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「人生100年時代」はイノベーションの宝庫 

高齢社会共創センター長・秋山弘子さんインタビュー(1)東大流・社会課題解決

更新日:2018年12月11日

 人生100年時代の課題は、個人の課題、社会の課題、産業界の課題があります。しかし、逆から見ると、課題がたくさんあるということは、イノベーションの宝庫なのです。産業界は、そういう観点から、いかにイノベーションをおこして、長寿社会で世界のフロントランナーを目指すか。いかに長寿社会対応のインフラづくりを日本の基幹産業に育てていくかが課題だと思います。

●100歳をどう生きればよいかは「未知の体験」

高齢社会共創センター長 秋山弘子さん
 日本では長く人生50年時代が続きました。私たちは人生50年時代の生き方は知っていますが、100年時代の生き方は知りません。

 50年の時代は、年齢ベースで人生コースが決まっており、女性は25歳までに結婚する、結婚して2、3年以内には子どもを産む、男性は学校卒業後は就職して、定年まで働くとか、「まともな人間」の生き方のレールが敷かれていて、それに乗って生きることを求められていました。そこから外れると、本人に何か欠陥があるということで、どうにかして、そのレールに押し戻そうという時代が長く続きました。私が若い頃はそうでした。

 それが、人生100年で寿命が倍になったと同時に、社会規範が緩くなり、いつ結婚するか、いつ子どもを産むか、それとも産まないか、いったん就職しても転職するなどは、最終的には本人の選択の問題だという時代になりつつあります。100年の人生を自ら設計し、舵取りをしながら生きていく時代になってきました。

 学生に、「あなたたちうらやましいね」と言うと、みんな「そうか?」という顔をしますが、決して嬉しそうな顔をしません。というのは、前を行くモデルもないし、社会自体がまだそういう体制ができていないので、どうやって設計して生きていくのか分からないのです。

 人生100年あれば、仕事はひとつではなくて、全く違う仕事を二つできる。副業規制も緩和されてきているので、同時に複数の仕事をするとか、働く場所も時間も、柔軟になっています。したがって、非常に多様な人生設計ができるようになってきました。これが、個人の課題です。

●秒速1メートルで歩かないと、横断歩道を渡れない「まち」

 二番目は、社会の課題です。今のまちは、人口がきれいなピラミッド型をしていた時代にできました。私が子どもの頃は、子どもがたくさんいました。ところが、今、高齢化率が28%。ピラミッド型をしていたときにできたまちのインフラでは対応できません。住宅や交通機関のようなインフラだけでなくて、教育制度や、雇用制度、医療・介護の制度などの社会制度と言われるソフトなインフラも含めて、見直し、長寿社会のニーズに対応するインフラに変えていく必要があります。

 そうしないと、たとえば、人生二毛作と言って50歳で仕事を切り替えようとしたときに、従来の終身雇用で年功序列の雇用制度は具合が良くありません。退職金をもらえるまで頑張らないと割りの合わない制度です。ハード面では横断歩道の信号は1メートルを1秒で歩くことを前提として設定されていますが、75歳以上の半分近くはそのスピードでは歩けません。

 このようにハードとソフトのインフラを見直してつくり直す。これが、長寿時代の社会の課題です。

●社会課題解決、1企業での解決は困難

 私が所属する高齢社会総合研究機構は、設立後10年の東大では新しい組織です。当時の総長が、21世紀の人類的な課題と言われる環境の問題と、人口の高齢化に伴う課題を、全学の知を結集して解決する「課題解決型」の研究機構を総長室の下につくられました。

 全学10学部から80数名の教員が兼任で参与しており、課題によって必要な分野の人が連携し、チームを編成して解決に取り組めるようになっています。大学の異なる分野で連携するだけでは課題は解決できません。自治体や企業、住民の方々との協働、いわゆる共創して課題の解決にあたる体制をとっています。

 私たちは、設立当初から産学連携に注力しており、200社くらいの企業と長寿社会の研究会をやってきました。長寿社会は、産業界のあらゆる分野が関わります。住宅や移動手段、金融、食品、化粧品など、多様な企業にとって長寿社会には大きなマーケットがありますが、課題が広範で複雑なので、一企業で解決することは困難です。異なる業界の企業がそれぞれの強みを活かす協働が必要です。

 ピラミッド型をしていた時にできたまちを長寿社会に対応したまちに変えていくためには、既存のまちをさら地してつくりかえることはできないので、人が住んでいるまちを少しずつ変えていきます。しかも、長寿社会のまちは、高齢者のまちではなく、子どもも、現役世代もお年寄りも、100年の人生を元気でいきいきと、安心してつながって暮らしていけるまちです。

 そのためには、同時並行で色々なプロジェクトを進めていかなくてはならない。ですから、住宅や、移動手段、リタイア世代の活躍の場、医療・介護制度、ICTの活用など、いくつものプロジェクトを立ち上げ、チームをつくって取り組んでいます。

秋山弘子 東京大学高齢社会総合研究機構特任教授。1943年生まれ。ミシガン大教授、東大院教授などを経て2009年より現職。専門は老年学。活力と魅力ある高齢社会づくりを促進し、新しい価値を発信する拠点となることを目指して2017年に設立された高齢社会共創センターでセンター長。超高齢社会におけるよりよい生き方・暮らし方や共創型の課題解決をリードしている。

 人生100年と言われる時代となり、私たちはどんな備えをすればいいのか? 東京大学高齢社会総合研究機構の特任教授で、昨年から高齢社会共創センター長となった秋山弘子さんのインタビュー詳細を4回にわけて紹介する。

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