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時代の変わり目、でも変われない「男たるもの」世代 

マーケティングライター・牛窪恵さんインタビュー(上)

更新日:2019年07月23日

 「モラトリアム」期間を過ごす男性10人を取材した連載「昭和男 定年道半ば」で、一緒に企画に取り組んでいただいたマーケティングライターの牛窪恵さんに、今定年を迎える世代の生き方について話をうかがいました。初回は、「男らしさ」を求められて走ってきた世代が迎えた「時代の変化」とそこを生きる切なさです。

 インタビューを通じて感じたのは、「男たるもの」を背負い続ける切なさでした。今の50代、60代が働いてきたのは高度成長、バブルの時代。「会社に尽くしてこそ」「男は仕事ができてこそ」とあおられてきた。だから、趣味も仕事の延長線上に考えている人が多いように思います。今回のインタビューでは総じて、「仕事を続けられる人が優れた人で、趣味にいそしんでいるのは『負け組』だ」というニュアンスも読み取れました。ずっとエリートで歩んできた人は、より切り替えが難しいのだと感じました。

●仕事の延長線で定年後生活に入ると……

 たとえば、登山にしても、会社の元同僚たちと行って「部長、先にどうぞ」と上下関係を気にしたり、「高尾山に行ったから、次はもっと高い山へ」と目標を決めてクリアしたりするのが大事。結果を出さないと無駄だと思っている。でも、趣味は目標をクリアできなくてもいい。そもそも自分の人生楽しむためのものだからプロセスは無駄になりません。散歩道に咲いていた花を見て、次はもっと写真をきれいに撮ろうとか、登山に持って行く水筒をおしゃれな軽いのにしてみようとか、若い人たちが言うところの「プチハッピー」を楽しむのが趣味の醍醐味です。小さなことで「面白い」「ハッピー」と感じられることを見つけて欲しいのです。仕事と同じように、結果を求めすぎないということです。

 インタビューで印象に残っているのは、妻を亡くして二人の子どものため家事を始めた男性の「初めて弱音をはいた」という言葉。自分の苦労を話すと、打ち解けあえる人が増え「今まで弱音をはかなかったけれど、『妻を亡くして困っている』と言ったら、『実は僕もこういうつらいことがあった』という友達がいて楽になった」と。

 妻や娘に「そういうパパを見たくないのよ」と言われ、すごくショックを受けていた方もありました。妻はピアノ講師の仕事があるけれど、自分は仕事がなくなりワイドショーを見て愚痴っていたら、「家族はみんな、がっかりしている」と言われたのだそうです。自分がそこまで後ろ向きだったのかと気づき、今も消えない大きな傷となって残っていました。男性たちはセンシティブ。それを理解しないとかわいそうだという印象を持ちました。

●時代の変わり目、IT化や働き方改革が影響

 時代が変わり、これからの定年世代も変わることが求められ始めています。年功序列・終身雇用で60歳定年と思って働いてきたのに、元気な限りは70歳でも80歳でも働いて欲しいという人手不足の世の中になった。

 ITによる情報格差も、人間関係やコミュニティ、世界の広がりに影響します。この世代の方は、デジタルを扱える人と扱えない人の差が激しい。やれたほうが世界も広がると思いますが、かたくななまでにやらない人もいる。それを今回も感じました。

 たとえばSNSの場合、まずは登録してみて、みんなが何をつぶやいているか見るところから始めればいい。地域情報、無料講座も検索できます。無理に投稿する必要はなく、自分がどのコミュニティに向いているか、会社のように縛られる必要はないので、入りたいときに入り、出たいときに出ればいいのです。

●嫌な人とはつきあわないのが「大人の特権」

 男性たちの話を聞いていると、「SNSをはじめたら友達を百人つくらないと」「バンドをやるなら、自分が会場を手配して知識を披露しないと」と理想が高く、難しく考え過ぎている気がします。

 今はリセットがしやすい時代です。SNSもふらっと入ったりつながったりして、合わなければやめればいい。ものによっては匿名でもできる。大人の特権で、嫌な人とつきあう必要はありません。SNSがいいのはブロックできること。リアルの関係よりむしろ緩く繫がったり、やめたりできる。だから、登録だけはしておいたほうが得かなと感じます。

 とはいえ、一人が好きな人もいるので、無理に友達をつくる必要はないと思います。「この部分はこいつ、話が合うな」という人がいた方が、何かあったときに情報交換もできて得だと思うのです。でも、仕事ではないから無理に話を合わせる必要はありません。

 妻と一緒に趣味をやりたいと言う人もいます。でも、妻の側は、それが楽しい人もいるけれど、すでに自分の趣味の仲間やコミュニティがあって、友達とやりたいこともある。誘うのはいいけれど、妻に固執する必要はありません。むしろ、地域やSNS、同窓会で話が合う人を見つける工夫をして欲しいのです。相手を妻だけに限定すると嫌がられます。無理に誘うことなく、一人で楽しむのも「大人のぜいたく」ではないでしょうか。

(聞き手 山田亜紀子)

牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ) 

 世代・トレンド評論家、マーケティングライター、インフィニティ代表取締役、立教大学大学院にて「修士(経営管理学/MBA)」取得。日本マネジメント学会、日本マーケティング学会会員。同志社大学・創造経済研究センター「ビッグデータ解析研究会」部員。

 1968年東京生まれ。91年、日大芸術学部 映画学科(脚本)卒業後、大手出版社に入社。5年間の編集及びPR担当の経験を経て、フリーライターとして独立。20014月、マーケティングを中心に行うインフィニティを設立。同代表取締役。数多くのテレビ・ラジオ出演や大学での授業、執筆活動等を続ける一方で、各企業との商品開発や全国での講演活動にも取り組む。
 『「おひとりウーマン」消費!―巨大市場を支配する40・50代パワー』(毎日新聞出版)、『「男損(だんそん)の時代』(潮出版社)など、トレンド、マーケティング関連の著書多数。「おひとりさま(マーケット)」(05年)、「草食系(男子)」(09年)は、新語・流行語大賞に最終ノミネート。NHK総合「所さん!大変ですよ」、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」、読売テレビ「ウェークアップ!ぷらす」、毎日放送「ミント」ほかでコメンテーター等を務める。

昭和男 定年道半ば の連載

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