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同窓会は「脳に良い」 昔の記憶が刺激に 

精神科医・保坂隆さんに聞く「同窓会の効用」(上)

更新日:2018年07月25日

同窓会の効用を説く精神科医の保坂隆さん
 「同窓会は脳に良い」と言うと、意外に思われるかもしれません。でも、それは医学的にも根拠のある話なのです。

 50代になると、不思議と同窓会の誘いを受けることが増えます。大学、高校、中学、小学校と、様々な時代の同窓会に出て、過去の記憶をさかのぼるうち、誤った自分像に気付くことがあります。

 思い出話に花が咲くうち「違うよ、保坂。あの時おまえは補欠だっただろ」などと、思い違いを指摘される。若い頃の自分像は、無意識のうちにちょっと美化されていたり、誤解からゆがめられたりして記憶されがちなのです。でも、そうした誤った記憶は、同窓生たちの言葉が上書きしてくれます。

 いやな思い出が引っかかって、同窓会の誘いを受けても参加をためらってしまう人もいます。でも、ひょっとするとそれは誤った記憶なのかもしれません。勇気を出して出席してみれば、誰もそんなことは問題にすらしておらず、心配は取り越し苦労だったと気付く。そんな体験をした人は、少なくないのではないでしょうか。

 50代のころ、私は努めて昔の友達に会いました。今はもうない小学校の跡地など、思い出の地も巡りました。そうして記憶の点と点をつなげていく営みは、自分史を編集する作業のようでした。その過程では、かつて自分がやりたくてもできなかったこと、果たせなかった夢などが浮かび上がります。それらはひょっとすると、60代以降の第二の人生で取り組むべきテーマなのかもしれません。記憶の点があらかたつながった時、私は60歳になっていました。50代につくる自分史が完成した時、その人に本当の還暦が訪れるのだと私は考えています。

 昔の記憶をよみがえらせることを「ライフレビュー」といいます。それは、認知症の治療にも活用されています。

 認知症とは、最近の記憶が覚えきれなくなり、新しい記憶が残らなくなる症状と言えます。でも、不思議なことに人間は、古い記憶はいつまでも脳の貯蔵庫の深いところにしまい込んでいる。そうした古い記憶を取り出して来て改めて整理する作業が、脳の働きを高めることになり、認知症の予防にも役立ちます。

 昔好きだった曲を聴き、初めて聴いた10代のころのワクワクした感情がよみがえることがあります。五感にひもづけられた記憶を思い出す体験は脳を活性化させ、脳を若返らせます。そんな刺激を脳は喜び、快い気持ちにつながるドーパミンなどのホルモンが出ます。同窓会は、そんな体験ができる格好の機会なのです。

(取材・文 沢田歩)

保坂 隆(ほさか・たかし)
1952年山梨生まれ。慶応義塾大医学部卒。1990年に米国カリフォルニア大に留学後、精神科医としてがん患者の心のケアに取り組む。東海大医学部教授を経て、がんと心の問題を扱う新しい学問領域である「サイコオンコロジー(精神腫瘍〈しゅよう〉学)」の普及を目指し、聖路加国際病院精神腫瘍科部長などを歴任。2017年に保坂サイコオンコロジー・クリニック」を開院。著書に「図解 50才からの人生が楽しくなる生き方」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、「定年後、うまくいく人 いかない人」(朝日新聞出版)、「人生をもっと楽しむ『老後の学び術』」(PHP文庫)など。

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