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藤原和博さん/「八ヶ岳型」人生の時代 ピーク何度も 

教育改革実践家 藤原和博さん

更新日:2018年02月01日

 昔は人生50年と言われていたのが、日本人の平均寿命は今や80歳を超えました。特に女性は87歳と、この百年ほどで40歳以上も延びています。

 多くの人は人生の浮き沈みを、富士山を描くようにイメージします。現役時代のある時にピークを迎え、後はなだらかに下降線をたどるような。孫の成長を見守りながら穏やかに過ごす老後。それは、かつてなら美しい老い方だったかもしれません。でも、人生百年時代では、ひと山越えた後の余生がとても長い。定年後に、30~50代と同じだけの長さの時間が、もう一度巡って来るのですから。

 そんな長い時間を惰性のまま生きて行くのは無理があります。定年後にも人生のピークをいくつも描けるような、八ケ岳型の人生観が求められているのです。

 そのためには、30代ぐらいから備えが必要でしょう。八ケ岳の峰々には、それぞれに山裾が連なっています。山をひとつ降りてから、次に向かうのではなく、ひとつの山を登りながらも、並行して次の山裾も整備しておく感じです。単線ではなく、複線で人生を走るイメージですね。

 私が、東京の杉並区立和田中の校長になったのは47歳の時。以来、教育改革実践家を名乗って、正解のない問題に取り組む「よのなか科」というアクティブラーニング法を広めて来ました。校長の仕事は、今やっている奈良市立一条高校で最後かもしれないけれど、「よのなか科」のノウハウを伝える仕事は、ライフワークとして80歳過ぎてもやっていけると思う。塾でも作ってね。

●40代から始めるからこそ、60代以降も続く

 私の場合、和田中の校長を退任した後は、テニスを始めた。52歳の時です。長男が中学でテニス部に入ったんですが、息子に将来かなわなくなったらくやしいと思って、テニススクールに通った。試合ができる腕前にしてくれとお金を積んでスクールに頼みこみ、2カ月間集中して百レッスン受けたんです。

 ある程度上達すると、コートにやってくる様々な人たちとの交流が生まれて、意外な人脈が広がった。10年続けるうちに、今いる奈良も含めると五つぐらいのテニスのコミュニティーができた。声をかければ、いつでも20人ぐらいは集まりますよ。
 コートで知り合った人たちに聞くと、みんな40代ぐらいでテニスを始めている。上達するには時間や体力も必要だから、やはりある程度若いうちに始めた方がいい。40代から始めるからこそ、60代以降も息長く続けられるのだろうと思います。

 でも、60歳からでも決して遅くはありませんよ。義務教育の学習時間は一万時間ほどですが、人間、それぐらいの時間をかければ、語学でも何でも大抵のことはある程度のレベルまでもって行くことはできます。一日3時間かければ10年の計算。余生を30年とすれば、並行して三つぐらいの峰を描けるのではないでしょうか。

●75歳デビューの夢、これから挑戦

 夫婦なら、二人で一緒に取り組むテーマも必要でしょう。まだ若い頃なら、子育てという共通の課題がある。けれど、子どもが独立してしまえば、夫婦で一緒に取り組むテーマなしでは共通の話題がなくなり、会話が成り立たなくなってしまう。妻は、私の勧めで、最初はいやいやテニスを始めたのですが、今では私より熱心です。
 取り組む対象は何でもいいです。でも、ボランティアなど社会性のあるテーマに取り組むのも良いかもしれませんね。「そういう意義のあることなら」と、家族も結集しやすくなりますから。

 実は私、75歳ぐらいで画家デビューを狙っているんです。年をとっても何かを生みだし続けている人って、すてきじゃないですか。まだ、何の練習も始めてはいませんが、デッサンからじっくり取り組めば、テニスみたいにある程度の所まではいけるんじゃないかと。最後は教育改革実践家としてではなく、絵師になって95歳ぐらいで死ぬ方が美しいかな、なんて考えているのです。

(聞き手・澤田歩)

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