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趣味も介護も「若い感覚」のまま 

社会デザイン研究者 三浦 展さんインタビュー

更新日:2018年12月23日

●若い感覚のまま年をとる

 かつてシニアと言えば「ロマンスグレー」「正装」「控えめ」のイメージだったが、団塊世代が若い頃の感覚とライフスタイルのまま年をとり、イメージが変わった。カジュアルファッションを着こなし、アウトドアが好き。素直に年をとらないというか。年をとったから格好を変えるんじゃなく、今のまま年をとっていく。

 団塊世代が60代になったとき、「アクティブシニア」と言われたけれど、本人たちはシニアだとは思っていなかったんじゃないか。小泉さんが首相になったのは59歳だったけど、あれをシニアとは言わないよね。小泉さんは団塊より年上だけど、若い。今世紀に入ったあたりから、「60歳くらいじゃ、まだまだ若いな」って感じになったと思います。僕も60歳だけどシニアとは呼ばれたくない。シニアというと70代かなあ。今、団塊世代はさすがに中年とは言わないだろうから。

 ファッションでの変化は大きいですよ。ジーパンにTシャツ世代。着慣れているから似合うよね。団塊世代は20歳のときから、50年着てるからね。女性もカジュアル化が進んだ。パンツが多く、スカートをあまりはかない。ショートヘアで、「コム・デ・ギャルソン着てました」というようなデザイナーズっぽい服装も多い。話し方が自信に満ちています。

 若い格好が似合いたいから、入れ歯にしないため高額な歯磨きを使ったり、歯科に通ったりする。眼鏡でなくコンタクトレンズを選ぶ。腰が曲がる、めがねをする、入れ歯をするってのはいやなんだよね。

 でも、ファッションにはあまりお金を使っていない。健康の延長線上に結果として若々しさや美容があるっていう考えなので。体力、知力、視力、いろいろ衰えていくから、健康関連の消費は10年前のシニアと比べ大きく増えた。

●自立をアシストする

 女性の消費は、長寿のためにワインや牛肉が伸びている。腸、骨盤、股関節……と健康ブームで本が売れる。男性で伸びているのはスポーツ。ぼけないように語学や楽器の勉強もする。ヨーグルト、チーズも伸びている。車も買っています。夫と死別した女性は、家電をたくさん買っている。

 団塊は家電好きです。家電のない時代に生まれたから。「おれのうちにはないけど、金持ちの家にはある」。そういう飢餓感を知っている。だから、年取ってから欲しい。車もバイクも。欲しいものは素直に買うんです。

 マウンテンバイクに最初にのったのも団塊だと思う。でも、自然のなかを駆け巡りたくても60歳を過ぎると膝や腰がついていかない。体力のためにも、娯楽のためにもアウトドアを楽しみたいけど、坂はきつい。それで先日、僕と同い年の夫婦が電動アシスト付きマウンテンバイクというのを買った。1台35万円、2人分なら中古車くらい買えちゃう価格だけど買うんですね。自分たちの親が転んで車椅子になるのを見て、「転んだらただ怪我するんじゃなくて、認知症が進む可能性がある」とわかっている。だから、転ばないように気をつける。ずっと自立したいけど、アシストはいる。これはマウンテンバイクに限らず、これからの超高齢社会に必要な原理。

 家計調査で回答している単身シニア世帯の8割は団塊世代。70歳ではまだ施設には入ってなくて単身で暮らしている。5年後から施設に入る人も出てくるし、介護が必要になる。

 今の消費のキーワードは「ケア」と「シェア」。できれば夫婦でケア、シェアし合うことを望むでしょうね。でも最後は一人だから、セルフケアが必要になる。それが無理なときは、友人、知人が3人集まってお互いに補い合うというスキルシェアの関係も必要になるでしょう。

 ただし男性はケアもシェアも苦手。妻に先立たれた男性は問題。子どもも面倒みたくないから施設に入る。

●ケア付きマイホーム

 でも今の介護施設は、大量生産型の仕組みでまわっている。何時にこれをする、週一回これをやる、毎日これをやるなど画一的。あまり人にあわせてはいない。今の入居者は昭和一ケタ世代だから言うことを聞く。「人に迷惑かけちゃいけない」という人たちだから。

 でも、団塊になったら、そんなわけにはいかない。一人ひとり変えてくれって人が増える。

 「みんなで『ふるさと』をうたいましょう」という前に、団塊なら自分でバンドを組んじゃう。車いすに乗っても電子ドラムならたたける。自分の楽器を持ち込んできて、週一回は演奏会をやりましょう、となる。外からバンドを呼ばなくていい。

 数が多いから、わがままな人が10倍に増えたように職員は感じるでしょうね。でも、そこに対応しないと施設に入ってもらえない。費用は高いけど自由に暮らせるところと、お金がないから画一的サービスというところにわかれるでしょうね。だから所得による生活の格差は当然出るでしょうね。

 第二の道は、上野千鶴子さんが言っているような、ケアは「自分たちでやりましょう」というスタイル。

 シニアのシェアハウス、共同生活をする人は増える。特に、女性はコミュニケーション力もあるし、家事などシェアするスキルも多いから成り立つ。団塊世代のおばあちゃんで、夫の死後、シェア型の暮らし方をする人は増えるし、マーケットは広がるでしょうね。

 シェアハウスだって、いつもみんな一緒に集まっているわけじゃない。自分の時間と空間が保証されたなかで、シェアしたいときにシェアできるっていうのが利点です。

 第三の道はケア付きのマイホーム。僕の家に近くにも建設されるが、自分の古い家を高齢者向けのマンションに建て替えて自分も住み、他人も住む。緊急時には電話すればスタッフが飛んでくる。施設に入るほどではないけど、ちょっと不安がある人が住めるような家です。夫婦二人でやっていきたいけど、いろいろ不安があるなかで、なんらかのケア型の住まい方、自分の家だけのケアをしてもらえるサービスっていうのは、ニーズが増えるんじゃないかな。

 自動運転になったら車を持つ運転する喜びもないから、車もシェアになっちゃう。シェアできる大中小の車種がそろっていて、買い物用とゴルフ用などに使い分けられる。どうしても自分専用が欲しければ、駐車場を借りる。そうなりますね。きっと。そういうシェア型の住まい方は増えたほうがいいと思います。

 団塊世代以降のシニアは個性を維持したい。個性というのは、洋服なのか、時間の使い方なのか、いろいろある。自分の自由になる時間と空間を欲する気持ちはどんどん強まっている。

 年を取ったら好きなことをしたいよね。でも、子育てや仕事から解放され、お金と時間に余裕ができた後は、できれば好きなことだけしたい。だから、その「暮らしの個性」を維持するため「シェア」と「ケア」になるのではないか。

(聞き手・山田亜紀子)

三浦 展(みうら・あつし)
 社会デザイン研究者 1958年生まれ。 1982年、一橋大学社会学部卒業。パルコ入社、マーケティング情報誌「アクロス」編集長などを経て、99年 「カルチャースタディーズ研究所」設立。消費社会、家族、若者、階層、都市などの研究を踏まえ、新しい時代を予測し、社会デザインを提案している。 著書に、80万部のベストセラー「下流社会」。近著に「日本人はこれから何を買うのか?」「東京は郊外から消えていく!」「富裕層の財布」「中高年シングルが日本を動かす」など。

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