なぜ「西郷どん」は同時代人から愛されたのか:朝日新聞Reライフプロジェクト

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なぜ「西郷どん」は同時代人から愛されたのか 

【Reライフフェスティバル2018採録】ビビる大木さんと学ぶ「西郷どん~その伝説と実像~」

更新日:2018年03月22日

 NHKの大河ドラマ『西郷どん』をきっかけに、注目を集める西郷隆盛。幕末・維新史に詳しく、「ジョン万次郎記念館」の名誉館長も務めるタレント・ビビる大木さんが、日本近現代史研究者・町田明広さんとともに、その魅力や歴史上の評価を探りました。

近代化を支えた西郷

ビビる大木 日本で西郷隆盛といえば、明治維新の立役者として今も昔も根強い人気があります。しかし、どうも海外では事情が違うようです。米国のハーバード大学では、幕末史の講義で西郷隆盛や坂本竜馬について取り上げていないと本で読んだことがあります。明治期以降の活動が評価を受けていないそうで、知った時はショックでした。

 町田 どうしても薩長同盟のイメージが先立ちやすく、明治維新以降、1877(明治10)年に西南戦争で亡くなるまでの印象が薄いのだと思います。
 実際のところ、西郷は明治期以降も政府の重鎮として活躍しました。その1つが1871(明治4)年の廃藩置県です。明治が始まった段階では、大名領域としての「藩」が国内にまだ残っていたんですね。それをなくし、代わって県を新設した。当初は明治政府内にも根強い抵抗や慎重論があったようですが、西郷は「全ての責任は自分が持つ」と言い放ち、廃藩置県を実現させたんです。日本の近代化は、実質的にここから始まっていきました。

ビビる大木 鎖国状態にあった朝鮮を武力で開国させようという「征韓論」を西郷は唱えたとされていますが、この論争で、岩倉使節団の一員であった旧友の大久保利通との間で対立が生まれました。欧米視察から帰ってきた大久保は、留守政府をあずかり、さまざまな改革を行った西郷に対する嫉妬心を抱えていたのではないかと思いますが、先生はどう見ていますか。 

町田 非常に重要な点をご指摘いただきました。征韓論というのは実質的に、岩倉使節団グループと、「西郷内閣」グループの実権争いだったと思います。外遊後の岩倉使節団グループは、すでに国内で居場所がなかった。西郷内閣は長州閥の汚職を次々と摘発したこともあり、木戸孝允や伊藤博文からすれば、我慢できない面があったのでしょう。

ビビる大木 国を動かす立場にまで上りつめると、やはり嫉妬や権力というものが人を狂わせてしまうんでしょうか。

町田 そうですね。西郷が下の人間から支持を受けた大きな理由は、彼自身の名誉欲のなさにあったと思います。何より、武士出身者として命に固執しなかった。征韓論の政変で敗れた西郷が鹿児島へと下野した際には、600人もの若者たちが鹿児島についていったと言われている。当時を生きていたら、自分も彼の後を追いかけたくなっただろうなと思います。

日本の近現代、見直すきっかけに

ビビる大木 昔は、日本史にそれほど興味のない学生でした。幕末史を好きになってからここ15年ほどの間で、国内の史跡めぐりがすごく楽しくなりました。今日の町田先生のお話を踏まえて鹿児島に行ってみたら、みなさんもさらに歴史を楽しんでいただけると思います。


町田 明治維新から150年の記念となる今年は、西郷にまつわる講演会・展覧会も多数企画されているようです。西南戦争で西郷が亡くなった後、日本の近代化は西洋一辺倒になりました。今はそれも、行きつくところまで来ていると思う。彼の存在が、日本の近現代を捉え直すきっかけになれば何よりです。

ビビる 大木 (びびる・おおき)
1974年生まれ、埼玉県春日部市出身。 日本テレビ「PON!」・テレビ東京「家、ついて行ってイイですか?」・テレビ東京「追跡ライブ!SPORTSウォッチャー」、中京テレビ「前略、大徳さん」などで、MCを務める。NHK大河ドラマ「新選組!」をきっかけに幕末の虜になり、幕末の歴史秘話や考察を話す、トークライブ「お寺で幕末のお話」シリーズを定期的に開催。世界遺産の「日光山輪王寺」でも開催し、好評を得ている。 吉田松陰・ジョン万次郎らを尊敬し、高知県土佐清水市にある「ジョン万次郎記念館」では名誉館長も務める。 幕末関連のNHK大河ドラマ「新選組!」・「龍馬伝」・「花燃ゆ」には俳優として出演し、その活動は多岐にわたる。

町田 明広 (まちだ・あきひろ)
昭和37年(1962)生まれ、長野市出身。日本近現代史(明治維新史)研究者、神田外語大学准教授・日本研究所副所長。 明治維新史学会理事・例会担当委員長、博士(文学)、千葉商科大学・国際医療福祉大学・佛教大学非常勤講師。著書に『幕末文久期の国家政略と薩摩藩―島津久光と皇政回復』(岩田書院、2010年)、『島津久光=幕末政治の焦点』(講談社選書メチエ、2009年)、『攘夷の幕末史』(講談社現代新書。2010年)、『グローバル幕末史』(草思社、2015年)、『歴史再発見 西郷隆盛 その伝説と実像』(NHK出版)。

 定年や子育て後の世代を応援する文化祭「朝日新聞ReライフFESTIVAL」(朝日新聞社主催、協賛各社)が2018年3月2日、東京・日本橋のロイヤルパークホテルで開かれました。今年で3回目となるイベントの模様を採録したものです。

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