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不眠の人に共通する3つの悪習慣、変えるには? 

三島和夫・秋田大学医学部教授に聞く(前編)

更新日:2018年10月12日

 日本は世界有数の「睡眠不足大国」です。経済協力開発機構(OECD)の2016年調査で日本人の平均睡眠時間は7時間22分。欧米の先進国と比べて約60分の開きがあります。
 寝たくても寝る時間がなかった現役世代と違って、リタイア世代になると寝る時間は確保できるようになります。ところが、高齢になれば床に入っても眠れない「不眠」に悩む人が増えてきます。その原因はいくつかあります。

「長寝」「早寝」「昼寝」が三つの悪い寝方

 その人にとって必要な睡眠時間には個人差があり、同世代でも3時間程度の差があります。ただ年をとれば睡眠時間は確実に短くなります。2030代では平均8時間30分ですが50代を過ぎて8時間以上も必要な人は少数派です。70代では平均6時間台になります。 

 不眠に悩む人には共通した悪い寝方が三つあります。「疲れた」といって夜9時過ぎに「早寝」してしまうと、夜中に何度も目が覚めて寝付けないで苦しむことになります。その状態で床に「長寝」していると、嫌な人間関係や金銭問題などをついつい考えるようになり、床が「苦しむ場所」になってしまいます。「昼寝」を日中30分以上にするのも夜の睡眠の質を下げる原因です。悪い寝方をする人はソファ、電車など寝床以外の場所だとよく眠れるといいます。

 こうした疲労感から眠くなる睡眠はばらばらに分断されがちです。単純に寝ている時間を足せば一定の時間は寝たことになりますが、睡眠は連続してきっちり寝ないと熟眠感はありません。疲れた体は回復しませんし、感情も不安定になります。

 大切なのは質のよい睡眠をとることです。それには寝る準備がしっかり整った時間帯に眠りにつくことが重要になってきます。

 脳の温度がしっかり下がり、睡眠を促すホルモン(メラトニン)が分泌されるなどの条件が整ってから眠りにつくのが最善です。一般に60代でも夜11時以降にならないと整わないとされます。若い人に比べて年をとっても1時間~1時間半程度しか前倒しになりません。

あえて、床にいる時間を短くする

 欧米では20年以上も前から不眠を解消するため、床にいる時間を制限する治療法が行われています。日本でも7,8年ほど前から導入され始めました。この“睡眠制限法”では床にいる時間を「正味寝ている時間プラス30分~60分」に制限するのです。

 例えば、夜9時すぎに寝て何度か中途覚醒があったとします。朝起きたとき、何時ごろに目が覚めて何時間寝たのかをざっくりメモします。寝た時間を全部足して合計で5時間半 だとしたら、それに30分足した計6時間を床に入る時間と決めます。リタイア世代や生活習慣病などの持病がある人は1時間足してください。次に起床が朝6時なら6時間前の夜0時を床に入る時間と決めます。

 この治療法だと数週間すれば、床に入ってから寝つくまでの時間が短くなり、また毎晩ほぼ同じ時刻に寝つけるようになります。安心感が高まるため寝床に入るときに緊張しなくなり、中途覚醒も少なくなります。ただ、この治療をする前後で睡眠時間はほぼ変わりません。ばらばらに分断されていた睡眠時間をコンパクトに詰めただけですから。

 患者さんからは「寝床に入る時間まで何をしていればよいのか分からない」とクレームがありますが、しっかりと眠気がくるまで床に入らない努力をしてください。目が疲れてTVも本も見たくないと言い、ひたすらけん玉の練習をしてすっかり趣味になった人もいます。寝る努力よりいかに起きているかを工夫してください。

(聞き手・上林格)

三島和夫・前国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部長(現秋田大学医学部教授)


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