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湖を独り占めして100年余(北海道)丸駒温泉旅館 

湯の記憶~秘湯・名湯を訪ねて~

更新日:2017年09月28日

 北海道千歳市にある支笏湖の最大水深は360メートル。田沢湖(秋田県)に次いで日本で2番目に深い湖である。原生林に包まれた湖岸の緑は神秘的だ。湖に向かってスロープを引く風不死(フップシ)岳(1102メートル)や樽前山(1041メートル)、恵庭岳(1320メートル)の山容も美しい。

 丸駒温泉旅館は、湖畔東側にある温泉街から約12キロ離れた北側の湖畔にある一軒宿である。いまでこそ道路が整備され、観光バスや車で行けるが、1960年代半ばまでは温泉街から船でしかこられない宿だった。いまだに電気は自家発電、水は支笏湖から動力ポンプでくみ上げ、浄化して使っている。恵庭岳のふもとにある湖畔の「奥座敷」は、2015(平成27)年に創業100年を迎えた。

 1915(大正4)年12月末の午後11時ごろ、月が照らす湖面を一艘(いっそう)の舟が進んでいた。乗っていたのは、丸駒の創業者佐々木初太郎と妻トヨ、長男、そして犬一匹で、対岸の恵庭岳のふもとをめざしていた。アイヌの人から聞いていた湯元を探すのが目的で、2時間ほどで対岸に到着すると、やぶをかき分けて地熱で雪が消えていた地面を見つけた。そこに草を集めて寝床をつくり一晩を過ごした。翌日、湯が湧き出ている場所を探し当て、周りから木々を拾ってきて小屋を建てた。

 これが4代目の佐々木義朗社長(54)が伝え聞く丸駒の創業の由来だ。

 初めて小屋を建てたとき、土中から柱と柱をつなぐ鎹(かすがい)が出土した。調べてみると、明治期に馬で荷物を運ぶ傍ら、この地で小さな温泉宿を営んでいた人がいた。その人が使っていた屋号が「丸駒」だった。先人に敬意を表して宿の名を丸駒温泉とした。

 湖畔の水打ち際にある露天風呂は創業以来の秘湯の趣を残している。支笏湖と直接つながっているため、湖面の水位によって湯面の高さが変わる。雨の多い秋だと深さ160センチにもなるが雨が少ないときだと4050センチまで浅くなる。なにより湖を独り占めにしたような気分を味わえる。

 佐々木社長は「今の時代に欠けていると思われる情けを大切にしていきたい」と話す。目指すのは、お客様が何度となくお泊まりにいらしてくれる古里のような宿だという。「こころの古里という言葉を大切にしています」

協力:一般社団法人 日本秘湯を守る会

湖畔の宿 支笏湖 丸駒温泉旅館 ホームページ:http://www.marukoma.co.jp

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