SDGs ACTION!
コロナ危機で変わる社会

フードチェーンからヒューマンチェーンへ

フードチェーンからヒューマンチェーンへ
撮影・村上宗一郎
くらしに寄り添う組織をめざして
生活協同組合コープみらい 理事長(日本生活協同組合連合会 副会長) 新井ちとせ

生活協同組合(生協)は、くらしの全般にわたって人と人とがつながり、協同の輪を広げ、くらしをよくしていくことを目的とした「助け合いの組織」です。「誰ひとり取り残さない」というSDGsの目指すものと重なりあっています。

コープみらいは、組合員から寄せられた約80万件の声や役職員のディスカッションなどを経て2014年6月に「ビジョン2025」を採択し、「食卓を笑顔に、地域を豊かに、誰からも頼られる生協へ。」を掲げました。

「食卓を笑顔に」は、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」に、「地域を豊かに」は同11「住み続けられるまちづくりを」につながります。二つが私たちの活動の柱です。

コープみらいでは、生産から流通、消費までのフードチェーン全体を「協働」して解決することを目指しています。商品の開発と提供を通じ、食の安全性確保、食料自給力の向上、二酸化炭素(CO₂)削減、食品廃棄の低減など、作る人、使う人両方の立場から責任ある活動を進めることが目標です。

また、今は人と人とのつながりが希薄になっていると懸念されています。困りごとを一人で抱え孤立する人が増えています。一方で、誰かの役に立ちたい、地域に貢献したいと思っている人もいます。私たちは、様々な立場の人たちが支え合い、安心して暮らせる豊かな地域づくりを目指したいと思っています。

商品届け、地域支える

昨年秋の台風15、19号は、組合員や産地に大きな被害をもたらしました。私たちは、復旧・復興に向けて、組合員に商品を「届ける」、被災者を「支援する」活動をしました。

「届ける」では、千葉県内で自分も被災者である職員が出勤し、被害状況や困りごとを聞きながら、配達し、地域の方に飲料水・パンなどを配りました。

「支援する」では、自治体の要請を受けて支援物資を提供しました。また、組合員に緊急支援募金を呼びかけ、約2億5000万円を義援金・支援金として自治体・産直産地・地域団体へ寄付しました。

コープみらいと「産直」でつながる生産者も被災しました。倒壊したビニールハウスの解体や撤去、農場の整備に、延べ700人の職員が今年1月までボランティアとして参加しました。「フードチェーンからヒューマンチェーンへ」という気持ちを込めました。

現在、千葉、埼玉、東京の170自治体と「高齢者等の見守り協定」を結んでいます。毎日、4000台を超える車が地域を走っており、店舗は134店舗あります。配達や店でのお買い物の際、住民の異変を発見した時は、速やかに行政につないでいます。

組合員が生協を信頼している一番の理由は「食の安全・安心」だと思います。商品検査センターで、年間5万件を超える検体を検査し、商品の安全性確保に取り組んでいます。ただ、食品には「絶対に安全」という評価を行うことができません。リスクを評価、管理し、消費者とのリスクコミュニケーションを大切にしています。

撮影・村上宗一郎
コロナで受注が急増

2月27日、小中学校、高校、特別支援学校の休校要請が出て、注文が前年に比べ10~20%伸びました。4月7日に7都府県に緊急事態宣言が出されると、ゴールデンウィークにかけて50%を超え、過去最高の受注になりました。ステイホームを支える基礎的な食品を配達することへの期待と、毎週同じ職員が届けることへの信頼があったと考えます。

しかし、受注の増加で、物流センターがキャパシティーを超え、商品を入れる「通い箱」も不足し、商品があっても一部をお届けできない状況になりました。お届けする数量の制限や欠品が続き、組合員にご迷惑をおかけする事態となりました。

生協の強みのひとつであった、組合員や地域のみなさまが集まっておしゃべりを楽しんだり、学んだりする活動に制約がかかることは否めません。地域の情報交換の場となっていた「みらいひろば」(約260会場)には、年間2万6000人が参加していますが、相次いで中止となっています。フェース・トゥ・フェースによるコミュニケーションが難しい中でも、例えば、同じ商品を食べながら、リモートで交流会を開くといった形もあるでしょう。新しい人と人とのつながりを模索していきたいと考えます。

新しい生活様式が求められる「ニューノーマル」な時代の中でも、組合員、地域のくらしや思いに寄り添う生協であり続けたい。

ソーシャルディスタンシングで、人と人との物理的な距離はとらざるをえませんが、組合員と職員が知恵を寄せ合うことで「心の距離」はむしろ近くなるのではないでしょうか。一緒にSDGsのゴールに向かっていくことが大事だと思っています。

(聞き手・金本裕司)

コープみらいの取り組み事例
孤立した集落へ宅配支援

2019年10月、台風19号が関東地方を直撃した。東京・奥多摩町では、町中と日原地区を結ぶ街道で崩落事故が起き、同地区が孤立状態になった。

当初は自衛隊ヘリが食料品などを緊急輸送したが、9日後、ひと一人が通れる70mの仮歩道が設置された。自治会やコープみらい青梅センターが話し合い、仮歩道を使ったリレー形式での商品の運搬が決まった。

コープ職員が崩落箇所の手前で、個人別に商品を仕分けし、住民らが台車などで運ぶ。集落側でトラックに移し替え、受け渡し場所へ――そんな週1回のリレー輸送支援だった。輸送は12月に完成したゴンドラに引き継がれた。今年5月には仮設道路が完成し、孤立状態は解消された。

ひとり親家庭に奨学金

「コープみらい社会活動財団」は、組合員のひとり親家庭の高校生、高等専門学校生を対象に、返済不要の奨学金給付を行っている。20年6月現在、対象389人。

「奨学金応援サポーター」になった組合員の1口100円の寄付金が原資。17年10月から募集を始め、現在は1万5000人超。19年度の募金額は6000万円を超えた。

奨学金は月額1万円、年12万円を3年間給付する。当初は新入学の1年生が対象だったが、今年度から2、3年生にも対象を広げた。

仮歩道を使い商品を届ける(生活協同組合コープみらい提供)
集落側で住民が受け取り(生活協同組合コープみらい提供)
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