼れる人がいなかったら?」「外出の機会が減り、社会から孤立してしまったら?」。このような高齢者特有の「身体的・精神的不安の連鎖」を、どのような住まいによってサポートしていけるでしょうか?

 今回紹介するのは、身体的なケアを段階的に受けられるしくみと、多世代共生の助け合いのコミュニティが共存する高齢者に優しい集合住宅「おほちの杜」です。

 「集まって住まうこと」のあるべき形を提案してきたアトリエ・ホロニカ一級建築士事務所の中村清久さんと、株式会社ライフデザインインターフェイスの中村眞理子さんに、「おほちの杜」で実現した丁寧な高齢者ケアのしくみについて伺いました。

これまでと同じ生活を、同じ場所で続けられる安心

 「おほちの杜」は、高齢者に焦点を当てて計画した集合住宅です。地上11階建ての建物の中にコーポラティブハウスと高齢者専用シェアハウス、デイサービス、訪問介護事務所、居宅介護支援事業所が共存しています。つまり、住居(暮らし)と福祉施設(サポート)が一体化した建物です。

 高齢者に焦点を当てたのは、今から20年ほど前。自分の両親が高齢になっても、ケアを受けながら安心して暮らし続けられるしくみはないかと考えたのがきっかけでした。現在は高齢者の孤独死や引きこもりが問題になっていますが、高齢者が社会と関係性を保ちながら自立した生活を送れる環境を整えることが、これからの社会的なニーズとも一致してくるのではと当時から感じていました。

お話を伺ったアトリエ・ホロニカ一級建築士事務所の中村清久さん(右)と、株式会社ライフデザインインターフェイスの中村眞理子さん

 おほちの杜では、住宅と福祉施設が組み合わさることにより、住人が必要に応じて適切なケアを受けられる環境が整っています。たとえば、コーポラティブハウスもしくは高齢者専用シェアハウスに住み続けながら、建物内にあるデイサービスや訪問介護サービスを利用するという形です。

 同じ建物の中で必要なケアを受けられ、これまでと同じコミュニティの中で生活を続けられることは、身体的にも精神的にも大きな安心に繋がるのではないでしょうか。

デイサービスの居間。外からの自然光が入り、とても心地よい空間になっている。

高齢者専用シェアハウスの一室

本当に必要なケアを、丁寧に考えていく

 介護、日常の食事、見守りなど、その人の状況によってさまざまなケアのニーズが存在します。これらに対して介護保険で適用できる範囲はかなり限られているため、おほちの杜の福祉施設では、介護保険適用対象外のサービスも柔軟に取り入れています。

 たとえば、「デイサービス」と「訪問介護」は介護保険対象内のサービス。食事を自宅まで配達する「お食事お届け便」、コーラスや手芸、習字を楽しむ交流会「カルチャー倶楽部」、住宅で生活する際の身体的負荷を軽減する「福祉リフォーム・住宅改修」などは介護保険対象外のサービスです。このように多様なサービスを用意することで、住人が抱える“日常のちょっとした困りごと”まで丁寧にサポートできるのです。

 これらのサービスは外部の方も利用可能です。デイサービスの一環で利用できる施設内の食堂や居間は、今では近隣に住む地域住民の溜まり場にもなっているんですよ。

デイサービスでは、脳と身体を動かす独自のプログラムを実践している。

多世代混在が生む助け合いの化学反応

 おほちの杜の住宅部分は、「コーポラティブハウス」という住宅形式を取っています。コーポラティブハウスとは、住人同士が主体となって事業計画を立て、土地の取得、建築の設計、工事の発注などを協同で行ない住宅を取得する方法です。マンションなどの分譲住宅とは異なり、住宅の面積や内装、それに伴う建築工事費等を住人が自ら決められるため、大量に供給されるワンルームやファミリータイプの間取りに当てはまらない家族がコーポラティブハウスを選択することも多くあります。

 たとえば、ディンクス(共働きで子どもを意識的に持たない夫婦)、子育てを終えた夫婦、リッチな単身世帯、シングルマザー、大家族など、さまざまな家族のかたちが同じ建物の中に混在しているのがコーポラティブハウスの特徴です。

コーポラティブハウスでは、それぞれの世帯の希望の間取りを実現している

 集合住宅は住人同士の繋がりが希薄になりがちだと言われますが、おほちの杜は住人同士が共同で成り立っているという意識が強く、多世代の住人が混在し助け合いのコミュニティを形成しています。親が帰宅するまで高齢者世帯が子どもを預かったり、貰い物をみんなに配ったりと、昔日本にあった「貸し借りのコミュニティ」のような関係性が生まれることもしばしば。さまざまな世代との関わりの中で、社会との接点を保ちながら、個人の人格が尊重された暮らしを続けられることが、コーポラティブハウスの一つの良さだと感じています。

 住環境と福祉サービスのプログラムの効果なのか、高齢者の方はみなさんお元気で介護度が上がらず、変な言い方ですが元気なまま老衰して亡くなられる方が多いです。人生を全うされたといいますか。

 もちろん途中で病院に移ってしまう人もいますが、おほちの杜が終の棲家として選ばれる。そのような環境を提供できているのは嬉しいことですね。

基本情報

●物件名:おほちの杜
●提供サービス:住宅提供(コーポラティブハウス)、福祉サービス(高齢者専用シェアハウス、デイサービス、訪問介護、お食事お届け便、カルチャー倶楽部、福祉リフォーム・住宅改修(介護保険対象内外のサービスが混在))
●設計・施工者、事業者: アトリエ・ホロニカ 一級建築士事務所(設計)、株式会社ライフデザインインターフェイス(福祉サービス)
●竣工:2011年
●物件数:19(コーポラティブハウス)、4(高齢者専用シェアハウス)
●費用例:約16,790,000円(約36㎡)、約40,260,000円(約88㎡)、約54,020,000円(約119㎡)、約61,650,000円(約117㎡)

●住まいのこだわりポイント
〈趣味・価値観を生かした点〉
・自由設計の間取り・内装
居住者が自分の生活に合わせ、希望に沿った住宅を実現できる。
・多世代が関わりを持ちながら生活できる
住民同士が共同で成り立っているという意識が強く、比較的早い段階でコミュニティが形成される。
〈機能性〉
・必要に応じたケアを受けられる
高齢者専用シェアハウス、デイサービス、訪問介護事務所、居宅介護支援事業所があるため、高齢になってもケアを受けながら安心して生活できる。

●連載「住まい探し 生き方探し」について

人生100年時代。退職したとき、子どもが巣立ったとき、パートナーが旅立ったとき、生涯独身を決意したとき、サポートが必要になったとき……。さまざまな場面で、住まい方を考えるとともに、自分の生き方を振り返るタイミングが訪れます。
住まいは多様化していますが、大事なのは自分の軸。「住まい方を決めることは、生き方を決めること」。人生後半を前向きに生きるためのヒントとなる住まい方を紹介していきます。

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