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失敗談も糧に 同年代だからこそ納得「第二の人生の人づきあい」 

【Reライフフェスティバル2018採録】リアル読者会議 in フェス

更新日:2018年03月20日

 「リアル読者会議inフェス」は、読者同士の活発な意見交換を、朝日新聞ReライフFESTIVALに訪れたみなさんにも見てもらいたいと、今回初登場したプログラムです。『定年後』が2017年のベストセラーになった楠木新さんと、エッセイストの岸本葉子さんの2人をゲストに迎え、「第二の人生の人づきあい」を語り合いました。

 定年を迎えると、毎日の過ごし方や人づきあいはどう変わるのか。登壇した読者4人が、それぞれの体験談を語った。

多忙な日々が一変、「暗い生活」に

  小学校の校長だった八木一龍さん(64)は定年後、それまで仕事中心の生活だった毎日が一変したという。

 八木 学校に勤めていた時代は朝早く出勤し、深夜に帰宅する休みのない毎日でした。定年した年は331日まで仕事で、41日から暗い生活に突入しました。家にいてもすることがないし、隣近所も知らない人ばかり。話し相手といえば妻だけです。土日も買い物を追っかけ、とうとう「もう来ないで」とまで言われてしまいました。

 地域の料理教室に通ったものの、長続きしません。その後、近所の老人クラブに入会しました。平均年齢7080代の中で、60代と若い方だったので、小間使いのように動き回りました。結果、いきいきと毎日を過ごせるようになりました。


援農ボランティアがきっかけ 妻との関係も良好

 五十嵐幹雄さん(62)は機械メーカーを退職後、近所の果樹園で援農ボランティア活動を始めた。そのことが、日々の生活や夫婦関係に好影響を生んだという。

五十嵐 今は3年目で、ネクタリン、ぶどう、梨、プルーンなどを作っています。空気や土の色など、今までの人生とは全然違う感触があってすごく良いです。

 傷のついた果実を家に持って帰ると、妻がゼリーやタルトなどのスイーツを作ってくれます。「美味しい」と、近所でも評判になりました。退職後、家庭内の関係が悪くなるのではと心配していましたが、結果として活動が好循環につながりました。


 女性からは、近所付き合いや趣味活動の経験談が語られた。


地域の人間関係がピリピリ…日本の国民性?

 海外出身のパートナーをもつ小宮山結花さん(54)。若いころ、単身で海外に在住した際は日々、明確な自己主張が求められたという。日本でマンションの理事を引き受けたときのことを振り返った。

小宮山 マンションの会合で2時間かけても理事が決まらず、こらえ性がないので手を挙げました。やりながら、地域のピリピリとした人間関係が見えてきました。隣近所の問題があっても、クレームは当人ではなく管理者側に行ってしまう。話し合いで解決する雰囲気はほぼなかったです。


うまくいかない場合は割り切ろう

  着物姿が印象的な鴇田(ときた)敦子さん(73)は、習いごとで人間関係の問題に直面した時のことを語った。

鴇田 「静かに踊りたい」という思いでフラダンスを習い始めましたが、「あなたがいると違うのよね」と言われ、結果的には浮いてしまいました。うまくいかない場合は忘れて次へ進むことも大事。年をとるごとに、好きなことだけをやっていくようになっていったと思います。


 ゲストの楠木さんは、『定年後』執筆のために、地域の図書館やスポーツクラブに張り込んで定年世代を観察していて気づいたことを披露した。グループで楽しそうに話していることが多かった女性に対し、男性は一人ぼっちでいる割合が高かったという。

楠木 定年を迎えると、人間関係まで失ってしまう人が多いようです。働いている間から退職後の準備を始めておいた方がいいでしょう。


意思表示は、あいさつから

 後半では、人づきあいに関する各自の心がけや工夫を話しあった。

小宮山 他人との間にほどよい距離感を置くこと。「この人なら声をかけても“たぶん”大丈夫」と思ってもらえる程度の関係性を目指しています。

八木 「校長をしていた」というと距離を置かれやすいので、最初は初対面の人に仕事のことを話すのが嫌でした。ですが、途中からはあえて自分をさらけ出すようにしました。校長先生も“同じ人間”と思ってもらえるようになりました。

 人づきあいは「どううまくやるか」に目が向かいがち。だが、「加齢とともに一人で意思表示をする機会も増える」とゲストの岸本さん。いざという時に意思を示せるよう、普段から会釈や声かけといった「あいさつ」を地域で心掛けているという。

岸本 「晴れですね」「寒いですね」など、何の個人情報も含まずにやり取りができる。あいさつというものは本当によくできていると思う。中にはあいさつを返さない主義の人もいて、無駄玉もたくさん打ちましたが、ふとしたはずみに距離が縮まることも多かったです。

 詰めかけた参加者は、登壇者の話にうなずいたり、笑ったり、司会者の質問に応じて手を挙げたりと、会場は終始活発な雰囲気に包まれた。

楠木 新 (くすのき・あらた)1979年、京都大法学部を卒業後、生命保険会社に入社。人事・労務関係をはじめ総合企画、支社長などを経験。会社勤務のかたわらMBAを取得(大阪府立大大学院)。「働く意味」「個人と組織」をテーマに取材を続け、執筆や講演などに取り組む。2007年3月から朝日新聞のbeで「こころの定年」を1年余り連載。2015年3月に定年退職。楠木ライフ&キャリア研究所代表。神戸松蔭女子学院大学非常勤講師。著書に「定年後」(中公新書)、「人事部は見ている」(日経プレミア新書)、「『こころの定年』を乗り越えろ」(朝日新書)など。

岸本 葉子 (きしもと・ようこ)エッセイスト 1961年神奈川県生まれ。大学卒業後、会社勤務、中国留学を経て、執筆活動に入る。食や暮らしのスタイルの提案を含む生活エッセイや、旅を題材にしたエッセイを多く発表。同世代の女性を中心に支持を得ている。著書は『ブータンしあわせ旅ノート』(角川文庫)、『わたしの週末なごみ旅』(河出文庫)、『欲ばらないでちょうどいい』『いのちの養生ごはん』(中公文庫)、『五十になるって、あんがい、ふつう』(ミスター・パートナー)、『ちょっと早めの老い支度』(オレンジページ)など。

 定年や子育て後の世代を応援する文化祭「朝日新聞ReライフFESTIVAL」(朝日新聞社主催、協賛各社)が2018年3月2日、東京・日本橋のロイヤルパークホテルで開かれました。今年で3回目となるイベントの模様を採録したものです。

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