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写真家が魅了された世界遺産 自分を見つめ直す場所に 

【Reライフフェスティバル2018採録】Reライフ世代におすすめするヨーロッパ

更新日:2018年03月19日

 これまでに127か国、577か所もの世界遺産を訪れている写真家・富井義夫さんが、朝日新聞ReライフFESTIVALでの講演「Reライフ世代におすすめするヨーロッパの世界遺産」(JTBメディアリテーリング協賛)で、おすすめの場所を写真とともに紹介しました。

きっかけは、小さな新聞記事

 幼いころから、旅に強い憧れがありました。小学生時代、お年玉で買ったトランプの絵柄がスイスアルプスで、家でながめては「いつか行ってみたいな」と思っていました。中学生になると、さっぽろ雪まつりのニュースを見て北海道に憧れましたね。自然の美しさにもひかれ、37歳の時に自宅・職場を思い切って札幌へと移しました。


 世界遺産を撮影するようになったきっかけは、小さな新聞記事でした。エジプトでアブシン・ベルという遺跡が、ダム建築工事で水没の危機に瀕していた。ユネスコを中心に世界中で救援活動が起こり、神殿は移設・保護されたという内容でした。巨大な建築物を移動したことに衝撃を受けました。あの時もし遺跡がなくなっていたら、今でも計り知れない後悔が残っていたと思います。

魅了された世界遺産

■ Reライフ世代に人気のイタリア

 世界中で一番好きな国を聞かれたら、イタリアと答えます。遺産数は世界一、Reライフ世代が行ってみたい土地としても人気の国です。

ポルトヴェネーレとチンクエ・テッレ

 一番好きなのが、ポルトヴェネーレとチンクエテッレ。どちらも、イタリア北部の文化遺産です。ポルトヴェネーレは「ヴィーナスの港」という、しゃれた名前がついていて、高台に教会が、丘の上には城壁が連なっています。ワインづくりが有名で、カラフルな風景をながめながら美味しいワインが飲めました。

チンクエ・テッレ/マナローラ

 チンクエテッレは、五つの村を合わせた呼び名です。一番好きなのは、マナローラという街です。こちらも断崖絶壁の上にあり、「愛の小道」という細い道が海岸線まで通っています。非常にロマンチックな雰囲気をもつところです。

■ イギリスでおすすめの世界遺産は謎だらけ

 イギリスには有名な世界遺産がいくつかあります。おすすめはストーンヘンジです。

ストーンヘンジ

 イングランドの南西部にソールズベリーという街があり、バスに乗って移動していると、丸く円陣状に並んだ巨石遺跡が突如として現れます。それが、ストーンヘンジです。紀元前2500年から2000年の間に立てられたこと、大きな石のうち1つは30km、もう1つは250km離れた場所から運ばれてきたことなどしかわかっていません。いまも、多くの謎に包まれた場所なんです。

■ フランスの世界遺産は異空間

 フランスで最も人気のある遺産の一つ、モン・サン・ミッシェル。島全体が修道院となっていて、入江の潮が引いているときだけ、巡礼者が通ることができます。満潮時には水が満ちてきて誰も入れない閉ざされた空間になります。

モン-サン-ミシェル

 写真は、夏至に撮影したものです。夕方のように見えますが、実際に撮影したのは深夜。凍える思いでシャッターを切りました。入口の門は一つ。そこを通って上へ行くと、修道院があります。私が訪ねた時は、地下礼拝堂の入口でミサが行われていました。礼拝の瞬間に立ち会え、指先が震えましたね。

■ これぞスペイン!ガウディの傑作

 多彩な文化が混じり合い、46もの世界遺産が点在するのがスペインです。

サグラダ・ファミリア聖堂

 おすすめはアントニ・ガウディ作品の代名詞、サグラダ・ファミリア聖堂です。これまで、3度ほど訪れています。地下鉄の駅を降りて、階段を上がって目の前に初めて聖堂が見えた瞬間は、鳥肌が立つ思いがしました。

  ガウディは、聖堂の図面を残していません。残されたのは模型だけ。最初は完成まで300年はかかるとされました。その後3DIT技術が発達して、約150年後の2026年ごろに完成すると言われています。

旅は、人生そのもの

 文化も言語も異なる国で重い機材を抱えて旅をしていると、初めは早く帰りたいと思うことがあります。ところが中盤を過ぎるとスピードが上がり、帰国後はいつもあっという間だったと感じます。出会いや別れを繰り返し、時にはハプニングにも遭遇する。旅は、実際の人生にあまりに似通っています。ですから、行ける時には必ず行っておいてほしい。遺産を前に自分自身を見つめ直す、そんな時間を旅先で過ごしていただけたらと思います。

富井 義夫 (とみい・よしお)

1977年 東京写真専門学校 卒業
1982年 日本写真家協会会員
1985年 日本航空株式会社 文化事業部 嘱託カメラマン
1988年 株式会社 写真工房 設立
1990年 北海道の自然に魅せられ札幌に移住
2011年 世界文化遺産地域連携会議会員
2013年 世界遺産写真展 『HERBIS×富井義夫』/ハービスPLAZA(大阪)
海外取材歴231回/127の国と地域を旅する (2018年2月現在)

世界遺産を前に自分を見つけ出す~写真家・富井義夫氏の講演を聴いて

読者リポーター・八倉巻恭子

 富井氏は幼いころ、スイスアルプスの写真を見て、「いつか世界中の風景を見に行きたい」と夢を膨らませたという。
 風景写真で生計を立てられるようになったころ、アスワン・ハイ・ダムの建設で水底に沈む予定だったアブ・ジンベル神殿が移設されるというニュースを知り、その壮大さに衝撃を受けた。その後、世界遺産を得意ジャンルとする写真家となったことは必然だったのかも知れない。
 薦めたい世界遺産が数あるなか、一番好きな国はイタリアだという。カラフルな家々が点在し、独自の美しい景観をつくり出している「ポルトヴェーネレ、チンクエテッレ及び小島群」の海岸線、16世紀から地図が変わらないといわれる「ヴェネツィアとその潟」の水辺の風景、「アルベロベッロのトゥルッリ」のおとぎの国のような建物など、イタリア半島各地に見所は数多い。
 富井氏は言う。「旅は凝縮された自分に出逢える時間。自分の生き方を正面から捉える機会です。だから、いつか行くではなく、行ける時に行っておくことが肝心。世界遺産を前にして自分自身を見つめ直す。そんな旅をみなさんにも是非体験して欲しい。それが僕の願いです」
 富井氏の世界遺産の作品集から心震わせる1枚を見つけ出し、今年こそ旅へ出ようか。行けるときはきっと今だから!

 定年や子育て後の世代を応援する文化祭「朝日新聞ReライフFESTIVAL」(朝日新聞社主催、協賛各社)が2018年3月2日、東京・日本橋のロイヤルパークホテルで開かれました。今年で3回目となるイベントの模様を採録したものです。

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