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21世紀は「腸の時代」 「便のデザイン」で健康長寿を 

<腸サイエンスの時代>国立研究開発法人理化学研究所 辨野義己さんインタビュー

更新日:2018年11月30日

 21世紀は腸の時代――。理化学研究所特別招聘研究員の辨野義己(べんの・よしみ)さんはそう話す。大腸にすむ腸内細菌が体に及ぼす影響を45年以上にわたって研究してきた辨野さんに、腸内細菌研究の最前線や健康長寿との関係、腸内環境を整えるための工夫などを伺った。

国立研究開発法人理化学研究所 辨野特別研究室 特別招聘研究員 辨野 義己さん
たくさんの細菌が存在する腸

 私は人の腸内細菌に関する研究を45年以上にわたり続けさせていただいております。実は今年古希を迎え、若い研究者とともに手を携えて新しい世界を構築しようと企んでおります。そして何よりも、私の腸内に棲(す)む細菌が優れたものであると自負しています。 

 さて、21世紀は「腸の時代」とも言われるほど腸内細菌と健康長寿との密接な関係がクローズアップされています。腸に関する様々な研究が進み、論文の数も飛躍的に増えています。その中には、腸内細菌が肥満や生活習慣病、さらにはパーキンソン病や認知症、自閉症とも関わっているのではないか、という指摘もあります。また、免疫機能との関連も改めて注目されています。現代医療のトップランナーの位置に腸内細菌研究があると言っていいでしょう。

 大腸の中にいる細菌は1000種類以上いると考えられており、重さにすると11.5キロもあります。その菌の働きによって、健康が促進されたり病気の原因となったりします。すんでいる細菌の数が多いこともあり、大腸は疾患の種類が最も多い臓器であるのですが、食生活などでコントロールしやすい臓器でもあります。腸の健康が私たちの寿命や健康を大きく左右するのです。

 腸の調子のよしあしをダイレクトに感じることができるのが、毎日の排便です。みなさんに「ウンチは何でできているか知っていますか」と問いかけると、多くの方が「食べかす」と回答します。しかし、そうではなく、大便の80%は水分、残りの20%のうち、2/3は腸内細菌と剥がれた腸の粘膜で、食べかすは残りの1/3程度です。腸内細菌は大便1グラムに対して1兆個ほど存在すると考えられています。

腸年齢の老化=健康寿命の短縮

 健康長寿の人の腸内には「ビフィズス菌」と「酪酸菌」が多くいることがわかってきました。ビフィズス菌は通常、加齢によって減少していきますが、健康長寿の方々の便からは多くのビフィズス菌が検出されます。一方、酪酸菌はがん細胞の抑制や腸管免疫の正常化などに効果があるとされています。これらの菌は腸内で体に役立つ働きをする「長寿菌」とも呼ぶべき存在です。健康のためには、これらの長寿菌を腸内に増やし、活性化させることが大切です。酪酸菌が酪酸を作るためには食物繊維が必要です。食物繊維は便を作る材料ともなり、腸の不要物を絡め取って排出します。また、ビフィズス菌や乳酸菌などを摂取すると、もともと腸にいる細菌を活性化し、よい便を育てます。

 では「理想的なウンチ」は何か。これは、程よい硬さでいきむことなくすっきりと出ること、あまり臭わず、黄色から黄褐色であること、太さはバナナ大で長さは20㎝ほど、重さは300gくらいのものでしょう。多くの人が、健康のために何をどう食べるかには気を使っていると思います。しかし、毎日どんなウンチを出すかもとても大切なことなのです。いい便を出すために、何を食べ、どんな便を作り、育て、どう出すかを考えながら、「便をデザイン」してください。食事だけでなく運動も大事です。まずは、チェック表で、ご自身の「腸年齢」をチェックしてみてはいかがでしょうか。私の研究では、腸年齢の若い人ほど肌のトラブルは少なく、人の名前が出てこないなど脳の老化も顕在化しにくいようです。


 大便は体からの身近で大切なお便りです。ご自分の健康のために、日本の健康寿命のアップのために、毎日の排便チェックを習慣にしてみてください。(談)

辨野 義己(べんの・よしみ)
 国立研究開発法人理化学研究所辨野特別研究室特別招聘研究員。農学博士。
 酪農学園大学獣医学科卒、東京農工大学大学院を経て、理化学研究所微生物材料開発室長をへて現職。45年以上にわたって腸内環境学・微生物分類学の研究に取り組んでいる。テレビ出演をはじめ、「大便力」(朝日新聞出版)、「免疫力は腸で決まる!」(角川新書)、「整腸力」(かんき出版)、「大便通」(幻冬舎新書)「ウンコミュニケーションBOOK」(ぱる出版)、「ヨーグルト生活で『腸キレイ』」(毎日新聞社)、「ビフィズス菌パワーで改善する花粉症」(講談社)、「べんのお便り」(幻冬舎)、「病気にならない生き方で、なる病気」(ブックマン社)など著書多数。

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