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コロナ危機で変わる社会

「小売業は平和産業」を実感した緊急事態下

「小売業は平和産業」を実感した緊急事態下
主要店舗にトイレットペーパーを積み上げ、不安を取り除いた(イオン提供)
在庫の「見える化」で買い占め抑止も
イオン

鮮やかな対応だった。

新型コロナウイルスの感染が広がりはじめた3月初旬、マスク不足から連想されたのか、突然「トイレットペーパーが不足する」とのデマ情報が出回り、全国で買い占めが起きたときのこと。

ツイッターに、大量のトイレットペーパーが積み上げられた画像が次々に投稿された。いずれもイオンの店頭風景だ。ネット上には称賛の声があふれた。

「実際、十分な在庫があった。一時的に売り切れたのは、物流が追いつかなかったからです。どうにかして品物は十分にあることをお客さまに伝えたい。安心して日常の買い物をしていただきたい。『だったら、店頭に大量に並べたらどうか』。対策会議でそんな提案があがり、主要店舗に急いで通常以上の量を運び込みました」。広報担当が振り返る。

イオンは、中国・武漢にも、5店舗を展開する。世界初の感染が明らかになった1月にはいち早く本社に対策本部を設け、毎日中国のグループ各社とテレビ会議を行い、最新動向をやりとりしていた。従業員と顧客の安全確保、店舗の感染防止策、商品の仕入れや配送……混乱の中で次々に手を打ってきたことが、国内での対策にも生きたという。

建物内の混雑度を表示するモニター(イオン提供)
店頭では徹底した防疫体制をとっている(イオン提供)

緊急事態宣言下でも営業を続けた総合スーパーや食品スーパー、ドラッグストア部門では、従業員に対し、いらだつ顧客らから時に厳しい言葉をぶつけられることもあったが、努力を続けるうちに「ありがとう」「頑張ってね」と声をかけられることが増えた。「小売業は平和の中、地域の方々に支えられて初めて成り立つものであり、現場に立つ人間の力が不可欠だという当たり前のことを再確認する機会になりました」

緊急事態宣言を受け、臨時休業に入っていたショッピングモールの専門店も徐々に店を開け、5月28日には国内モールの全面再開にこぎつけた。出入り口には、AI(人工知能)を搭載した体温測定器を設けて瞬時に発熱の有無を判定。エレベーターやエスカレーターには床や手すりに立ち位置の目安となる印をつけ、人と人とが十分な間隔をとるように誘導する。インフォメーションカウンターでは入館カウントシステムで滞留人数の管理をして混雑度合いをモニターに表示し、混雑状況に応じて入場制限をかけるなど、防疫体制を徹底する。

これらを一過性のこと、とは考えない。コロナ禍以前から厳しい競争環境が続く小売業界の最大手として、変化を成長へとつなげられるかが問われる。「くらしが変わる。イオンも変わる」というメッセージを掲げ、今後はネットスーパーの強化や広い駐車場スペースを活用したドライブスルーの拡大などをしていくという。「経済との両立を含めた新しい生活様式を、イオン自らつくっていく」という挑戦は、SDGsそのものでもある。

(高橋万見子)

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