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肌には愛護的なケアを 洗い過ぎなど無用な刺激は禁物 

塩谷信幸・北里大名誉教授(形成外科医)インタビュー

更新日:2019年07月20日

 人が「年相応」と言うとき、そこにはある種の「あきらめ」が含意されています。でも、アンチエイジング分野の専門家として知られる北里大名誉教授の塩谷信幸さんは、諦めかけていることの多くは改善可能であり、現状を改めようとする気持ちこそがアンチエイジングにつながると説いています。人の見た目年齢を左右する肌の調子の改善も、例外ではありません。87歳の今も年齢を感じさせない塩谷さんに、専門医の立場からスキンケアの心得を語ってもらいました。

北里大名誉教授 塩谷信幸さん

肌は、若さや全身状態のバロメーター

 私は、形成外科医として女性のシワ伸ばし手術を、たくさん手がけました。でも若い頃は「たかが数本のシワをとるための治療に、お金や時間をかけるなんて」と、その女心を理解することができませんでした。ところが、そんな私もある朝、鏡の中の自分に白髪を見つけて「あっ」と思ったのです。何か自分の心が、体に裏切られたような気がしましてね。その時、シワの1本を見つめる女性の気持ちが分かった気がしました。
 皮膚は臓器のひとつと言われますが、肌の見た目の印象は、若さや全身状態を示すバロメーターです。一卵性双生児でも、違うライフスタイルの元で暮らしていれば、見た目年齢が20歳ぐらい違ってくることもあり得る。顔色や血色、シワ、シミ、たるみ。それらの要素が、見た目年齢を左右するのです。だから、いつまでも若々しくありたいと思うならば、日常の肌のケアが必要となります。

シワ、シミ、たるみの8割は紫外線が原因

 男性でも女性でも、シワ、シミ、たるみの8割は紫外線が原因です。紫外線は肌の奥底までも届くので、それを遮断するために皮膚はメラニンをつくり、黒くなる。それがシミの元です。また、紫外線は体の活性酸素を増やします。切ったリンゴの切り口を茶色く変色させるもの、と言えば分かりやすいでしょうか。活性酸素は皮膚を深い所で支える膠原(こうげん)繊維や弾性繊維をさび付かせるようにダメージを与え、シワやたるみの原因をつくるのです。
 だからといって、紫外線恐怖症に陥ることはありません。紫外線には、体内でのビタミンDの合成を促す働きもある。紫外線を恐れる余り室内に閉じこもっていては、心身のためにも良くありません。むしろ、日焼け止めを肌に塗るなど紫外線対策をしっかり講じた上で、戸外でアクティブに活動する方が、心身の若返りのためには有効でしょう。
 日焼け止めはたくさん出ているので、選択に迷うかもしれませんね。製品には、紫外線のカット効果を表す指標(SPFやPA)がついていますから、それらの説明書きを参考に、使うシーンに合わせて好きなものを選んでもらって構いません。 

まずは、自分の肌質を知ることから

 スキンケアにおいて大切なのは、自分の肌質を知ること。そして何事もやり過ぎない。皮膚に無用な刺激を与えないことです。
 自分の肌質を知るには、洗顔してから何もつけずに10~20分待ち、肌をなでてみるのが簡単です。触れた指の腹がベタつくようなら脂性肌。カサつくようなら乾燥肌。なめらかにすべるような状態が理想です。一見オイリーなようでも、目の周りや頰だけ乾燥している場合もあるので注意しましょう。そうした場合は部分的なケアが必要になります。
 女性と違い、男性は日常的に化粧をしませんから、女性のような手の込んだ洗顔やスキンケアは必要ないでしょう。基本的には、汚れや過剰な皮脂をぬるま湯で洗い流すぐらいで十分。特にオイリーな人ならば、必要に応じてセッケンも使う。自分の肌質に応じて、愛護的なケアを心がけるのです。
 皮脂は、水分と結びついて皮脂膜を作ります。これが皮膚のバリアーとなり、乾燥を防いでいます。でも、過剰な皮脂は酸化すると肌にダメージを与える。だから過度な脂性肌の人は、必要に応じて日に何度か洗顔して、皮脂を洗い流す必要が出てきます。

肌にダメージを与えない

 男性だと、冬場の乾燥で額が粉を吹いたようになる人がいますね。だからと言って、タオルなどでゴシゴシこすってはいけません。皮膚に無用な刺激を与え、ダメージが残ります。そんな時は、ぬるま湯で洗い流し、やさしく拭き取る程度にとどめる。乾燥肌は、皮膚のバリアーが失われ、角質層の水分が蒸発している状態ですから、潤いを補い、保湿クリームなどを塗って保護しましょう。
 加齢と共にカミソリ負けが目立つようになる人もいますが、あれも老化の一環と言えます。肌のなめらかさが失われ、傷つきやすくなると同時に、傷が治りにくくなっている状態です。カミソリ負けは、刃で肌がうっすら削れた状態なので、切れ味が落ちたカミソリで同じ所を何度も、余計に圧をかけてそるのは禁物です。使い捨てのカミソリを切れ味が落ちる前にマメに取り換え、肌に刃をあてるのを必要最小限にとどめることです。
 スキンケア用品や化粧品は、好みで選んで構いません。実はどの製品も原材料に大差はなく、その組み合わせや味付けが違うだけ。高価なものだから良いとは限りません。
 自分の肌に合う、合わないというのは、使ってみないと分かりません。肌荒れが出るなど合わない場合は、保存料などの添加物が悪さをしていることが多いようです。異常が出た時は使用を中止してください。
 また、分かっていただきたいのは、化粧品は肌の状態を整えるためのものではありますが、治療薬ではないということ。ひどい肌荒れなどの症状は、化粧品で改善しようとはせず、医師に相談してください。

(取材・文 澤田歩)

塩谷信幸(しおや・のぶゆき)
1931年東京生まれ。東大医学部卒。56年フルブライト留学生として渡米。ニューヨーク州立大オルバニー校で外科、形成外科の専門医資格を取得。帰国後は東大形成外科を経て、73年北里大形成外科教授。日本抗加齢医学会顧問。

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