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楠木新さん/定年後は80,000時間!? 人生後半、伸びるのはこんな人 

ベストセラー『定年後』著者・楠木 新さん インタビュー余録(上)

更新日:2017年09月21日

人生後半戦、勝負のポイントは…

作家・楠木新さん 写真:山本和生
 「人生80年時代になると、定年後は8万時間」

 著書で示したこの数値は、自分で計算して出しました。

 私は2年前に生命保険会社を定年退職して、プー太郎になりました。会社にいたら、1カ月なんて紙のように飛んでいきますが、どこにも所属していない定年後の毎日は時間がたっぷりあるんですよね。

 私は、時間を分割にしないともたないと思いました。起きてから昼まで、昼から夕方、夕方から寝るまでの3分割。そのうちの2カ所を仕事で埋められたらいいな、というのが今の感じです。

 定年後のふんだんにある時間を上手に楽しく使っている人と、その前で立ち往生している人の差は大きい。人生後半勝負の一番のポイントは、時間の使い方です。

「会社人間」と「趣味人」 伸びるのはどっち?

 会社員から転身した人を150人以上インタビューするなど、これまで取材した経験を踏まえると、中高年から選択肢を持てる人は、40代半ばくらいまでは会社人間の人が多いということです。若い頃から「仕事より趣味が大事」とか、会社から距離を置いている人は、選択肢が増えない。逆説的ですが、会社人間となるくらい仕事に邁進(まいしん)していることが基礎力になり、そのバイタリティーが次のステップに役立つというのが実感です。

 例えば、銀行員から転身し、お遍路の世界で居場所を見つけた男性は、40代半ばまでは朝から晩まで休みも問わず働いていました。「家を建てたけど、日曜の昼間に散歩すると道に迷う」と言うので、理由を聞くと、朝暗いうちに出勤して帰宅も夜遅いので、明るいときに近所を歩いたことがないから、でした。

 もし自分が今、会社で良いポジションにいるのなら、最後まで走った方がいいと思います。そういうチャンスはあまりありません。会社の中で役職や役割を背負って働ける機会があるなら、走るだけ走った方がいいです。

 ただ、組織の中で働いていると、組織と自分との距離感に揺れたり悩んだりすることがあると思います。希望ある仕事に就けない、同僚に比べて出世していない……とか。45歳を過ぎると、多かれ少なかれ感じることがあるのではないでしょうか。

 お遍路で自らの道を開いた男性は、40代半ばで子会社に出向となり、数年間もんもんと悩んだそうです。会社に比較的適応していると思われる人でも、よく話を聞くと、どこか満たされない思いを抱えている人もいます。

 会社に適応していても長い人生はうまく乗り切れない――。そんな気持ちになることを、私は「こころの定年」と呼んでいます。この状態は、定年後に向けて助走を始めるきっかけになることもあります。

(聞き手・吉浜織恵 写真・山本和生)


 ベストセラーになった「定年後」(中公新書)の著者、楠木新さん(63)に、人生後半をどう生きるかについてインタビューし、2017年9月5日付朝刊のReライフプロジェクト特集面に掲載しました。(「第二の人生を『いい顔』で」)。
 紙幅の制約で盛り込めなかった話を、ウェブ特別版の「楠木新インタビュー余録(全3回)」として紹介しています。2回目は、働きながら定年後を見据えた活動をする「助走」についてのお話です。

楠木 新さんインタビュー余録
(上)定年後は80,000時間!? 人生後半、伸びるのはこんな人
(中)50歳からの「助走」のススメ
(下)定年後に「一歩」踏み出すヒント

楠木 新(くすのき・あらた) 作家。1954年生まれ。生命保険会社に勤務していた時代から楠木新のペンネームで執筆。「定年後」「人事部は見ている。」など著書多数。中高年以降に、会社員から独立した転身者を、朝日新聞be(2007年3月~2008年3月)に「こころの定年」というコラムで一人ひとりを紹介した。

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